スイッチを入れろ
「オン」のボタンは、いったいどこにいったのだろう。
それくらいに、とにかく、動かなくなる。
ちょっとでも気を抜けば、何もできなくなって
やる気もなくなり、注意が散漫になり、どうでもいいことをする。
それ、ほんとうに、やるべきことですか。
それ、ほんとうに、やりたいことですか。
それ、ほんとうに、やっていて楽しいですか。
僕らはすぐに、大切なことすら忘れてしまう。
大切なことすら忘れてしまうのだ。
大切じゃないことなんて、もっと早く忘れてしまうだろう。
忘れてしまうことは、別に、悪いことじゃない。
忘れてしまうものとして、行動すればいいじゃないか。
だから大事なことは、メモをする。
同じことだったとしても、何度もメモをする。
何度も同じ言葉を書いては、身体にも心にも沁み込ませる。
こうして、すぐに切れるスイッチを
何度も「オン」にして、大事なことを繋ぎ留める。
それでも僕らは、恐ろしい時間という存在によって
あっという間に、無かったことになることもある。
ああ、何度も何度も、言い聞かせたというのに。
自分で自分を叱ったとしても、あまりにもそれは、届かない。
「どうして」と思っても、繰り返してしまうのだから。
なんとかしたい気持ちはある、それは間違いなくある。
けれど、それでも、どうにもならないことがあって
そこからは逃げられないから、僕は、僕らは、繰り返す。
「オフ」のスイッチを押すことも繰り返すし
「オン」のスイッチを押すことも、繰り返す。
頭を掻きむしり、叫びながら、ボタンを叩く。
汚い言葉が部屋に響き渡る。
ああ、そういうときもあるんだな、と、思う。
人間なんて、そういうもので
すべてが綺麗でないから、面白く、愛おしいのだ、と。
「オン」のボタンは、いったいどこにいったのだろう。
あ、大丈夫ですよ、ここにあります。
あるけれど、毎日のように「オフ」になるので
自分のできる範囲で、繰り返し「オン」を押してみましょう。
いや、そもそも「オン」と「オフ」って、あるのだろうか。
そういう概念から放たれた人も、きっといることでしょう。
僕はまだまだ、スイッチありきの凡夫です。
いまはしっかり意識して「オン」を入れていこうと思います。
さて、それでは「スイッチ」を入れよう。