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さよならのあとさきに 処暑 (2)


 夫良太が去って、約一月。
 学校へは休まず行く。
 ただ、家に帰っても何もする気にはなれない。
 着ていたものは脱ぎ散らかされ、コンビニで買って帰った夕食の容器は、食堂のテーブルや床に散乱し、浴室の壁はカビだらけ。そこに湯を張り、入浴はする。
 【こんな事じゃ、ダメになる。】
 分かってる。でも動けない。
 そんな時に、親戚の叔母(母の妹)から、『姉さんのカメオ、昔譲ってくれるって言ってたの。貰えない?』と連絡が来た。
 『良いよ。探してみる。』と答え、休みの日に母屋の部屋へと行った。
 何か月ぶりに入る母屋。
 母の部屋は奥の納戸の隣。その納戸は開かずの間。入口にまで荷物が押し迫り、中に入ることさえ出来ない。
 目的の物を取りに母の部屋へと入る。遮光カーテンで閉ざされた部屋の明かりをつけ、ドレッサー付近へと向かう。
 ドレッサーの小引き出しを開け、いくつかのカメオを拾い出す。【この中の一つだろうけど、全部あげても良いし、、、】
 ドレッサーの後ろは先程の納戸との壁。目線の先の、壁と柱の間の青い光に気が着いた。
 【青い光?、、、納戸の灯り、点いてる?】
 そっと壁に手をやると、”ガタッ”と動いた。
 【えっ、、、何?】壁に手の平を当て、動かしてみる。壁がスライドした。嫌な、、、腐ったようなかび臭いような匂いがした。
 開いた壁の先に机があった。机の上にパソコンのディスプレイがある。その電源表示のLEDが青く光っている。
 【あ、これか。さっきの光は。】
 目線を更に奥へと移す。母の部屋の明かりがその納戸の中をを映し出す。
 【……何、これ、、、、何の部屋?】
 正面にはバスタブがある。床はお風呂場の様な床。左手の壁に、飾られているものが見える。その下にはレザーの様に黒光りするベッド。
 それらのほとんどがカビだらけ、そして汚れている。
 【どう言う事?、、、、母さんって、何してたの?】
 ドレッサーを動かし、その部屋へと入ってみる。最初に窓の方へと行き、カーテンを開け、窓を開けた。
 外の光ではっきりと映し出されたその部屋は、、、、【SM?、、、それ用の部屋?】
 壁に飾られたものは、長い黒い一本の鞭、何本も短い幣の様になった鞭、一メートル位に大小3つの穴の空いたの木の板、その下の籠の中には、男性自身の形をしたおもちゃや、黒い三角錐みたいなもの、大きめの注射器、、、
 【……】思考が何もできなくなった沙月。部屋の匂いにも慣れてきた。ふと振り返り、机の上のディスプレイへと近づく。
 机の下にパソコン本体がある様だ。電源スイッチを押す。ディスプレイがメーカー名を映し出す。そのうち、ウインドウズ画面へと変わった。
 パスワードを要求している。そのままリターンキーを押す。拒否された。次にいけない。
 母の名前のmegumiを入力するも、これも駄目。母の生年月日も拒否、、、父の名前も自分も名前も、拒否。
 続けて何気なく、ryouta と入力、リターンキーを押すと、、、、デスクトップ画面が出てきた。
 【何で、、、良太さんで、、、え、、、、、】
 いくつかのファイルがデスクトップに並んでいる。その一つをクリックする。動画ファイルのアイコンが並んでいる。その一つをクリック。
 プレイヤーが立ち上がり、再生され始めた動画を見て、、、驚いた。

 母と良太が、、、ベッドの上で、、、行為をしていた。
 母が身悶えている。
 良太が激しく腰を動かしている。パンパンと音を立てて。
 【私にはあんなにまで、、、、してくれたことなかった、、、、】
 他のファイルを立て続けに再生してみた。
 バスタブの中で良太を咥えて嗚咽を漏らす母、木の拘束器具をつけ鞭で叩かれる母、赤い蝋燭で背中やお尻を真っ赤にした母、お尻へ大きな注射器を差し、白い液体を入れられている母、、、、
 その相手はすべて、良太。
年月日の古いFILEは3年前の同日。PC買換え時の複写と思われ、新しい物は半年前。母の入院日の頃。
 【入院するほど体調の優れない時でも、する事はしてたのね。信じられない。】

 母と良太の記録動画を見続ける沙月。

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