過去に以下の記事を作成した。
この事故の裁判例が公開されていることに先日気づいたので、裁判例を確認することにした。
なお、交通法規や法の専門家ではないので、正確性は裁判例、紹介書籍、さらに正確性を望むなら弁護士相談などで補完してほしい。
裁判例の公開に関する情報
令和4(わ)178
大分地判令6.11.28
過失運転致死(変更後の訴因危険運転致死、予備的訴因過失運転致死)
◆公開場所
https://www.courts.go.jp/app/hanrei_jp/detail4?id=93659
裁判例を読んで
(2号)因果関係
先に作成した記事では、『ケーススタディ危険運転致死傷罪第3版』に記されている以下の点に、今回の裁判は疑問を感じると記した。
この点、因果関係に直結した部分は以下である。
上を見る限り、危険運転行為を考えるうえでは制御困難性を考えていたのに対し、危険運転行為と死傷事故との因果関係を考える段階ではもはや制御困難性という観点を見ていないということのようだ。
過去に作った記事にまとめた、以下の捉え方であっているように思う。その適否が高裁でどう判断されるのかという点が気になるところである。
(2号)制御困難性と対処困難性
制御困難性と対処困難性の話は、過去の記事で以下のように記した。
これに相当する原文は以下になる。
この部分は納得の説明である。
この点、名古屋高裁刑1令和2(う)195とは論点を大きく異とする。名古屋高裁の件は、原審には進行制御困難性と対処困難性の混同という誤審があり、それを控訴審で正した形であるため。今回は進行制御困難性と対処困難性を正しく区別している。
(4号)妨害運転の成立の否定
ここは、危険運転行為に該当しない、該当するとまではいえないという判断に見える。そしてその本質は、「相手方の自由かつ安全な通行を妨げることを積極的に意図する」とは推認できないと判断した部分にあるようである。
ここは納得の感想である。
量刑
ここはだいたい納得の範囲。
気になるのは、双方控訴したことにより、「自己に不利益な事実を率直に認めたり」「反省の態度を示していること」の部分がどのように扱われるかが気になるところ。
「被告人の責めに帰し得ない事情のため公訴提起から公判審理までの期間が長引き、被告人として不安定な状態に置かれ続けたこと」の部分は何を意味するのだろう。これは、署名を受けて危険運転に訴因変更され、追加の捜査が行われたことを意味するのだろうか。