マイナ免許証 雑感
マイナ免許証、それに先立ち、マイナンバーシステム全般に対する個人的な雑感をいろいろまとめた。
行政システムの専門家でもなければ詳しいわけでもない、一般人によるつぶやきと捉えていただきたい。
マイナンバーシステム全般
マイナンバーシステムがらみの将来の展望は、デジタル社会推進会議を見ていると方向性が分かる。本来は、国が広報を、メディアが報道をしていくべきと思うところ、残念ながらどちらも期待できない。公共放送の体をなしていないNHKを解体し、国営放送を用意し、国の広報を国営放送が担えばいいのだと思っている。
運転免許証との統合は、第1回デジタル社会推進会議(令和3年(2021年)9月6日)の会議録にはすでに記載がある。突然湧いて出た話でも、あるいは健康保険証のどさくさで出た話でもない。突然という印象を持っている人もいるだろうところ、今更な話である。政府の監視役であるメディアが仕事をしていないだけである。あるいは、メディアは知っていながら直前まで情報を伏せておいて、直前で報道することで煽っているだけである。
以下、運転免許証絡みの部分を少し抜粋してみる。
第1回デジタル社会推進会議(2021年9月6日)
運転免許証との一体化よりも、隣に並んでいる在留カードとの一体化のが荒れそうな気がする。しかし個人的には、在留カードの一体化は生活に直接関与する話ではないので、関心度は運転免許証よりも下がる。
第2回デジタル社会推進会議(2021年12月24日)
一般国民に直接関わる部分しか見ていない人も多くいるだろうところ、裏では都道府県別に分かれていたシステムを共通基盤に集約するということを行っていたりする。こういったことは、最終的には行政コストの削減に向かっていく話である。こういう機会でもないとなかなか変更できないのだろう。
「KPI(効果):一体化した免許証の交付枚数」とある。これを以って効果を図るということのようだ。そのために、一体化が推し進められているということのように見える。
第3回デジタル社会推進会議(2022年6月6日)
資料1-1の138ページに工程表が掲載されている。システム改修の進捗状況は確認しようがない。
第4回デジタル社会推進会議(2023年6月6日)
資料1-1の3ページに工程表がある。赤字は新規の部分だと、表外にコメントがある。マイナ免許証一体化が、令和8年度の部分に工程が延びている。それ以外は変わりがない様子である。
マイナ免許証の話からは少し外れるところ、自動車登録にマイナンバーを絡めるらしい。Nシステムと連動させることで、無車検車の検出や摘発を頑張ってほしい。
第5回デジタル社会推進会議(2024年6月21日)
工程表は付いていないように思う。自動運転の話が大きくなってきている。マイナ免許証の部分では、モバイル免許証の話が出てきた。
ついにこれが来たか。ここは推し進めてほしいところのひとつである。今年の5月の事件も、「対面でもマイナンバーカード等のICチップ情報の読み取りを犯収法及び携帯電話不正利用防止法の本人確認において義務付ける」という部分が進んでいれば、防げた事件のはずである。
マイナ運転免許証の統合
カードの統合(一本化)、カードシステムの統合、マイナンバーシステムと運転免許システムの統合あるいは情報横断、こういった各要素を分けて考える必要があると思う。それぞれについて思うところを記していく。
カードの統合(一体化)
マイナ運転免許証との統合、つまりカードの一本化には疑問を感じる。カードを一本化すること自体にはそれほどメリットとは思わない。
これは、健康保険証などと比べて利用シーンが大きく異なるためである。
健康保険証は、他者に提示を強制される機会が思いつかない。医療機関に提示するときは病院にかかるときであり、どちらかといえば自主的に提示するときである。また、読み取り機に差し出すだけであって、他者に渡す必要がないという病院も多いと思う。そして、他者に渡したとして返してもらえないということも考えにくい。
他方、運転免許証はどうかといえば、他者に提示を強制されるシーンがある。
提示は見せるだけでよく、提出の義務はないという話もあるところ、実際のところは提出することも多いだろうし、返してもらえない、人質的に扱われることもあると聞く。
他のケースには、赤切符が公布されるような場合には、運転免許証が没収され、赤切符(免許証保管証)が運転免許証の代わりになるとも聞く。こういった場合に、マイナ統合された免許証が没収されるシーンが想定されるのではないかという懸念もある。
これら、提示義務や没収のシーンが想定されるということが、健康保険証などとは異なる点である。
警察以外の場面では、勤務先に運転免許証を提示するシーンが考えられる。これは義務というわけではないものの、運転業務への従事や通勤手当の申請を考えれば提示を拒む理由はない。自賠責や任意保険の加入状況もあわせて提示を求める会社も多いと思う。
しかしこちらのシーンでは、従来ならカード表面に刻印されていた有効期限を、マイナ統合された後にどうやって確認できるのかという問題がある。
これらを考えると、マイナ免許証の統合、一本化にはやや疑問が残る。
マイナ免許証アプリ
これに対して、アプリで対応するという話がある。これはひとつの考えではある。しかし個人的には、マイナカードのサブ機能カードという形式でも対応してほしいという考えがある。
マイナカードとは別にアプリで仮想的にカードを持てることから分かるように、マイナンバーシステムはもともと、カードに相当する部分を複数持つことが可能な仕組みになっている。どの物理カード/仮想カードとどの読み取り機の組合せでどの範囲にアクセスできるか、それを変えられるのだから、運転免許に特化した情報に限定してアクセスできる物理カードにすることも、技術的には可能だと思う。
アプリは、高齢者、機種変更、バッテリー切れ、水没、これらの場面を考えると、必ずしも物理カードよりも優位な場合とは限らず、物理カードが優位な場合もしばしばあるように思う。併用できないものかと思う。
カードシステムの統合
カードを一体化しないのであれば、ICチップも搭載していることだし、そもそもマイナカードに寄せなくてもいいのではという考えもあるかもしれない。そこには否定的意見である。
カードの基幹システムが別ということは、カードの発行システムや認証システムが複数あり、それらが並行で稼働することを意味する。並行稼働中はコストをダブルで掛けることを意味する。
行政コストをどのように考えるか。一時的にはコストを掛けることがあっても、将来的には質を落とさずにコストを下げるようにしていく。それが、人口減少、少子化の流れにある社会で必要なことだと思っている。そのためには、システム統合できるところはシステム統合を目指していくのが望ましいと思う。
運転免許システム全体を他と統合するというのは無謀な話と思う。他方、運転免許証発行システムをマイナカード発行システムと統合していくのは、現実的な話と思う。そして上に記したとおり、システム統合できるところはシステム統合するのが望ましいと思う。
ただし懸念事項もある。一番は再発行に掛かる期間だと思う。新規の免許取得や免許更新は、すでに持っているマイナカードに紐付けするだけだろうから、オンライン処理だけで済む。即日処理だろう。問題は、マイナカード紛失時や盗難時の再発行である。
現状の免許証は即日発行である。車が必須の田舎では、即日発行であることは重要な要素である。これがどのようになるのかという点が懸念点である。
前項、マイナ免許証アプリなら即日再発行できそうである。それ以外の方法を考えると、以下のようなくらいだろうか。
① 前述のサブ機能マイナカードの直接発行
② マイナカードの到着までの代替の証明を発行あるいは交付
A 免許証仮カードを発行
B 赤切符の免許証保管証のような、カード以外の証明書を交付
①だと、サブ機能とはいえマイナカードの発行を各運転免許センターにも置くことになるので、偽造等を考えればあまりよくないかもしれない。発行システムは一元化できているほうが良いような気がする。
②であれば、即日発行も可能だと思う。期間限定の一時利用のものに対してカード型にこだわる必要はなさそうであり、②Bでもいいのではと思う。
サブカード
前項①に、サブ機能マイナカードと書いた。以下サブカードと記す。想定されるサブカードの話には2種類ある。
ひとつは、通常のマイナカードの予備となるフルセットのマイナカードである。もうひとつは、機能限定のサブカードである。
前者は、普段は持ち歩かず、自宅に保管しておく扱いを想定したものである。再発行手数料程度を事前に支払って、再発行に要する期間を短縮するといった形である。デメリットは、更新手数料も2枚分となるだろうことだが、ひとつの方法ではないかと思う。実現してくれないものかと願う。
顔写真があるから、使いまわしや拾ったカードの悪用は容易でない。また、「対面でもマイナンバーカード等のICチップ情報の読み取りを犯収法及び携帯電話不正利用防止法の本人確認において義務付ける」(第5回デジタル社会推進会議)という部分が進めば、悪用しようという気も失せると思う。
カードから顔写真データを読むことはできるようである(参考)。本人確認を行おうとしている従業員が、本人の顔を確認するときに、「券面の顔写真」「カード内の顔写真データ」「マイナンバーシステムに登録された顔写真データ」の3種を確認すれば、悪用はほぼなくなるのではと思う。
後者は、現状話題になっている範囲なら、健康保険証や運転免許証の機能に限定したサブカードを意味する。機能限定であるため、機能それぞれに保険者番号や運転免許証番号などを刻印するカードデザインとしておけば、以下のようなデメリットに耐えられるのではと思う。
健康保険証
・意識のない救急患者の保険者番号を、マイナカードのカード面で確認できない。
運転免許証
・運転業務への従事や通勤申請のために、運転免許証番号、区分(第一種等)、種類(運転可能な車種)、有効期限を、マイナカードのカード面で確認できない。
マイナ保険証では、停電等でオンライン認証ができないことがあるという問題があった。保険者番号が記載されていないので従来システムを用いるという運用カバーができなかったことが問題だったのではと感じる。それは、マイナカードのカード面で保険者番号が記載されていれば解決するように思う。
認知症の高齢者等を対象に、暗証番号の設定が不要なマイナ保険証とする話がある。これなども、マイナカードのカード面で保険者番号が記載されていれば、従来型の運用にすることができるわけであり、暗証番号不要にする必要はないのではと感じる。むしろ、暗証番号不要マイナカードをベースに写真を張り替えた偽装マイナカードが横行しないかというのが不安である。
マイナカード以外の公的カードを
① マイナカードに一体化すること
② マイナカードベースのカードシステムで扱えるようにすること
これら①②を別に考えてもいいのではないか。その方法には、マイナシステムベースのカードシステムを共通して使うという方法があるのではないか。そのように感じた。
バックエンドシステムの連動
これは表には出てこない話なので、あまり意識するところではない部分である。マイナンバーシステムと運転免許システムの統合あるいは情報横断という話である。ただし個人的には関心がある。
当方の理解では、マイナンバーの新規付与は、住民基本台帳に住民コードを記録するときというのが一番根本的なきっかけだと思う。これは生誕のタイミングになると思う。
他の市町村ですでに住民票コードが付いている人は、マイナンバー法7条「住民基本台帳法第三十条の三第二項の規定により住民票に住民票コードを記載した」の条件を満たさないので、マイナンバーの再生成は行われない。引越しなどがこれになると思う。
生成の仕組みは、マイナンバー法8条にいろいろ規定されている。
住民票コードから生成とあるが、マイナンバー法7条2項で番号の再生成ができるようであり、別の番号が返ってくるようである。
そのため、一方向関数というよりは、ランダム生成して紐付けという方式のように思う。既存番号と被らない、ランダムな新規生成番号、あるいは事前生成されてキャッシュされた番号から選択、そして住民票コードと結び付けて管理という形だろうか。
このようにして、住民基本台帳に名前が載るのと時期を同じくして、マイナンバーは付与される。そしてバックエンドの公的なシステム間は、マイナンバーによって連結される。マイナカードの申請や利用や返却とは無関係に。
こういった、バックエンドまわりの事情は推測するしかない部分がある。そんな中、警察の運転免許のシステムの改修が気になるところである。記事冒頭で紹介した以下の部分である。
これまで、運転免許絡みの情報を各都道府県警察が個別にシステム整備していたという点が驚きである。このあたり、興味深いところであるが、これまた表に出ることはないのであろう。
オンライン講習
世間でメリットと言われているものにあったので、これについて思うところを。
視力検査などの適格検査を受ける必要があるので、完全にオンラインで完結するわけではないので、現状でメリットになるのかといえば、そこまでは思わない。
将来的に行政コストを下げるためには必要なのだとは思うので、段階的にやっていく中のひとつという感じだろうか。
以前、台湾では免許更新手続きがないとつぶやいたことがある。他の諸外国の免許システムも調べてみたいところである。
世間で言われるメリット
ここは微々たるものだと思う。上に記したとおり、カードの一本化やオンライン講習には疑問を感じるが、それ以外の部分はどんどん進めてほしいところである。
個人的なメリット・デメリットの観点で捉えているのではなく、社会の仕組みとして将来的な行政コスト削減が期待できるかという観点で捉えているので、世間で言われるメリットの観点はあまり響かない。
まとめ
マイナ免許証、それに先立ち、マイナンバーシステム全般に対する個人的な雑感をいろいろまとめた。
マイナンバーといえば、チェックデジットの生成方法が雑という話を思い出す。もう少し何とかならなかったのかとは思う。こういったあり得ないミスがあるので、信頼されないのだと思う。
チェックデジットの生成方法は「総務省令」の令和6年5月24日、「行政手続における特定の個人を識別するための番号の利用等に関する法律施行規則等の一部を改正する命令 (令和6年デジタル庁・総務省令第10号)」にある。
下記の記事中で説明されている。書籍でいうISBN10の末尾にXが来るものがある理由である。