16.嘘のはじまり /純喫茶リリー
律子が覚えている一番古い記憶は、けやき保育園の屋上だった。
0歳から通っていたこの保育園には、広々とした屋上があり、みんなでよく遊んでいた。
年長さんになった律子は、同い年の男の子3人、女の子2人と一緒に話していた。たぶん、初めて友達とちゃんとした話をした瞬間だったから、今でも覚えているんだろう。
その時、男の子の一人がこう聞いた。
「みんな、お母さんのこと、なんて呼んでる?」
「ママ!」
「うちもママ!」
「オレ、おかーさん!」
「ぼく、ママ!」
――みんなが次々に答えた