泥中に咲く一輪の白い花(2)
再会
2月初め、桜子は休日を利用し隣町のディスカウントショップへ買い物へ。
月に一度、洗濯用洗剤や柔軟剤、掃除用のウエットティッシュや入浴剤。ボディソープ、シャンプー、入浴剤。化粧水や下地クリームなど必需品の買い出しをこの店でする。
この10年ちゃんとした化粧は殆どした事が無いので化粧品はたまにしか買わない。
それでもいつかどこかで、誰かと縁が出来て、会おうと言われた時の為に、一通りの事が出来る様には、揃えていたいと思う。
ただ、流行が過ぎたものなどは使いたくない気もする。なので時々、流行りの物を少し買う。
そのショップのアプリで、化粧品コーナーでの新作披露イベントがあると確認出来たら、必ず行くようにしている。大抵の場合、サンプル品の配布がある。あれば必ず貰う様にしている。
【そう言えば、オーブントースターが最近、焼けなくなった様な気がするなあ。】
独り暮らしをし始めた時のトースターが最近、調子悪い。10年も使って入れば悪くもなるとも思った。
家電用品売り場へ来た。幾つか見た。¥2,980から¥78,900まである。
【は、8万円?、、、何がどう違うの?、、、お金持ちの自尊心用?、、、てか、パンが固くならないんだってさ。へえ~、、、】
「こ、こ、これ、これは、、今、今。今なら、5千円引き、です、ですか?」
聞き覚えのある喋り方と声の色。
【あ、この声、あの時の、、、】
桜子は、その声のする方を見た。トースターの陳列棚の向かい側、桜子の背中側に、電子レンジの陳列棚があり、そこにその声の持ち主が、店員と共に立っていた。
見ると、売値が¥12.800の物が¥7,800になると言う。店員が、
「展示品限りなんですけど、電子レンジって展示しても使わないから悪くならないんですよ。」と言っている」。
【それって、みんなが扉を開け閉めして 草臥れてるんじゃないのかなあ、、、手垢もいっぱいついてるし、上なんか埃、かぶってるし、、、】
「ど、ど、どうしようかな、、、こ、こ、これ、これにしようかな、、、」男が迷ってる。このままじゃ、多分買って後で後悔するかもって思った桜子、
「あの~、すみません。先日は失礼しました。」と、わざと話の途中に割って入った。
「う、、え、、、、、、あ、、あ、あの、あの時の、、、、」男は暫く桜子の顔を見た後、漸く分かった様だった。
「どうも、お買い物ですか?」
「あ、あ、、、、で、で、電子レンジが、、、う、う、動、動かなく、なって、、、」
「一緒に見ましょうか?、、良ければ、、、」桜子は男に言いながら、目は店員へと向け乍ら言った。
「……じゃあ、決まったらまた、声を掛けてください。直接、レジでも結構ですんで、、、」
店員は、唇の左側のみ上げ、薄笑いをしながらそう言うとその場を去って行く。
「……すみません。急に、、、そのレンジ、直ぐに壊れるかなって思って、、、余計なお世話でしたね。」と桜子は、目線を落としながら男に言った。
「い、いえ、、い、い、良いんです。お、俺、何でも、、、良いんです。」と、その男が、半笑い調子で返して来た。
その時、桜子は男のある部分で目が止まった。
今日の男は、長めのダウンジャケット、チェックのネル地のシャツ、ゆったりした光沢のあるアウトドア―用のパンツと言ったいで立ち。
そう言えばあの接触事故の時は作業服だったような気がした。
桜子はその男の股間から左側の太ももにかけての膨らみを凝視。
【……でかい?、太い、長い?、、、長さはそんなもんかな、、、】
「お、お、俺、俺、、ひ、ひ、人からす、す、勧め、、られ、、たら、、、断、断れなくて、、、」
「えっ!、、、、あ、、、あ~、、そうですか、、、」桜子、上の空で返す。
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