20.変な名前? /純喫茶リリー
ママの言うことは絶対。
だから、律子は「今日からもみじ保育園に行け」と言われたら、他の選択肢なんてなかった。
けやき保育園に戻りたかったけれど、それは許されないのだ。
新しい保育園では黄色いかわいい帽子じゃなくて、青くてダサい帽子をかぶることになった。
初日、いきなり知らない子たちの前に立たされ、
「今日からおともだちの “おうろりつこ”ちゃんでーす!」
と紹介された。
みんなの前で突然「おともだち」って言われても、
今日初めて会ったばかりで友達なわけがない。
心の中で「勝手に決めるな!」と叫んでいた律子。
すると、どこからか
「“おうろ りつこ”だって、変な名前」
「“おうろらひめ”みたいだね」と、くすくす笑う声が聞こえた。
「え?私の名前って変なの?」
その瞬間、律子は今まで考えたこともない羞恥心を感じた。
けやき保育園では当たり前のように名前が存在していて、誰かに変だと指摘されたことなんてなかったのに。
そもそも「おうろらひめ」ってなんだ?聞いたことがなかった。
初めて、自分の名前が変だと思い込んでしまった。
律子は、その日からちゅーりっぷの形の名札を、裏返してつけるようになった。
馬鹿にされた気がして、恥ずかしくて仕方なかったのだ。
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