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漢方茶を通した体調管理
漢方茶とは、生薬や薬草
を単体で煮出ししたお茶、
ブレンドしたお茶のことです。
生活スタイル、体質や
その日の体調に合わせた
漢方茶を日々の生活に取り入れることで、
漢方茶を通した体調管理に興味はありませんか?
漢方茶は、
医療用漢方薬や
市販の漢方薬と比べると、
日常生活に取り入れやすいことが利点です。
このnoteでは、
漢方茶の入門編として、
東洋医学の考え方をまとめています。
最初に
お茶の話に入る前に
漢方の基盤になっている
概念や考え方を話します。
漢方の特質として、
漢方は新陳代謝の医学であると言えます。
東洋医学は、
からだを自然の中の一部と捉え、
人のからだの中も自然のように変化するとし、
その中でバランスを取る必要があるとしています。
よって漢方は、
新陳代謝を促すことで
自然治癒力を高め、病気を
治癒していく手法だと言えます。
熱ければ冷やし
足りなければ補う
といったバランスを取るのです。
薬の違い
西洋医学では、
病気に主体を置き、部分ごとに診ていきます。
薬は化学的に合成した成分でできています。
東洋医学では、
病気を診るのではなく病人(人)に主体を置き、
全身的なバランスを診るのが特徴です。
からだ本来のもつ働きを高め、
症状が出ているところだけではなく、
根本から改善することを目指します。
漢方薬は、
自然界に存在する動植物を用いた
生薬からできているため、化学的な
合成をしない天然由来の薬になります。
からだの状態を知るモノサシ
漢方では、病状や病態だけでなく、
体質を重んじてます。
体質を把握するモノサシとして、
「気血水」「臓腑経絡論」
「陰陽論」「五行論」
などを使います。
□気血水
東洋医学の考える生理物質は、
生命活動を維持するための不可欠な物質として
精・気・血・津液に分類されます。
よく気血水と呼ばれますが、
精は気血水の大元の材料です。
また津液をわかりやすく「水」
としているのもの日本特有です。
精・気・血・水(津液)は
生理活動に関わる基礎的な物質とされます。
ゲームは、ソフトとハードで二つ揃って
初めて遊べます。
気血水はソフトに当たり、
臓腑経絡はハードに当たり
二つ揃ってからだは健康と言えます。
不調の原因の一つとして、
気血水の過剰・不足・滞りが起こり
結果、心身のバランスが崩れると考えられています。
気血水のバランスは、
気:からだを動かすエネルギー
血:栄養を運ぶ液体
水(津液):からだを潤す液体
3つそれぞれが、
適切な量でスムーズに
動いている状態が理想です。
まずは、気血水の
元になる精について
説明していきます。
精の生理
精は組織・器官を滋養する働きや
気・血を化生(変化・生成)し、
神(しん)を維持する働きがあります。
神は広義では生命活動の総称のことです。
狭義では精神・意識・思惟活動を主るとされています。
精は、からだの構成や
生命活動を維持する
最も基本的な物質と考えられています。
精の化生
精は、父母から受け継いだ先天の精と
飲食物を摂取することにより得られる後天の精が
合わさった生理物質であり、飲食物を摂取することにより、
絶えず補充されています。
精 = 先天の精 + 後天の精
先天の精は、
腎に貯えられ、
からだの成長・発育の源になります。
後天の精は、
水穀の精とも呼ばれます。
後天の精の一部は
気・血に化成され、
全身の組織・器官に行き渡ります。
残りの一部は腎におさまり、
絶えず腎精を補充しています。
水穀の精微は、
気・血・津液の生成原料です。
『 水』は液体としての飲食物のことで、
『 穀 』とは固体としての飲食物のことを指します。
よって、水穀 = 飲食物を意味します。
そして、『 精微 』とは栄養素に相当するものです。
また気・血・水(津液)の
生成・代謝は主に五臓六腑でおこなわれます。
このことから臓腑経絡と気血水は切っても
切り離せなく密接に関係しています。
精の作用
精は生殖という重要な作用の他に、
滋養、血への化生、気への化生、
神(しん)の維持などの作用を持ちます。
生殖:
生まれてから
腎の生理機能は徐々に盛んになり
一定程度まで充足すると、生殖機能を
成熟を促す物質である天癸が産生され、生殖能力が備わります。
滋養:
精はからだの組織・器官を滋養します。
精が充足していれば、各種の生理機能は正常に発揮されます。
血への化生:
精は必要に応じて血に変化します。
精が充足していれば、血も旺盛となり、
正常に各組織・器官を滋潤することができます。
気への化生:
精は必要に応じて気に変化します。
気は絶え間なくからだの新陳代謝を推動・制御し、
生命活動を維持しています。
神(しん)の維持:
神とは生命活動の総称で、
精が充足することにより神の機能が保たれるとしています。
精の不足による病態
精虚:
精が不足した病態を精虚と言います。
腎に貯蔵されている精を腎精といい、
精虚と腎精不足は同義です。
精が不足すると、
小児では成長不良・発育不全
成人では生殖機能の減退と髄海不足などが生じます。
*髄海:脊髄液のこと
次に気について話していきます。
気の生理
気とは、人体を構成し、
生命活動を維持する精微物質のこと。
つまり極めて細かい物質を
表すとともに、機能を表す言葉です。
他の生理物質(血・水)と同様、
全身の組織・器官を巡り、体中に満ちており、
からだを構成し、生理活動の原動力となります。
気とは何か?
東洋医学は『 気 』を
中心とした話が多いです。
なぜなら古代中国人は
全てのものは気からできている
と考えていたいからです。
私たちの日常生活でも、
・気持ち
・気分
・気まずい
・気合い
・気心が知れる
・天気
・空気
など『 気 』を使った表現は多いです。
日常会話で使われる『 気 』は、
精神的要素を表すものが多いです。
東洋医学では、
さらに広範的な概念で
『 気 』を扱っています。
自然界では、
物事が変化するには
全てエネルギーが必要です。
水が沸騰し、水蒸気になり、
冷やされ氷になるには
全てエネルギーが必要です。
人のからだにもこの考えが当てはめられ、
体の中では何かしらのエネルギーが働いて
変化が起きているを考えられました。
この変化を促す何かしらの
エネルギーのことを『 気 』と表現したのです。
『 気 』は決まった形はなく、
目に見えません。
しかし、必ず現象を伴います。
熱気も寒気も目に見えませんが、
肌が赤くなったり、冷えたりと現象を通じて、
私たちは『 気 』を認識することや表現することができます。
気の動きと働き
気機とは、気の動きのことです。
からだの生理活動を支える気の動き(気機) は4つあります。
気が昇る
気が降りる
気が出る
気が入る
この4つの気の
運動の協調によって
からだのバランスを保っています。
気機は
からだの新陳代謝を促進させ、
生命活動を維持しています。
そして、各臓腑には特有の気機があります。
また気の働きは、5つあります。
気の働き
推動作用:
気には物質を巡らせたり、推進する働きがある。
温煦作用:
気には臓腑や手足など、体全体を温め、体温を維持する働きがある。
防衛作用:
気には病原菌やウイルスなど、外から襲ってくるものから身を守り、防衛する働きがある。
固摂作用:
気には体液や血液、汗などが漏れ出ないように毛穴や血管などを引き締め、個体として存在させる働きがある
気化作用:
気には食べ物から栄養を取り込んだり、血(けつ)を精(せい)に変えて貯蔵するなど、物質の変化を促進する働きがある。
気の種類
気の種類には、主に、
原気=元気・宗気・営気・衛気
があります。
○原気(元気)
原気は、人体の最も根本的な気であり、
生命活動の原動力となります。
また原気は、
先天の気と後天の気によって構成されます。
先程の精の話と似ています。
原気 = 先天の気 + 後天の気
先天の気とは、
両親から受け継いだ命の源で、
腎にしっかり蔵されています。
後天の気とは、
生まれてから食物を取り入れたり、
呼吸することによって養われるもので、
主に脾胃と肺によって作られます。
先天の気:両親から受け継いだ命の源。腎に蔵される。
後天の気:食物(水穀の気)+ 空気。脾胃と肺によって作られる
○営気
豊富な栄養の一部をもち、
血の一部として脈中に入り全身をめぐります。
営気は組織・器官などの活動を支えます。
○宗気
宗気は、脾胃によって得られた
栄養物質(水穀の精微)と、
呼吸によって得られた空気(清気)が合わさり、
胸の中で集まったものです。
宗気 = 水穀の精微 + 清気
その働きは、
①心臓を力強く動かし血流を促したり、
②経脈に気血を推動する作用が強い気です。
①呼吸を推動する:宗気は肺の呼吸を推動するため、呼吸や発声などは宗気と関係する。宗気が充実していれば呼吸はゆったりとして均一で、発語ははっきりしており、声は大きくよく通る。
②血の運行を促進する:宗気は心の血を推動するため、心拍動の力とリズムなどは宗気と関係がある。宗気が充実していれば脈拍はゆったりとし、リズムは一定で力がある。
○衛気
衛気は元気(=正気)の別称で、
外邪から身を守る強い防衛作用と、
体が冷えないように温める温煦作用がその特徴です。
体表の傷を修復する働きも持ち合わせています。
衛気は昼間は主に体表を巡り、
時に応じて汗腺を開いたり閉じられたり
体温調節を図り、夜は体内に入って内臓を温めます。
また衛気は概ね体表から
40〜50cmくらいの厚さでまるで
オーラのようにからだを覆っているとされています。
○神気
東洋医学では自然界の生々流転、
一時も休むことなのない変化を支えて
いるものを『 神 (しん)』としています。
広義では、生命活動の総称で
神気は元気と同じ意味です。
よって、
臓腑・生理物質・精神活動の機能が
統合された情報として外に現れたもの
とされます。
天気とは天の『 神気 』のこと。
東洋医学では
自然界を大宇宙としたら、
人間は小宇宙と捉えるため
人間にも同様に『 神(しん) 』がいると考えます。
人のからだにとっては、
神気とは生命そのもの。
雨がふる論理は知らなくても、
雲の状態や空気の湿り具合で
なんとなく雨が降るかもしれないと
天気を直感的に捉えることができます。
神気は目に見えなくても
人の姿や体型、顔色、目から感じる輝き、
声の調子や大きさ、動作やしぐさに現れます。
神気が充実していると、
明るい気持ちになったり、
どっしりとした安定した印象を与えたり
実際より大きく見えたり
目が澄んで力強かったり
表情も豊かです。
このような状態を
東洋医学では、有神、得神といいます。
反面、
神気が衰えて来ると、
小さく見えたり
顔色に光沢がなく
目が曇って力がなく
反応が鈍くなります。
このような状態を
失神、亡神と言います。
狭義の意味では、
神気は神志・心神と呼ばれます。
神気は、日常生活での会話や、
物事を考えたり、計画したりや
泣いたり怒ったり笑ったりの一切の精神活動を指します。
胸が詰まったり、
ソワソワしたり、
集中力がなかったり、
通常見えないものが聞こえたり、
通常見えないものが見えたり、
思考が止められないなど、
全て狭義の神気の異常と考えます。
「神(しん)」の機能は、
元来人体に備わっている精神活動を表す
五神(魂・神・意・魄・志)
と
外界の刺激に対する情動反応である
五志(怒・喜・思・憂・恐)
に大別されます。
つまり「神(しん)」は
人体の内部環境を調節し、
外界の変化に適応させます。
五神
魂:評価・判断などの精神活動
神:身体活動および精神活動を統率・制御する
意:思考・推測・注意力・記憶などの精神活動
魄:感覚・運動及び情志などの精神活動。
見る・聞く・嗅ぐ・感じるなども含む。
志:記憶を維持したり、思考を経験として蓄積するなどの
精神活動
五志に悲・驚を加えて七情とする考えもあります。
五志・七情
怒:怒るという情志。気機を上昇させる。
失調すると、易怒・急躁する
喜:喜ぶという情志。気機を緩ませる。
失調すると、精神のコントロールができなくなる
思:思う・考える情志。気機を鬱結させる。
失調すると、些細なことで落ち込む
憂:憂う・心配する・不安になるという情志。気機を鬱滞させる
失調すると、鬱が出現する。
悲:悲しむという情志。気の消耗を起こす。
失調すると、憂や悲しみ
恐:恐れるという情志。気機を下降させる。
失調すると、些細なことで恐れる。常にオドオドする。
驚:驚くという情志。気機の乱れを起こす。
失調すると、些細なことで驚く、動悸や失禁、ひきつけ
○その他の気
臓腑の気:
臓腑の気とは、臓腑を機能させる気のことです。
全身に張り巡らせている元気を人体の場所と性質によって
5つに分類したものが五臓の気です。
五臓とは、肝・心・脾・肺・腎のことです。
五臓は、直接的に消化活動はせず、
指示を出す役目と考えられ
各蔵にはそれぞれ特有の精血を蓄えておく働きがあります。
これに対して、六腑があります。
胆・小腸・胃・大腸・膀胱・三焦です。
六腑は、
出された指示に対して
具体的な働き手と同じで
消化・吸収・排泄を担当します。
現代の東洋医学では
五臓六腑に、心包を加えて
六蔵六腑が提唱されています。
心包・三焦は、
実際の臓器は存在せず、
概念的な意味で使われています。
歴代の医家が様々な説を唱えていますが、
現在でも統一されていません。
心包・三焦は
臨床的経験と必要性から、
八網弁証の陰陽と同様に、
太極・総論として概念化されたのではないか筆者は考えます。
また東洋医学の五臓六腑は
西洋医学と名前は似ていますが、
各臓器の機能は、西洋医学の臓器より多岐に渡ります。
全く一緒ではない別物だということを覚えておいてください。
精気:
精気とは、精そのものを表す。
清気:
清とは、軽く清らかなものという意味があり、清気とは水穀の精微中にある軽く清らかな成分、あるいは体に必要な物質として用いられる。
濁気:
濁とは、重く濁ったものという意味があり、濁気とは水穀の精微中にある重く濁った成分、あるいは体に不必要な物質として用いられる。
気の病理
気の病症は非常に多いです。
気虚、気陥、気滞、気逆の4種があります。
気虚:
気虚とはからだの機能低下により現れる病態です。
久病、過労、高齢などで体が弱ることにより起こります。
症状として
息切れ、精神疲労、眩暈、
自汗、動くと症状が悪化等があります。
ー 舌質淡・苔白、脈虚・無力
気陥:
気陥とは気が虚して昇挙無力となるために、
気が下陥した病態です。
気虚の進行やある一臓の気が損傷して起こります。
症状として、眩暈、息切れ、
倦怠、長期に渡る下痢、腹部の墜脹感、
脱肛、子宮脱、内臓下垂などがあります。
ー 舌質淡・苔白、脈弱
気脱:
気虚が極限にまで悪化した病態を気脱といいます。
症状は重篤で緊急を要することが多いです。
症状として、
意識を失う、顔面蒼白、強い自汗など
気鬱・気滞:
気滞とは人体の特定の臓腑や
部位の気機が阻滞し、運行不良となる病態。
気滞の原因は大変多く、
七情、飲食、外邪の感受等が関与している場合が多いです。
ー 脹悶、疼痛
気逆:
気逆とは気機の昇降失調により、
気が上逆しておこる病態です。
症状として、
易怒、頭痛、眩暈、
咳嗽・喘息、悪心・嘔吐、噯気(しゃっくり)
吃逆(げっぷ)があります。
臨床上は肺気、胃気、肝気の上逆が多いです。
肺気上逆 咳嗽、喘息
胃気上逆 しゃっくり、ゲップ、悪心、嘔吐
肝気上逆 頭痛、眩暈、昏厥、吐血等
正気と邪気について
正気とは、
原気(元気)の別名です。
現代医学的には
自然治癒力と表現できるのではと筆者は考えます。
邪気とは
正気の流れを阻む気を指します。
邪気は外から人体を侵すもの=外邪と
感情や飲食の過不足などによって
自らの体内に生じたうちなるもの=内邪
とに分けられます。
外邪
東洋医学には、
風・寒・暑・湿・燥・火の
六気(りっき)が存在するとしています。
自然界の気候変化を指すもので、
人体にとってもなくてはならないものです。
この自然界の六気が
過剰になったり時季に反して現れると、
人体に影響を与えて発病の原因となります。
人体に侵入し、
悪さをするようになると
邪気としてあつかい六淫(ろくいん)とも呼ばれます。
六淫は、
風邪・寒邪・暑邪・湿邪・燥邪・火邪
の6種類の外邪の総称です。
六淫は季節と関係が深く、
春季は風がよく吹くので風邪が発生しやすく、
夏季は暑邪の影響を受けやすく、
長夏(梅雨)は湿度が高くなるので湿邪が発生しやすく、
秋季は乾燥しやすいので燥邪が発生しやすく、
冬季は寒邪の影響を受けやすくなると考えられています。
また、
この六淫はそれぞれ五臓と
結びついていて、
風邪は肝
暑邪・火邪は心
湿邪は脾
燥邪は肺
寒邪は腎
に特に影響を及ぼします。
六淫の特徴
風邪:軽く浮揚しやすく、上昇、発散させる性質。
風邪は上へ外へと向かう傾向がある。
腠理を開けて衛気や津液を外に泄らす。
部位がたびたび移動する。
百病の長
寒邪:冷える、固まる、縮こまる、流れが止まる。
暑邪(熱邪):炎天下、蒸し暑い、暑苦しい、消耗する。
湿邪を伴う
湿邪:重い、ねっとり粘りがあり動きづらい
下へ向かう、下へ注ぐ
脾を損傷しやすい
燥邪:乾燥する
肺を損傷しやすい
火邪(熱邪):乾き
温熱に加えて上へ向かう性質
風に揺られているような動き熱極・生風
□血の生理
血とは、
血脈中を流れる赤色の液体で、
豊富な栄養分を有しています。
血は、
営気・津液・精により構成され、
気の推動を受けて循環し、全身をくまなく滋養しています。
血( けつ )は
体内にある紅い液体のことです。
西洋医学の血液に相当します。
東洋医学では、
赤血球とか血小板とか細かく分けて考えません。
また完全にイコールではありません。
血は脈中(血管の中)を循環し、
全身に栄養を与えながら、精神を安定に保つ働きがあります。
血の生成
血とは、
狭い意味では血液のことをいいますが、
広い意味では、からだに栄養を与える物質のことを指します。
水(津液)と同じで、
気の推動作用を受けて人体を巡り、
全身をくまなく滋養します。
また精神活動を
安定させるはたらきがあります。
血が充実していれば
五臓六腑が担っているはたらきが円滑に機能し、
心身ともに健康で安定した状態となります。
血の化生
飲食物が脾や胃のはたらきによって
消化吸収されてできた水穀の精微や、
先天の気である腎の精気から化生されます。
血のはたらき
滋養
血には人体に必要な
栄養物質が豊富に含まれていて、
気の推動作用によって全身を巡り
組織・器官をくまなく滋養することで、
これらは正常な生理機能を発揮します。
このはたらきが正常に
行われているかどうかは、
顔色・皮膚・毛髪・筋肉・感覚・運動などに反映されます。
東洋医学は西洋医学のように
直接、血液を見て判断することはありません。
全て現象を見て判断します。
機械がなくても、どうにかして
人の状態を把握しようと何千年も研鑽されているのです。
制約がモチベーションにつながる
機械がなかったからこそ
東洋医学は観察力を高めていく結果につながります。
データや数値でなくても読み取れることは
たくさんあります。
観察眼を高めていきましょう。
形や色には全て意味があると筆者は信じています。
からだの見方はたくさんあります。
神の維持
神とは、生命活動の総称のことを指しますが、
ここでは特に精神活動のことを言い、
血によってその機能は正常に維持されます。
血の滋養が不足すると
精神活動に失調が現れやすくなります。
血の病理
主に血虚、血瘀、血熱、血寒があります。
血虚:
脾胃虚弱による生化不足、急性・慢性出血、
過度な七情による陰血損耗などによりおこります。
症状として、
顔色が悪く白または萎黄、
唇色は淡白、爪甲が白い、眩暈、
目のかすみ、心悸、不眠等。
ー舌質淡・苔白、脈細無力
血瘀:
寒凝、気滞、気虚、
外傷等により血行が悪くなり、
経脈上や臓腑等に血が停滞しておこります。
症状として、
刺すような痛み(刺痛)、
拒按、夜間増悪、腫隗、
顔色・唇・皮膚等が紫暗色、
閉経や生理に血隗を伴うなどです。
ー舌質紫暗またはお斑、お点、脈細渋
血熱:
臓腑の火熱が盛んになり、
熱が血分に入ることでおこります。
また煩労、飲酒、七情などが原因になります。
症状として、
吐血、尿血、じく血〔鼻出血〕、
咳血です。
ー舌質紅絳、脈弦数
血寒:
指などの局部の脈絡が、
寒凝気滞のために血行障害を引き起こしたものです。
寒邪の感受などが原因とされます。
症状として、
手足の疼痛、皮膚が紫暗色で冷たい、
冷えを嫌い温めると疼痛は軽減、
少腹部の疼痛、生理の遅れや経色紫暗、血塊などです。
ー舌質淡暗・苔白、脈沈遅渋
□津液の生理
津液とは、「しんえき」と読み
血液以外のすべての体液を指し、
からだの正常な液体の総称のことをいいます。
日本ではわかりやすい
ように『 水 』と表現したりもします。
涙、よだれ、胃液など、
内臓や組織にある体液や正常な分泌液を含みます。
津液によってからだは潤いや柔軟性を与えられています。
気や血とともにからだを構成し、
生命を維持します。
水(津液)は脈外を巡り全身に分布しますが、
一部の津液は脈中にて血を構成します。
水(津液)は気によって動く
形のあるもの(有形=陰)のなかに、
形のないもの(無形=陽)が宿っているのが、
人間の生命現象です。
肉体という器の中に
精神が宿っているのと同じように、
陽である気は、陰である血や津液の中に存在します。
陰である血や津液は
単独では動くことができません。
その中に存在すると考えられている
陽である気が動力として機能することができます。
津液の化生
飲食物の水分が
脾胃のはたらきによって吸収されて
津液になります。
津液は肺に運ばれて
東洋医学独特の器官である三焦を通って
全身に散布されます。
水(津液)のはたらき
全身に散布された水(津液)は、
体表の皮毛や肌肉を潤し、体内の臓腑を滋養します。
関節の動きを滑らかにするのも津液のはたらきとされます。
水(津液)の代謝
水(津液)の生成・輸布(全身に運ばれ散布すること)
と排泄の過程を多くの臓器のはたらきによって行われます。
主に、
脾が津液の生成
肺が輸布
腎が排泄
に関わります。
津液の病理的変化
津液の病証は一般に
津液不足と水液停聚〔停滞〕に分けられます。
津液の不足
津傷ともいわれ、津液が少ない状態です。
胃腸虚弱や久病により
津液の産生が減少したり、
内熱や大汗、嘔吐、下痢等で
津液を消耗することが原因となります。
症状としては、
口や咽喉の乾燥、
口唇が乾燥して割れる、
皮膚がカサカサになる、
小便短少、大便秘結など。
小便短少:尿量が通常より少ない状態
大便秘結:便秘を指し、便が硬くなって排泄が困難な状態
ー舌質紅、少津、脈細数
津液の停滞(痰湿)
外感の六淫、内傷の七情が、
肺・脾・腎の水液の輸布や排泄作用に影響して起こります。
・水腫
陽水:頭面部の浮腫で一般に眼瞼から始まり全身におよびます。
症状として、小便短少、風邪の症状を伴う舌苔薄白、脈浮緊、あるいは咽喉脹痛、舌質紅、脈浮数
陰水: 浮腫が腰部以下に著しいものです。
症状として、小便短少、腹脹、便溏、顔色が悪い、下肢の冷え等。
ー舌質淡・舌苔白、脈沈、
あるいは舌質淡胖・舌苔白滑、脈沈遅無力
・痰飲(痰証):
咳喘喀痰胸悶、悪心、嘔吐、
痰涎、眩暈、痰鳴、半身不随、喉中の異物感など。
ー舌苔膩、脈滑
・飲証:
咳嗽、胸悶、多量の薄く白い痰を吐く、
痰鳴等〔特に痰証とは吐く痰の質が異なる〕
ー舌苔白滑、脈弦
気血水のまとめ
臓腑・経絡などの
あらゆる組織器官は、生命活動に
必要なエネルギーを気・血・津液からもらっています。
一方で、気・血・津液は、
臓腑・経絡などの組織器官が
正常に働くことでつくりだされます。
気・血・津液と臓腑・経絡などの
組織器官の間には因果関係があると言えます。
臓腑経絡論
東洋医学の臓腑経絡論は、
治療するための基本的な理論体系です。
臓腑経絡論は、
体内のエネルギーや血液の流れを重視し、
体内の機能や健康状態を理解します。
臓腑のバランスを
整えることで健康を維持し、
病気を治療するための体系的なアプローチです。
この理論に基づく治療法は、
現代医学とは異なる視点から体を捉え、
全体的なバランスを重視する点で特徴があります。
臓腑とは
東洋医学では、
臓と腑は体内の主要な器官や機能を指します。
臓腑は五臓六腑とも呼ばれ、
以下のように分類されます。
五臓
五臓は、体内のエネルギー(気)、
血液(血)、津液(水)の生成と循環、
そして精神状態に関連する内臓です。
肝(かん):血液を貯蔵し、気の流れを調整する。
感情やストレスにも関連。
心(しん):血液を循環させ、精神活動を司る。
脾(ひ):消化吸収、気血の生成、体液の管理を担当する。
肺(はい):呼吸と気の循環、水分代謝に関連。
腎(じん):精を貯蔵し、成長、発育、生殖に関与する。
水分代謝や骨の健康も管理。
六腑
六腑は、食物や水分の消化、吸収、排泄に関する器官です。
胆(たん):胆汁を貯蔵し、消化を助ける。
胃(い):食物を受け入れ、消化する。
小腸(しょうちょう):消化物を分解し、栄養を吸収する。
大腸(だいちょう):水分を吸収し、糞便を形成する。
膀胱(ぼうこう):尿を貯蔵し、排泄する。
三焦(さんしょう):気の通路を管理し、体内の水分代謝を助ける。
経絡とは
経絡は、気血の流れる通路であり、
体内の臓腑と外部の身体部分を結ぶネットワークです。
経絡には、正経(12本の主要な経絡)と
奇経(8本の特別な経絡)があります。
正経
12本の主要な経絡は、五臓六腑とそれぞれ対応しています。
手の太陰肺経
手の陽明大腸経
足の陽明胃経
足の太陰脾経
手の少陰心経
手の太陽小腸経
足の太陽膀胱経
足の少陰腎経
手の厥陰心包経
手の少陽三焦経
足の少陽胆経
足の厥陰肝経
奇経
奇経は、主要な経絡を補助し、
体内の気血のバランスを保つための経絡です。
正経十二経から溢れ出たものを流す側副路とも考えられています。
督脈
任脈
衝脈
帯脈
陰維脈
陽維脈
陰蹻脈
陽蹻脈
臓腑と経絡の関係
臓腑と経絡は密接に
関連しており、臓腑の健康状態は
経絡を通じて身体全体に影響を及ぼします。
例えば、肺の問題は
手の太陰肺経に影響を与え、
呼吸器系や皮膚に症状が現れることがあります。
経絡を通じて
適切なツボ(経穴)を刺激することで、
臓腑の機能を調整し、健康を促進することが可能です。
経絡治療の実際
経絡を利用した治療法としては、
鍼灸、指圧、マッサージ、気功などがあります。
これらの治療法は、
経絡上の特定のポイント(経穴)を
刺激することで、気血の流れを改善し、
臓腑のバランスを整え、病気の予防や治療を行います。
経穴の例
合谷(ごうこく):手の陽明大腸経に位置し、頭痛や歯痛などの治療に用いられる。
足三里(あしさんり):足の陽明胃経に位置し、消化器系の不調や免疫力向上に効果がある。
百会(ひゃくえ):督脈に位置し、精神安定や頭痛の治療に用いられる。
陰陽論
陰陽論(いんようろん)は、
東洋医学や中国哲学の基盤となる重要な理論です。
陰陽論は、自然界や人体の現象を
「陰」と「陽」という二つの対立するが
相補的なエネルギーによって説明します。
この理論に基づくと、
健康は陰陽のバランスが取れている状態であり、
病気はそのバランスが崩れた状態と考えられます。
陰陽の基本概念
陰(いん)
特徴: 静的、冷、暗、受動的、内向的、下向き。
象徴: 夜、月、水、地、冬、女性など。
身体における陰: 臓器の内部、血液、体液、栄養分など。
陽(よう)
特徴: 動的、熱、明るい、能動的、外向的、上向き。
象徴: 昼、太陽、火、天、夏、男性など。
身体における陽: 臓器の外部、気(エネルギー)、熱、活動など。
陰陽の関係
陰陽は単に対立するだけでなく、
相互に依存し、影響し合います。
これを陰陽の「相互関係」と呼びます。
以下の4つの主要な相互関係があります。
対立(対立する関係):
陰と陽は互いに対立し、反対の性質を持つ。
例: 夜(陰)と昼(陽)、冷(陰)と熱(陽)。
相互依存(相互依存する関係):
陰と陽は互いに依存し、一方がなければ他方も存在しない。
例: 昼(陽)があるからこそ夜(陰)があり、冷(陰)があるからこそ熱(陽)が感じられる。
相互転化(相互に変化する関係):
陰と陽は特定の条件下で互いに変化する。
例: 昼が夜に変わり、夜が昼に変わる。寒冷(陰)が極まると熱(陽)になることもある。
相互制約(相互に制約する関係):
陰と陽は互いに制約し、バランスを保つ。
例: 体温(陽)が高くなりすぎると発汗(陰)によって冷やされる。逆に、寒冷(陰)が強くなると、体が震えて熱(陽)を生成する。
陰陽論と健康
東洋医学では、
陰陽のバランスが健康の鍵とされています。
以下のような状態が理想とされています。
陰陽調和: 体内の陰と陽がバランスよく調和している状態。これは健康な状態を意味します。
陰陽不和(陰陽のバランスの乱れ): 体内の陰陽バランスが崩れた状態。これは病気や不調を引き起こすと考えられます。
陰陽の病理
陰虚(いんきょ)
症状: 体内の陰が不足している状態。
症状例: 乾燥感、のぼせ、口渇、夜間の発汗、不眠など。
治療: 陰を補う漢方薬や食事療法(滋陰の食材)を使用。
陽虚(ようきょ)
症状: 体内の陽が不足している状態。
症状例: 冷え性、疲労感、無気力、下痢、頻尿など。
治療: 陽を補う漢方薬や食事療法(補陽の食材)を使用。
陰盛(いんじょう)
症状: 体内の陰が過剰な状態。
症状例: 冷え、倦怠感、むくみ、下痢など。
治療: 陰を減らす治療法(温熱療法、食事療法)を使用。
陽盛(ようじょう)
症状: 体内の陽が過剰な状態。
症状例: ほてり、発汗、口渇、便秘など。
治療: 陽を減らす治療法(清熱の漢方薬、冷却療法)を使用。
まとめ
陰陽論は、
東洋医学の基本的な理論であり、
自然界や人体の現象を説明するための重要な枠組みです。
陰と陽のバランスが
健康を保つために不可欠であり、
そのバランスが崩れると病気や不調が生じると考えられます。
陰陽のバランスを維持することが、
健康管理や治療において重要です。
五行論
東洋医学の五行論(ごぎょうろん)は、
中国の伝統的な哲学体系の一部であり、
自然界や人体の現象を五つの基本要素で説明する理論です。
五行は
木(もく)、火(か)、
土(ど)、金(きん)、
水(すい)の五つの要素を指します。
これらが相互に影響し合うことで
宇宙全体の調和が保たれていると考えられています。
五行の基本特性
木(もく)
特性: 成長、発展、柔軟性
季節: 春
臓器: 肝(肝臓)、胆(胆嚢)
感覚器官: 目
感情: 怒り
火(か)
特性: 熱、活発、上昇
季節: 夏
臓器: 心(心臓)、小腸
感覚器官: 舌
感情: 喜び
土(ど)
特性: 安定、養う、中心
季節: 土用(各季節の変わり目)
臓器: 脾(脾臓)、胃
感覚器官: 口
感情: 思い悩み
金(きん)
特性: 収縮、清浄、堅固
季節: 秋
臓器: 肺、大腸
感覚器官: 鼻
感情: 悲しみ
水(すい)
特性: 寒冷、下降、潤滑
季節: 冬
臓器: 腎(腎臓)、膀胱
感覚器官: 耳
感情: 恐れ
五行の相互関係
五行論では、
各要素が相互に影響を及ぼし合う
「相生(そうしょう)」と「相克(そうこく)」の関係が重要です。
相生(そうしょう): 一つの要素が他の要素を生み出す関係
木は火を生み(木が燃えると火になる)
火は土を生み(火が物を燃やすと灰が土になる)
土は金を生み(鉱物は土から採れる)
金は水を生み(金属の冷却により水ができる)
水は木を生み(水が植物を育てる)
相克(そうこく): 一つの要素が他の要素を抑制する関係
木は土を克す(木の根が土を固める)
土は水を克す(土が水を吸収する)
水は火を克す(水が火を消す)
火は金を克す(火が金属を溶かす)
金は木を克す(金属の道具で木を切る)
医学における応用
東洋医学では、
五行のバランスが崩れると
病気になると考えられます。
たとえば、肝(木)の
バランスが崩れると、怒りやすくなったり、
目の問題が発生したりします。
治療法としては、
針灸、漢方薬、食事療法などが用いられ、
五行のバランスを取り戻すことを目指します。
このように、五行論は
自然界と人体の調和を理解し、
健康を維持するための重要な理論となっています。
今日はここまで。