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【授業紹介】実習・屏風編

こんにちは

こんにちは!ナカモリです。
皆さまいかがお過ごしでしょうか。私がこの記事を書いている日の仙台は、台風のような土砂降りです。キャンパス内も至る所に水たまり(小川とも言えます……)が出来ていて、登校するのも一苦労でした。
この先も日ごとに気温差の大きい日々が続きそうですので、皆さまも体調には十分お気をつけください。



今回の話題

さて、今回は、屏風の扱いを取り上げた実習の様子をお伝えします!

授業の前半では、屏風の構造や歴史、美術的な価値について、杉本から講義がありました。
以下、屏風の性格について、授業中の解説をご紹介します。

屏風と聞くと、「洛中洛外図屏風」のように立派なものを想像しがちですが、実際には美術品というよりむしろ、調度品としての性格が強いです。

雛飾りにも金屏風が用いられます。

日本では、屏風は結婚式の際に必要なものでした。また、宿屋では間仕切りとして使われていたと言い、実用性の高さが窺えます。
このように、日本人の生活に根付いていた屏風は、大量生産されて日常的に使われていたのです。
ですから、よほど名のある絵師が描いたものや、重要な建物で用いられたものでなければ、美術品としての価値は低いのだそうです。


つづいて「裏側」の視点から、屏風に関する豆知識を2つお届けします。

①構造の裏側―補強に使われた古文書
1つ目は屏風の構造について。
屏風の基本的な構造は、木枠の上に紙を貼ったものです。軽量化を図るため、一枚の板ではなく、細い木が格子状に組まれた骨格になっています。
そして、木枠の上に絵が描かれた紙を貼るわけですが、屏風の強度を上げるために、絵の内側に補強用の紙が貼られていることがあります。

その補強用に使われた紙が、古文書です。

古文書とは、その名の通り、現代の私たちから見て古く、史料になる書簡などのことを指します。しかし、それらが書かれた当時の人々にとっては、用が済んだ後はもはやただの紙切れに過ぎません。
よって、かつて雑紙の扱いを受けて補強材にされた文書が、今となっては貴重な史料となっている可能性が十分にあるのです。

屏風の内側から見つかった古文書

授業では、屏風の補強に使われていた文書が、江戸時代前期の寺に関する古文書だった、という例が紹介されました。


②制作の裏側―粉本
2つ目は屏風に描かれる絵の下書きについて。
屏風制作の注文があった際には、まず下書きとして小さな紙に原案が描かれ、それを元にデザインを決定する工程がありました。
このような下書きを粉本といいます。

屏風の粉本

上に示したのは、安政期に焼失した京都御所を再建する際に注文された屏風の粉本とみられるものです。右上に赤字で「御治定」と書かれており、提出された下書きに対して、依頼者が「この絵で屏風を作りましょう」とGOサインを出していることが分かるのだそうです。

杉本によれば、今はあまり注目されていない粉本も、現存していれば当時の状況を伝える貴重な手がかりであり、今後はもっと重要視されるようになるはずだと言います。



実際に扱ってみる

屏風の基礎的な情報を知った後は、杉本の実演を通して取り扱い上のポイントを確認しました。
その後、二人一組で屏風を広げ、たたむ練習をしました。

屏風を広げているところ
手が直接触れて絵を傷めないように、指先を伸ばした状態で広げていきます。
設置し終えたら、開き具合を調整して見やすくします。
屏風を持ち上げているところ。思ったより重量があります。



画題をしらべる

授業の後半では、実物を見て、そこから読み取ったことを調べる学習をしました。

授業で扱った屏風

上の屏風を見ていくと、例えば、

・描かれている人物は何をしている所なのか
・どんな身分の人物なのか
・描かれている植物は何で、どんな意味があるのか
・添えられた漢文はどんな内容なのか
・全体としてどんな内容の絵で、何のため・誰のために描かれたものなのか

など、気になることが様々出てきます。
そして、これらの気になったことについて、中国や日本で作られた類書(百科事典のようなもの)などを参考に調べていきます。


作品を見る時、実物を見るのと図録の写真を見るのを比較すると、実物の方が得られる情報が圧倒的に多いです。
杉本によれば、普段写真でばかり作品を見ていると、いざ実物を前にした時に、写真から得られる以上の情報を読み取ることが難しくなってしまうのだそうです。
ですから、今回の実習は、作品を観察・研究するにあたって、より多くの情報を読み取る訓練も兼ねて行われました。

屏風から読み取った情報について話しあって、調べる方針を決めているところ



ありがとうございました

今回は、屏風の取り扱いについての実習の様子をお伝えしました。
いかがでしたでしょうか。

私にとって屏風は身近ではないため、今回、内側から古文書が出てくることを初めて知って驚きました。屏風に書かれた絵について調べることはあっても、制作や構造の裏側(もっと言うと内側)まで知る機会は中々なく、大変興味深かったです。

それでは、今回はここまで。
最後までお付き合いいただき、ありがとうございました。
次週はよろずさんが記事を投稿します。お楽しみに!

【参考】

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