![見出し画像](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/90308769/rectangle_large_type_2_3c69a77a922e366986453bda61dd2739.jpeg?width=1200)
無駄なメールを減らし、“あなた宛”に送れるように。“私宛”で受け取れるように。新パッケージ KARTE Messageが目指すMA
こんにちは。プレイドでKARTE Messageのプロダクトマーケティングを担当している冨里です。
この記事では2022年11月にリリースしたマーケティングオートメーションの新パッケージ「KARTE Message」について、リリースの背景や今後実現したい世界、そのために備えている機能をご紹介します。
パッケージの紹介ページはこちら
前半ではMAの中でもメインのチャネルになるメールマーケティングの課題について、後半ではKARTE Messageの機能と併せてこれから必要になってくるMAのかたちについて書きます。
マーケティングオートメーションで人生が変わった男
はじめに、簡単に自己紹介をします。
私はマーケティングオートメーション(以下、MA)で人生が変わった人間の一人だと思っています。
2007年に新卒で大手メディアレップに入社し、インフラエンジニアを経て、アドサーバーやアクセス解析のコンサルタントからキャリアをスタートしました。海外のアドテクをローカライズして日本に展開することも多く、自社プロダクトも含め20以上のマーケティングサービスに触れていました。
一方元々コピーライティングやマーケティングに興味があり、ベンダー側ではなく、事業会社で自分の手で施策を実行したりユーザーを分析したい思い、2015年に当時300人ほどだった株式会社ビズリーチに転職します。
そこではBtoC、BtoBのマーケティングや転職サービスのプロダクトマネジメント、最後は人事で採用ブランディングに携わるなど、会社が急成長するなかでマーケティングを軸に様々な経験をすることができました。
その中でも元々ベンダーでツールに触れていた経験を生かして、当時日本に上陸したMAツールのMarketoやリリースしたばかりのKARTEを導入したことは大きな転機でした。
ユーザーの属性や行動データとメールやポップアップのアクションが1つのプラットフォームに集約され、そのアクションに対するユーザーの反応もまた次のアクションに繋げることができることに非常に可能性を感じました。
パーソナライズしたメールやWeb接客を用いてサイト内と外の体験を設計し、スピーディーに実装、分析することはとても刺激的でした。自由で、新たなパワーを得たような感覚で、デジタルマーケティングに対する考え方や働き方が大きく変わりました。
色々と良いタイミングが重なり小さいながらも成果もだすことができ、社内で表彰いただいたり、2017年にはMarketo Championに選出いただきました。おかげで社内だけではなく社外との交流が増えました。
特に人材業界のユーザー分科会の幹事を引き受けたことで、2年間、毎月欠かさず人材サービスのマーケターの方々と勉強会や飲み会を通じてメールやサイト内の体験について議論したことはとても大きな財産になっています。そして好きが高じてKARTEの可能性をもっと強めたい広めたいという思いで2020年にプレイドに入社します。
MAに魅せられ活用してきた私は、ついにMAをつくる側に回ってしまったわけです。
無駄なメールが生まれるのは、コスパが良すぎるから
MAは様々なチャネルを扱いますが、その中でも広くユーザーに届く接点はなんといってもメールです。ということで、ここではメールマーケティングの話に触れたいと思います。
こちらの記事によると、世界では40億人以上がメールアドレスを持ち、1日3,000億通以上のメールが飛び交い、その数は年々数%単位で増えています。またその45%がスパムメールだと言われています。驚異的な数字ですね。
そんな状況の中で、メール配信インフラを提供するベンダーは受け取り側のメールサーバーからスパムと認識されないように日々配信量をコントロールしたり到達率をあげるために努力しています。
毎日読みきれないほどのメールが飛び交い、しかもその約半分は迷惑メールである。届け先にどんな情報を伝えるかよりも、どうやったらスパムと判定されないかに気を遣わなければならない。どうしてこんな世界になってしまったのでしょうか。
私はその原因はメールマーケティングの仕組みに原因がある、と考えています。それは、
一斉大量配信のコストパフォーマンスが良すぎるということ。
メールは1つの文面を100通送ることも1万通も100万通も送り手側の作業を考えるとさして労力が変わりません。
メールマーケティングの仕組みに由来するこの「便利さ」、コストパフォーマンスの良さによって、1日に3,000億通以上のメールが配信される状況を招き、メールを送る側にとっても受け取る側にとっても大きな無駄を生み出しているのではないでしょうか。
メールマーケティングに取り組んだ人であれば誰しもが、「このメールはある人にとっては無駄だろうな、関係ないだろうな」と思いつつもその人を送信リストに入れ込んでしまったことがあるのではないでしょうか。
私も、送るべきではないと思いながらも、「もしかするとこのセミナーの案内が案外役に立つかもしれない」と願望とほぼ区別のつかない理由をひねり出して、送信対象範囲を広げた経験が何度もあります。
さらに、簡単に大量のリストに配信できるせいで、受け手がどう感じるかといった想像力が働きづらく、送り手の一方通行のコミュニケーションになりがちです。見当違いなメールに返信を喚起する力はありません。つまりフィードバックがないので、この一方通行は改善されるチャンスを失ってしまってもいます。
結果として、メールを送る側は一斉に送った後、どれだけの割合で届いたか、開封されたか、クリックされたかといった定量的な振り返りしかすることなく数字の世界だけで効果を見がちです。
つまり大量送信して、送りっぱなしで終わってしまうため配信対象や内容が改善されることもなくどんどん配信量だけが増えていってしまいます。
メールマーケティングの便利な仕組みによって導かれる「一度に送信できるのだから、せっかくなら多くの方にメールを送ろう」というもったいない精神の積み重ねが、毎日読みきれないほど大量のメールを生み、しかもその半分はスパムとして判定されてしまう状況を生んでいるのでは、と私は考えています。
このような認識のもと、私達プレイドが市場の中では後発としてMA/メールマーケティングのサービスを提供するにあたりこの流れを助長したり、加速させるべきなのかと考えた時、その答えはNoでした。
メールのパーソナライズ配信のコスパを上げる。KARTE Messageの3つの特徴
では、どのようなアプローチをとるべきか。
一斉配信のコスパの良さは、パーソナライズ配信のコスパの悪さの裏返しといえます。そうであるなら、パーソナライズした配信のコスパを上げることが方法のひとつだと考えました。ここでは、そのアプローチに即した3つの特徴を紹介します。
1)パーソナライズ配信の工数を下げる”省力化”
メール配信に従事する方へのユーザーヒアリングで、ユーザーの属性や行動に合わせて配信リストを生成する工数の多さが大きな課題であることがわかりました。最適な配信リストを作成するためにはSQLを書いたり、エンジニアに依頼したり複数のCSVを組み合わせるなどの手間が発生します。
メールマーケティングの担当者はパーソナライズしたメールを送りたい、そう思いながらもその手間を想像して足踏みしてしまうことも少なくないと思います。
そこでKARTE Messageでは導入時に必要なデータを連携しマスタテーブルを作成すれば、キャンペーンのメールを打つ際にはマーケティング担当者の方がSQLを書かなくともノーコードでユーザーをフィルタし適切なセグメントリストを作成できる機能を用意しました。
またユーザー変数の差し込みやユーザーごとに合わせた画像や文章の差し込みを容易にすることでパーソナライズ配信のハードルをできる限り下げる機能も備えています。
2)パーソナライズ配信の効果をユーザー軸で”可視化”
また多くの場合労力をかけてセグメントをつくっても単純に配信対象者の数が減るだけで、そのままでは効果が上がるわけではありません。
その背景には、せっかくパーソナライズしたメールも開封率やクリック率のみで効果を計測するため、実際には来訪後の行動が異なっていたとしてもそれに気づけない、ということがあるのではないでしょうか。メールは人ごとに送るのに、効果の分析はGoogle Anlyticsでページ単位の来訪数やCV数のみを確認するというケースも少なくありません。
この問題はKARTEに元々備わっている機能で解決します。
例えばメールを送った後に誰(どんな属性で、過去にどんな行動をとったユーザー)がメールに反応したのか、またサイトに来訪した際にCVまで至らなかったとしてもどんな行動をとったのかを観察することが可能です。そのため、次のメールでは送るべきセグメントと、そうではないセグメントが明確になり、どういった行動変容を起こせたのかを深く理解することが可能になります。
3)セグメントごとに、連続的なパーソナライズ体験の”自動化”
省力化と可視化だけでは、その効果をあげることはできません。またパーソナライズした体験は単一のアクションだけでは成り立ちません。
メールを送った後のリアクションによって今まさに情報を求めている方なのか、もしくは不要と思っているのか見極め、送るべき内容を変えたりコミュニケーションを控えることでより効果を最大化することが可能です。
今回のリリースに向けて新しく開発した「Journey」によってパーソナライズ配信はより高度さと容易さを兼ね備えました。
「Journey」は、対象となるセグメントのユーザーが特定のゴール(購入や会員登録などのCV)を達成するために必要なアクションを繋げたり分岐させることができるKARTEの新しいシナリオエディタです。
メールの開封やクリックはもちろん、サイト上の様々なCVの有無を分岐の条件にしてメールやプッシュ通知を出し分けることが可能です。
セグメントに含まれるユーザーのうちどれくらいの方が次のステップに遷移したのか、アクションによってCVに到達したのかが可視化されます。また1つのシナリオ内のアクションの差し替え等の編集も柔軟に行うことができるため、パーソナライズ体験のPDCAを正しく回すことが可能です。
これらの3つの特徴によって、パーソナライズ配信のためのコストを下げ、正しく成果を可視化し、さらに連続的な体験を自動的に設計することによってパーソナライズ配信のコストパフォーマンスをあげ、無駄なメールの送受信を減らせるのではないかと考えます。
KARTEの思想と強みの上に積み重なってできたKARTE Message
パーソナライズしたメールのコスパを上げる。その道のりは上記にあげた以外にも様々な機能が必要になりますが、現時点で私達が提供するKARTE MessageとKARTEを活用することでその一歩目は実現できると信じています。
私達がCXプラットフォーム KARTEを提供しはじめて7年以上が経ちます。
当初Web接客という分野を開拓しウェブサイトでも店舗と同じ様に接客を行うためにプロダクトのコアに置いた機能は「来訪ユーザーのインサイトの理解」と”接客”を実現するための「0.x秒で行われるデータ処理速度」です。
今でこそ1st Party Customer Dataと呼んでいますが当時からウェブサイトにKARTEのタグを埋め込むだけで来訪ユーザーの属性や行動データが1つに集まり、そのデータをもとにセグメントを作成しポップアップやアンケートなどのアクションを実行することができました。
Web接客はあえて言い換えると”オンサイト”マーケティング オートメーションの先駆けだったのだと思います。
さらに2018年からはBigQueryを基盤としたスキーマレスのKARTE DatahubというCDPの提供も開始しています。この基盤は今回KARTE Messageの提供にあたって非常に意味のある機能となっています。
というのもマーケティングオートメーションを始めよう、メール配信を始めようとすると一番最初のつまづきポイントは自前で持っているユーザーのメールアドレスリストの連携になります。
KARTE Datahubの存在によって、KARTE Message はスキーマレスのDBを持つMAになることができ、それによってメールリストや顧客マスタを連携するためにスキーマをカスタマイズする必要がほぼなく、データ連携の負荷を大きく減らすことが可能となっています。
さらにアプリ向けのKARTE for App、1st Party Customer Dataを広告と連携するKARTE Signals、LP改善やウェブサイトのコンテンツ更新のためのKARTE Blocksが並行して立ち上がっておりメールやウェブサイトだけではなく広告やアプリといったマーケティング・チャネルを横断して体験設計が可能となっています。
そして先ほどの新機能「Journey」によってメールだけではなくプッシュ通知やLINE※、ウェブサイト上の接客※も含むアクションのシナリオ設計、自動化が可能になります。(※2022年11月現在開発中の機能となります。)
ここまでメールマーケティングの負を取り除くという側面から説明してきたKARTE Messageですが、その他のプロダクトやJourneyによって、メールマーケティングツールにとどまらずサイト内、外のコミュニケーションを横断した新しいマーケティングオートメーションのパッケージになったといえます。
KARTEだからできる、新しいマーケティングオートメーションを目指して
KARTE Message はいわゆるメールマーケティングに必要な機能が拡張されてできあがったMAでも、セールスオペレーションを効率化するために生まれたMAでもありません。
私自身、BtoBマーケティングにおけるリードナーチャリングの文脈でMAを活用することから始めましたし、MAと聞くとやはりBtoBの分野で発展してきたと思っています。
営業チームの商談管理、顧客管理のためのSFAの発展とともに顧客データ、商談フェーズとセットでコンテンツ管理やメール配信を一括して実施する必要がでてきました。検討期間の比較的長いBtoBマーケティングにおいては見込み顧客の獲得、育成、管理が重要で、サービスサイトのコンテンツはそこまで充実させられないことも考えると、メールは顧客との接点において特に重要になります。
一方で、検討期間も短く、その時々の気分にも左右される購買行動が多いBtoCのビジネスに置いてはメールを基礎としたマーケティング活動は実際のカスタマージャーニーに即していないのではないかと考えています。
私達はBtoCにおける最重要な接点であるサイトやアプリ上のオンサイトマーケティングの領域からプロダクト開発を進めており、サイト上に大量に集まるユーザーの属性や行動データを元にすべてのチャネルの施策を考えられることが理想的だと考えています。
KARTE Messageのリリースによってようやくサイト外の体験も統合していく準備が整いました。
KARTE シリーズを組み合わせることでウェブサイトやアプリに訪問しているユーザーを深く理解し、サイト上の接客と合わせて、誰にいつどのようにウェブサイトに来訪してもらうか、そしてユーザーセグメントに応じてメールやプッシュ通知を出し分け、シナリオを分岐させることが実現可能です。
”メール”マーケティングオートメーションの提供ではなく、マーケティング全体の最適化を図り、顧客のロイヤルティを向上させる新しいマーケティングオートメーションの提供を開始することができました。
メールの仕組みを変えて、無駄なメールを減らし、“あなた宛”に送れるように。“私宛”で受け取れるように。
KARTE Messageが広まりパーソナライズされたメールやプッシュ通知が増えたあとの世の中を想像したときに私達が実現したいのは、
「世の中から無駄なMesssageを減らし、マーケターの方が”あなた宛”にMessageを送れるように、また受け取り手が”私宛”のMessageを受け取れるように」なる世界でした。
もう少し噛み砕くと受け手にとって「不要なメール(や通知)」が減り受信箱は毎日溢れず、「そうそうその情報が欲しかった!」「いま送ってくれてありがとう!」といった体験が増える世界です。
サービスを利用するユーザーのことを思い、適切なタイミングで適切なメッセージを届け、良いサービス体験をしてもらいたいという思いは多くのマーケターが共通して持つ考えだと思います。
ただそれを実現するために一斉配信のコスパの良さやパーソナライズした配信を行うための多くのハードルが立ちはだかっています。そのハードルを取り除き、マーケターの方が自然とユーザーを理解し適切なメッセージを届けられるようにしたいというのが、私達の考えです。
最後に
ここまで長文にお付き合いいただきどうもありがとうございます。
KARTE Messageは大きなビジョンを掲げたパッケージですが、まずは目の前の業務の改善や効果を感じていただかないことには何も始まりません。
まずはPublicβ版としての提供を開始し、このサービスの提供を通して皆様とその先にいるエンドユーザーの顧客体験を一緒に考え実行し、多くのフィードバックをいただきながら、どんどん進化させていければ幸いです。
もしここまでお読みになって少しでも興味を持っていただけましたらお気軽にお問い合わせください。KARTE関係なくMAやメールマーケティングの未来について色々な方と一緒にディスカッションできれば幸いです。
またKARTE Messageについてのお問い合わせや詳細はこちら
どうもありがとうございました。
(書き手プロフィール)
冨里 晋平
新卒でデジタル・アドバタイジング・コンソーシアム(株)に入社。インフラエンジニアを経験したのち、アクセス解析やアドサーバのカスタマーサクセスを担当。2015年に(株)ビズリーチに転職し、マーケティングやKARTEやMarketoを活用した顧客体験の企画を担当。人事で採用ブランディングの企画、実行も。2020年2月に(株)プレイドに入社。現在はKARTE Messageのプロダクトマーケティングを担当。