露天風呂の夢は諦めない
ぼくが新入社員の頃は現場仕事で毎日汗だくだった。
作業着も油まみれで真っ黒。
ぼくは一生懸命だったから、汚れ方が半端なかった。
見かねた先輩がスーパー銭湯に連れて行ってくれた。
そこで湯に浸かった露天風呂のことを、30年経った今も覚えている。
夕暮れの秋の空を眺めながら、将来は家を建てたら露天風呂を作りたいなぁ、そんなことを思った。
露天風呂付きの一軒家、あの頃は必死で働けばそんな夢が叶うんじゃないかと、真剣に思っていた。
でも現実はそんなに甘くない。
露天風呂なんて夢のまた夢。
あの頃描いていた夢なんて何一つ叶っていない。
必死で働いてこなかったのだろうか。
ぼくの頑張りが足りなかったのだろうか。
頑張りに基準なんてないから、そんな疑問に答えはない。
だけど自分なりに必死でやってきた自負はある。
もう人生の折り返しは過ぎた。
もう頑張れる歳ではない。
必死で働いたのに夢が叶えられないまま人生に幕を降ろすのか。
いやいや、それじゃ悲しすぎる。
もうひと頑張りしてみるか。
露天風呂を作るために。
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「通勤電車の詩」を読んでいただきありがとうございます。
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