詐欺事件『プロタント量刑論』あてはめ
2024年3月15日に名古屋地裁で求刑され、4月22日に判決が予定されている詐欺事件について、『プロタント量刑論』にあてはめて量刑を算定してみた。
タイトル画像の被告人が男性になっているのはご容赦。
世間の評価や求刑に対してやや上振れしているように思う。量刑因子の評価を適切に行えていない部分があるかもしれない。
なお、法の専門家ではないので、正確性に欠ける素人の感想と捉えてほしい。正確性を求める場合は紹介書籍や弁護士サイトや弁護士相談などで補完してほしい。
参考書籍
以下の書籍を参考に、量刑を算定している。
『入門プロタント量刑論: メタ倫理学的数学的分析への入門』
『プロタント量刑論 1:総論』
『プロタント量刑論 2:詐欺窃盗』
プロタント量刑論は、量刑の数値的モデルのひとつ。
過去の判例と宣告刑から量刑因子を抜き出し、それに基づいて将来の量刑を予測する試み。
前置き
以下の量刑予測は、上記書籍に基づき、量刑因子ごとの量刑評価から求めた量刑予測となっている。上記書籍に対する当方の理解が正しいとは言い切れない。以下の量刑予測が実際の宣告刑と大きく異なる場合でも、上記書籍の理論に問題があるとは限らない旨、ご理解いただきたい。
事件の大雑把な概要
報道から得た情報のみでまとめている。
傍聴に行ったわけではない。
詐欺+詐欺幇助+脱税
詐欺
報道に出ている金額は1億5000万円。
詐欺幇助
正犯の犯罪が成立しないと幇助は成立しない。詐欺には未遂規定があるため、正犯が詐欺に着手すれば未遂罪に問うことができ、幇助犯を罪に問える。
マニュアル購入者は1000人くらいいたと聞く。そのうち、既遂あるいは未遂となった人がどのくらいいたのだろう。最低1人はいないと、幇助犯は成立しない。そして幇助は正犯の半分のため、懲役5年。10年+5年と10年×1.5も、どちらであっても処断刑の枠は15年になる。
脱税
犯罪で得た収入であっても、所得税の納税義務がある。所得税法には詳しくなく、逐条解説本も所有していないため、この観点の詳細は省く。
量刑評価
量刑因子ごとの評価
違法性3 犯罪手段化
動機3 強い繰返し
経緯2 勘酌不可
責任能力0 正常
共犯0 単独
計画性3 マニュアル化
財産侵害行為1.3 特定少数、報道の3人で算定(1+log(10)追加人数)
財産侵害結果4.1 1億5000万円 → log(10)15000(万円単位)
社会影響行為0 模倣性あるも計画性で評価済み
社会影響結果0 特定私的個人
特別予防1 反省の姿勢あるも、被害回復は期待できず
総合評価
評価合計値は17.4年。
処断刑の枠の上限、15年まで振り切っているように見える。
なお、脱税や罰金はプロタント量刑論への理解が及ばず、上記の評価に含めていない。
財産侵害の結果が大きい(行為1.3年、結果4.1年)
マニュアル化による計画的犯行(3年)
違法性を認識したに留まらず、効果的に違法する仕組みを構築していること、ただし組織的とまではいわない(3年)
犯罪に至る経緯に勘酌の余地が乏しい(3年)
これらの不利な量刑因子に比して、減刑要素がほとんどないことが大きく影響している。
個人的には、求刑がやや甘い印象。
量刑因子ごとの評価の中に、重すぎる部分があるのかもしれない。
違法性と計画性が二重評価となっているのかもしれない。
二重評価であれば、3年引いて14.4年。求刑にはある程度近づく。
世間の評価との対比
世間の評判を見ると、求刑の8掛けとか、財産侵害結果の量刑因子を重視して過去の裁判と比較するとか、そういった量刑判断が目立つ。8年~9年くらいという意見が多い印象ながら、15年近い意見もあり、ややばらつきがある。
なお、罰金を払えそうにないので、懲役刑に加えて2年間、労役場留置となる可能性が高い。このあたりは、上記の量刑評価には含めていない。
まとめ
答え合わせは4月22日。
報道は全文出してくれるのだろうか。量刑因子ごとの妥当性を検討できるほどの情報を出してくれるだろうか。