アニメ『スローループ』が好き
今期、けっこう『スローループ』が好きです。
亡くなったお父さんに教えてもらったフライフィッシングが趣味の女の子が、主人公。彼女が釣りを通じて、新しい家族や周囲との関係を深めていく物語です。
■新しい家族、正反対なふたり
海釣りをしていたら出会った少女が、なんと義理の姉(でも同級生)だったというところから始まるこの物語。
親の再婚、義理の姉の登場。そして高校への進学。
一気に押し寄せてきた環境の変化と気持ちの揺らぎを、さりげなく、でも丁寧に描いているのが心に残ります。
主人公は、やっぱり時々さみしそう。でも、家族でキャンプをしたり、新しいお父さんにご飯を渡してみたり、少しずつ新しい家族を受け入れようとがんばっています。
高校生にもなると、子どもが親に気を遣うようになるんですよね。反発するほど子供じゃないというか。
一方、海なし県で育ち、主人公と義理の姉妹となった姉は明るくて天真爛漫。主人公とは、最初の出会いが海で、なんの前提もない初対面だったのと、主人公が釣った魚を料理が得意な彼女が調理するという流れで自然と打ち解けます。でも意外にも新しいお母さんにはなかなか敬語が抜けず。
明るい性格だからって、新しい家族をすぐ受け入れられるわけじゃない。ステップファミリーの経験はありませんが、なんとなくリアルです。「なんかよく知らないおばさんと暮らしてるなぁって感じ」という台詞があるのですが、なるほどそういう感じなのかなと。
主人公はどちらかというと人見知りの落ち着いた性格なので、正反対な2人。でも、「家族を亡くしている」「新しい家族と関係を築く途中」という点は同じ。寂しさや悲しさをわかり合える部分があり、細やかな心の交流にじんときます。亡くなった家族の話をできるのも、この2人ならではかもしれません。たまにお互いを思いやるあまり、姉妹ですれ違っているのも可愛い。割と最初から親しくなれた二人ですが、それでも踏み込むのに躊躇する面や遠慮もあり、徐々に距離が縮まっていくさまは、端的に言うと尊いです。
■高校生は、大人で、子ども
高校生になった主人公たちが語る「家族」や「親」についても見どころ。
次第に「親も人間であること」「親も多分無理をしていること」に気づいていくさまなど、親や家族を客観視できるようになる時期なんだなとはっとします。
今、私は甘えん坊な4歳児を育てている最中で、過去に親にしてもらった記憶が蘇ることがあり、子育てしながら今と過去を行き来しているような感覚があります。私も「親も人間なんだ」と気づいた瞬間があったなと思い出したり(スローループの子たちよりずっと遅かった!)、この子もいつかそんな風に思うのだろうかと不思議に感じたり。
主人公たちに過去の自分を重ねると同時に、親御さんに未来の自分を重ねてしまって、あまり今までにない感覚です。”家族”というものに注力している時期なので、見ていて気持ちが揺れます。
■リアルで多様な大人たち
個人的に、子どもを産んでから「物語に出てくる親たち」につい目がいってしまうようになりました。
『スローループ』に出てくる親たちは、多様で、たまに見てて胸がちくっと痛むくらいリアルで、どうしようもないところもあるけれど、愛情を持って子どもたちに接していて、愛おしい。
特に印象に残っているのは、主人公の幼馴染、恋ちゃんのご両親。
フライフィッシング専門店を営むお父さんは大の趣味人。
娘の高校の入学式の日でも、帰ってきた娘に店番を任せて釣りに出かけるお父さん。そもそも娘が生まれそうな時も釣りをしていて、大きな引きがあったからと病院に着いたのは娘が生まれた5時間後。さらにはその時釣れたのが大きな「鯉」だったため、娘に「鯉」と名付けようとしたほどの変人。結局お母さんの必死の説得により、漢字を変えて「恋」と命名された。
筋金入りの、趣味人なのだ。
そのため娘からは割と悪く言われている。
一方、お母さんの方は、なかなか登場しないな、亡くなってはいないはずなのだが、と思っていたら、大企業勤めで海外出張もこなすバリキャリ。
4人産んでキャリア継続はすごいです(一番下は双子)。その分、家を空けることも多く、家事育児は子どもたちで手分けして行うことが多いそう。それでも恋ちゃんはお母さんを「一番尊敬してる」という。
趣味人のお父さんを悪くいう娘にお母さんが語ったのは、結婚後は家庭に入るようにと言う両親を、お父さんが説得してくれたというエピソード。趣味人だからこそ、好きなことを続けることが人生においていかに大事かを理解しているんですね。
このあたり、うちの夫もロードバイクやラジコンを転がしたり塗装したりする趣味人なので、週末出かけられて家事育児がまわってくるものの、私が「映画みたい」「ライブ行きたい」と言うときは快く送り出してくれる面もあり、あああああわかるううううううううっとなりました。
趣味人だからこそ、誰よりも「好き」を理解してくれるんですよね。
でもそういうタイプは、重度の趣味人なんだよね……。
お母さんがバリバリ働いている分、恋ちゃんを含めた子どもたちは寂しそうな面もあります。家事育児負担もあります。大人が好きなことを優先すると、やっぱり皺寄せはどこかに行くのです。それはそういうものだとちゃんと描きながらも、否定もせず、かといって過度な肯定もせず、全部が全部完璧ではないけどそれなりにしあわせな家庭として描いている距離感が好きです。
■女子高生を女子高生扱いしているのが良い
その他にも、ひとり親で主人公を育ててきたお母さんの、料理が苦手なところにも感情移入してしまいます。罪悪感っぽいものがかすかにありそうなところも。それから、「子どもだけでキャンプなんて危ない」と言い出すお父さんにも大変共感しました。
バイクや自転車、キャンプなど、男性に人気のある趣味をやる女子高生物語は色々ありますが、どうしても危機管理面をスルーしがちです。話が進まなくなりますし、アニメで性被害とか大怪我とか見たくないですしね。そのあたり、本作ではちゃんと「女子高生」「未成年」扱いしてくれているのが素敵。正しく対策や計画を立て、お父さんを説得する流れも良かったです。
再婚したお父さんお母さん側も、子どもに気を遣っていたり、それなりに悩みつつ家族をしている様がちらほら窺えるのもいいなぁと感じます。
なんだか家族のことばかり書いてしまいましたが、釣りやお料理シーンもとても楽しい。
私は釣り未経験なので、知らない世界を知る面白さがあります。「女の子が釣りやるのって恥ずかしくないんですか?」という問いもよかったです。
釣り×料理×女子高生×義理姉妹×新しい家族×広がる世界
な楽しいアニメ。おすすめです。
(なぜかうちの4歳息子もハマっています。)
ここから先は
¥ 110
この記事が参加している募集
サポートいただけるととても嬉しいです!よろしくお願いいたします。