【通勤電車の詩 vol.97】人生にポイントなんかない
ガタンと音が鳴って少し電車が揺れる。
複雑に入り組んだ線路の中から、電車は行くべき方向に進んでいく。
自分で選んでいるのではない。
あらかじめ決められた方向に進んでいく。
人生のポイントもこんなにわかりやすかったらいいのに。
後悔することはたくさんある。
なぜあの時、行くべき方向を間違えたのか。
でも人生も線路と同じだ。
後戻りができない。
人生のポイントで音が鳴らなかったか、揺れなかったか。
そんなことを探ったところで、何の意味もない。
実力不足で医大に行く夢を諦めた。
今は医学とは何の縁もない仕事をしている。
あの時、何の音も鳴らなかった。
脳梗塞で足が腐敗した親父に手術をしない選択をした。
そして死んだ。
あの時、何も揺れなかった。
人生にポイントなんてないんだよな。
行くべき線路は自分で作っていくものなのか。
ならばもう耳を澄まして音を探すことはやめよう。
「通勤電車の詩」を読んでいただきありがとうございます。 サラリーマンの作家活動を応援していただけたらうれしいです。夢に一歩でも近づけるように頑張りたいです。よろしくお願いします。