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純喫茶リリー

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純喫茶リリーへようこそ。 ハートフルとは程遠い、ちょっぴりビターでダークなひねくれ律子のエッセイ。 懐かしいけどひとクセある日常を、毎話読み切りスタイルでお届けします。
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#嘘

23. 咄嗟のウソ/純喫茶リリー

あのミミララの小物入れは手に入らなかったが、代わりにかわいい消しゴムを手にした律子。 リリーに戻ってからも、盗られたことに気づいたスーパーの人が 律子を追いかけてくるんじゃないかという不安に駆られて冷や冷やしていた。 でも、その日は誰もリリーに来なかったし、ママも何も気づいていない。 律子はほっとした。 「この消しゴム、どこに隠そう?」と考えながら、ママに見つかるのを恐れつつ、家のおもちゃ箱の中にそっとしまった。 あのおもちゃ箱なら、ママに探られることはない。 でも、本当

16.嘘のはじまり /純喫茶リリー

律子が覚えている一番古い記憶は、けやき保育園の屋上だった。 0歳から通っていたこの保育園には、広々とした屋上があり、みんなでよく遊んでいた。 年長さんになった律子は、同い年の男の子3人、女の子2人と一緒に話していた。たぶん、初めて友達とちゃんとした話をした瞬間だったから、今でも覚えているんだろう。 その時、男の子の一人がこう聞いた。 「みんな、お母さんのこと、なんて呼んでる?」 「ママ!」 「うちもママ!」 「オレ、おかーさん!」 「ぼく、ママ!」 ――みんなが次々に答えた