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時間がありすぎると動かなくなるし振り返る


2021年2月18日、妊娠28週。
子宮の上のほうを切る帝王切開じゃなくて、通常通り子宮の下のほうを切る帝王切開が可能になった。
私が妊娠後期と呼ばれる時期を迎えられるなんて。
破水がわかって2ヶ月。もうずっとこの病院にいる。


痛みはないけれど、お腹の張りも感じることも増えてきて、羊水は出血混じりに相変わらず毎日流れていて。
日に日に本番が近づいている高揚感が増していた2月。
なんとか冷静に、毎日同じように繰り返される入院生活を穏やかに楽しもうとしていた。


29週も変わらず。
入院してから、本も映画も勉強も体力と気力が続かなくて、最初の1週間で諦めた。
Youtubeと漫画ばかり。あとはひたすらに寝ていた。
2月に入って、より眠気が増して、診察の時間や助産師さんが来る時以外はずーっと寝ていた。




私は高校生の時、引きこもりだった。
お昼から登校したり、欠席して親に怒られたくないから学校行ったかのように振舞ったりしていた。
テストの時期や面談、学期ごとの振り返りの時期にばれてたくさん怒られて。
その繰り返し。
監視が厳しくなると学校には行くけど、居眠りばかり。
友達もいたし、楽しくないわけではなかったけど、学校に行きたくないわけでもなかったけれど、何に対しても心が動かなかった。
心が動かないから、体も動かなかった。
誰にも本音を喋らずに、自分の内側にだけ世界をつくって閉じこもっていた。


過ごし方としてはその頃に似ていた。
液晶画面ばかり見て、それ以外は寝る。
でも赤ちゃんのために安静にという大義名分があって、食事も出してくれて、周りの人達はみんな褒めてくれて、愛する息子がお腹の中にいて、毎晩夫と電話をして。
あの頃とは気持ちが全然違う。
幸せだな、恵まれてるなとさえ思っていた。



中学の時のいじめと転校。
高校の時の引きこもり時期と夫との出会い、恋愛。
大学生活、就職、転職、ひとり暮らし、結婚。

大小いろいろな転機を繰り返して私という人生を26年過ごしてきて、何が自分にとって大切かがわかる人生を送ってきて本当によかった。
そして誰にでも人生で一度は耐え難いほどの苦しみがあると、悲しみを悲しみとして受け止められる人生でよかった。
これからも芯がブレない自信はある。



親が子に対して、こうなってほしいと思うのはおこがましいよねと思いながら、それでもあと1週延びてほしい、もう少しお腹の中にいてと毎日話しかけていた。

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