日本経済2023年3月 消費者物価指数読み解き

日本経済2023年3月消費者物価指数の読み解きのまとめ


まとめの経緯

2023年3月消費者物価指数が2023年4月21日に発表された。

いつも見ているYoutubeチャンネルで解説されていた。Youtubeチャンネルおよびnoteで解説されている内容を、原典ベースで自分でも読み解きなおしてみた。

いつも、原典となる資料を示しながら解説されており、どのように資料を読んでいるのか気になっていた。資料読み解きの軌跡を辿ってみることにした。

時間をとることができず、少し時間が空いてしまった。やや旬を逃した感はあるかもしれない。今を追うという意味ではなく、資料の読み解き方の学習という意味なので、旬を逃したことはご容赦。

動画内では、コストプッシュ型のインフレ、訪日外国人消費動向調査、海外経済動向にも触れられている。これら、消費者物価指数の読み解きと直結しない点について、この記事では言及を省いた。

なお、観光庁の訪日外国人消費動向調査の原典は以下の場所にある。

原典の入手

まずは原典の入手。最新は総務省統計局に発表されるようだ。「今月の結果(冊子)」PDFを使用する。

過去のものは、政府統計の総合窓口「e-Stat」で発表される。e-Statを使えば2023年3月のものを固定的に参照できる。参照先冒頭のリンクでダウンロードできるPDFが、前記の「今月の結果(冊子)」PDFと同じものとなる。

読み解き内容

総合指数、コア指数、コアコア指数

Youtube動画では、3月消費者物価指数を以下のように紹介されている。いずれも前年比上昇率。

総合指数 +3.2%
コア指数 +3.1%
コアコア指数 +3.8%

これらは1ページの「概況」に記されている。

2023年3月消費者物価指数 概況

総合指数に対する食料の寄与度

食料全般が値上がりしている影響が大きい、それ以外の物価水準が高騰しているとは言い難いと解説されている。食料は前年同月比+7.8%、総合指数に与えたインパクトは2.07%分、6割以上は食料関係が値上がりしたことによるものと解説。

これらは、2ページの表3「10大費目指数、前年同月比及び寄与度」に記されている。食料の前年同月比や寄与度は表内に記載されている。

2023年3月消費者物価指数 表3 10大費目指数、前年同月比及び寄与度

概況の「総合指数」3.2%が、表3の「総合」「前年同月比」3.2%にリンクする。総合指数3.2%のうち、食料の値上がりによる分は2.07%ということを表3は表している。

つまり、総合指数のうち2.07÷3.2=0.646……≒6割5分は食料の値上がりに起因する。逆説的に言えば、食料以外の総合指数への影響は、1.13%分に留まるということを意味する。

総合指数の財とサービスによる内訳

総合指数の内訳を財とサービスに分けて見た場合、財は4.8%上昇、サービスは1.5%上昇と解説されている。

これらは、13ページの表4「財・サービス分類指数(全国)」に記されている。

2023年3月消費者物価指数 表4 財・サービス分類指数(全国)

サービスが上向き傾向を維持しているというのはこのPDF単体からは読めないように思う。同じ方法で昨年10月以降のPDFを入手し、過去半年間の推移を並べてみる。

消費者物価指数 2022年10月~2023年3月 総合/コア/コアコア/財/サービス

総合指数の内訳をみるときには、寄与度を参照する。財の寄与度とサービスの寄与度を合計すると、端数誤差を除いて、総合指数になることが分かる。財とサービスの寄与度を比率にして、表に併記した。

これを見ると、財とサービスの推移、そしてその不均衡がよく分かる。

安定的な2%物価上昇を目指し、安定的に3%以上を示しているように見えながら、その物価上昇の7割以上は財の物価上昇によるものと分かる。昨年末までは9割近くが財の物価上昇によるものとなっていた。

今年に入って、財は減少方向に向かい、サービスは微増ながらも増加方向に向かっており、徐々に不均衡が解消される方向に向かっている。

このまま不均衡が解消され、財・サービスともに政府目標の安定的な2%物価上昇を達成してほしいと思う。ただ、まだ時間がかかること、世界経済などの不安要素が多いことは動画内で触れられているとおり。

価格の引き上げは斑模様

外食の価格は前年比6.9%上昇、宿泊費は前年比0.6%低下、価格の引き上げは斑模様と解説されている。

外食の価格は、2ページの「総合指数の前年同月比に寄与した主な内訳」に示されている。

2023年3月消費者物価指数 主な内訳

宿泊費は、3ページの表6「他の主な項目の前年同月比及び寄与度」に示されている。

2023年3月消費者物価指数 表6 他の主な項目の前年同月比及び寄与度

この項では価格上昇そのものを見たいので、前年同月比を参照する。

宿泊費の寄与度に※マークがついている。表外には以下の記載がある。

※2 「全国旅行支援」の影響(寄与度)は-0.13[試算値]

2023年3月消費者物価指数 表6 他の主な項目の前年同月比及び寄与度 注釈

物価への効果はこのように一応推計されているようだ。

雑感

サービスは1.5%上昇、依然として2%未満を示している。いま金融引き締めを行えば、2%の成長に達していないサービス分野の経済を冷やすことになると予想できる。そんなことをしてしまえば安定的な2%物価上昇など望めない。

財は4.8%上昇だがコストプッシュ型のインフレ。需要過多によるインフレではなく、経済の過熱感を表しているものではないという解説に同意。ただピークは1月、すでにピークアウトしているようにも見える。

読み解いてみて、どのあたりに注目して資料を見るか、学びがあった。また、寄与度の考え方に誤解していた部分があり、その点の学びがあった。今後も他の資料の読み解きを行っていこうと思う。

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