9. 狙いは早朝 /純喫茶リリー
「お祭りがあった次の朝は、よーけ お金が落ちとるでよー
りっちゃんも拾いに行ったらええにぃ。」
萩原のジジは、毎朝5時に起きて、近所の大型スーパーへ散歩に出かけていた。開店前のスーパーに?毎朝?不思議に思った律子が尋ねると、ジジは得意げに答えた。
「お金が落ちてないか、探しに行っとるんや。
7時に行ってはもう遅い。誰かに先に拾われてしまう。6時には行っとかないかん!早起きはサンモンノトクって本当だに。」
「そんなに簡単にお金が儲かるなんてすごい!拾いに行きたい!」と、律子は瞳をキラキラさせた。
しかし、どうしても早起きができず、結局一度もジジと一緒に行くことはなかった。
だが、そんな過去があるとは思えないほど、ジジはかわいらしく、いつもニコニコしてはクシャクシャと笑っていた。
思ったことをバンバン言い、いつも楽しそうに話す子供っぽさが魅力的だった。
律子はそんなジジが大好きだった。
多分、若い頃はモテモテだったんだろうと想像する。
毎朝5時に小銭を拾いに行くジジを、律子は尊敬の眼差しで見ていた。
しかし、後になって冷静に考えてみると――
いや、それってただの、ネコババじゃん!
今で言う「朝活」の雰囲気を出して、意識の高いオレ感で語ってたよな、ジジ。
子供に何を教えてくれてたんだ!と、少しイラッとくる。
毎日そんなに早起きして出かけるくらいなら、普通に仕事した方が楽なんじゃないか?
律子、早起きできなくて本当によかったよ。
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