「この世の外へ」クラブ進駐軍阪本順治監督
終戦後、敗戦国となった日本がまったく違うアメリカの文化を受け入れながら再生していく様子を5人の若きジャズメンの姿を通して描いた感動作。
映画というものは映っているものが全てで、映っているもので映らないものを表現する仕事なんです。
台本
#161 EM(エンリステッドメンズ)クラブのホールOut Of This Worldを歌い終え、演奏が終わる。静寂の後の怒号のような歓声と拍手。(自分の涙にファック・ユーと言いながら泣いている ここカット)ジム、顔を伏せ、指で涙を拭う。 と、突然、さっきの少年兵が、MPから拳銃を奪おうとする。 止めに入るツカモトたち。驚く健太郎たち。少年兵とうとう、銃を奪い、天井に狂ったように 撃つ。
ツカモト「(英語)落ち着け、落ち着け! オマエが怖いのはわかってる!」
暴れ続ける少年兵。
健太郎たち、いつものように、反射的に「星条旗よ永遠なれ」の演奏を始める。誰も反応しない。
ジム、健太郎に駆け寄り、なにやらつぶやいた。ダニーボーイズをやれ。
健太郎「(英語)えっ。ほんとに」
ジム「(英語)いいんだ」
健太郎「(英語)だって」
ジム 「(英語)急げ!」
健太郎、メンバーたちに指示をすると、 曲が始まる。
「ダニー・ボーイ」
ハッと顔を上げる米兵たち。
ジム、ステージから、米兵たちを見つめている。歌う健太郎。 息子を戦場へ送る歌。健太郎「(日本語訳)ダニー・ボーイ、笛が呼んでいる谷から 谷へ山間に響きわたる笛の音が夏は去り、普薇の花は すべて落ちていく おまえは行ってしまい、私はここで 待つが、野草に夏が戻るころ、おまえは帰ってくる それとも谷が静まり返り、雪で白むころに、日光の中で、 あるいは陰の中で私はそこで待っている ダニー・ボー イ、ダニー・ボーイ、私は愛している♪」
少年兵士から銃を奪いとる。脱力してステージを見る。 ジムが、足を揃えて、毅然といる。 ツカモトが間奏の間に。
マイクの前に立ち、
ツカモト「(英語)第三次派遣予定の兵士を紹介する。ジョン・ ボートン、拳を上げろエレクソン・ワイス、どこに いる ジョージ・フィーリー」
小年のようなGIが、次々に名を呼ばれていく。 あの少年も、名前を呼ばれる。 残酷で辛い儀式が続く。
やがて、[画面が「ダニー・ボーイ」の歌声と共にフ ェードアウト。
そこへ、朝鮮戦争での死傷者数がテロップで出る。
#162(ラストシーン)
漆黒にスタッフ、キャストタイトル上がる
静かにジャズが流れ始める。
そして、現代のどこかの道端で、老人になった健太 郎が、皺だらけの手で、クッキーストライク吸っている。]ここまで欠番
そのパッケージに、エンドマーク。]ここまで欠番。これが決定稿の筋書きだが、実際の本編は少し違うのだ。なんとも言えないラストシーンになっている。現場に映画の神様が降りたのかもしれない。
ラッキー ストライカーズの演奏レパートリー。ラッキーストライク(Lucky Strike)は、ブリティッシュ・アメリカン・タバコ(BAT)社が製造・販売するタバコのブランド。1871年に発売された長寿ブランドで、アメリカ合衆国生まれのタバコである。
本編中に「この赤いのが日本や、周りを囲んでるのがアメリカ。いまはこんなんなってしもうた」と話す個所がある。
Lucky Strike米兵には配給タバコだったあえてヘルメットに貼る兵士もいたそうです。ALL THE THINGS YOU ARE
DANNY BOY
MONA LISA
SENTIMENTAL JOURNEY
TAKE THE A TRAIN
TO EACH HIS OWN
MEMORIES OF YOU
The Star-Spangled Banner
Out of The World - オリジナル曲。作詞:阪本順治。劇中の設定中の、ラッセル・リードが作曲したことになっている。敗戦の名残りが色濃い時代に、米軍基地でジャズを演奏する5人の青年の物語。
『この世の外へ』に参加した米兵に関する思い出としてのエピソードがある。今作では米兵がボランティアで出演しているが、前年に始まったイラク戦争への派兵を前に参加した兵士もいた。阪本監督が贈ったビリケンのキーホルダーと一緒に写った写真を、彼らはイラクから送ってくれたそうだ。阪本監督にとっても、米兵たちがそういう現実を背負っていることで、脚本執筆時と違う意識が生まれた。という体験談である。物語は
敗戦間もない1947年、楽器屋の息子で軍楽隊のサックス奏者だった広岡健太郎は、軍楽隊の先輩でベースのジョーさん、ブラスバンド上がりのピアニスト大野、カントリーバンドでトランペットを吹いていた浅川、ドラマー志望(しかし未経験)の池島とともにジャズバンド、「ラッキーストライカーズ」を結成し、進駐軍内のクラブ「EMクラブ」で高額なギャラを目当てに演奏活動を行っていた。
新たに基地へ赴任してきたラッセル・リードは弟をレイテ沖海戦で亡くしたことで、日本人を憎んでいた。テナーサックス奏者としても一流だったラッセルは、金目当てで実力もないラッキーストライカーズも憎むことになる。だが、懸命に努力する姿を見て、次第にラッセルも打ち解けていった。
演奏の腕も上がってきたラッキーストライカーズだったが、やがてメンバー個人個人の問題が表面化してくる。そして、ピアノの明が他のバンドに引き抜かれたことで、解散を余儀なくされた。
時が流れ、トランペットの広行がヒロポン中毒で死んだことをきっかけに、メンバーはラッキーストライカーズを再結成。EMクラブでの演奏を行う。
しかし、朝鮮戦争が勃発しており、ラッセルたちも次々に戦地へと派遣されて行った。壮行会では、役名ラッセル・リードが作曲した「Out of This World」が演奏される。作詞は坂本順治でOut of This Worldは、Out Of This World というタイトルの曲が存在する。世界の外へは死に行く兵士を連想させる。ラッセル リーの渡した譜面はOut Of This Worldと書いてありました。Thisで、この世のものとは思えないという驚きの表現になり何かがあまりにもすごすぎててgreatやamazingなどの言葉だけでは言い表せないくらいに良かった時に使うそうです。世界の外へという意味もあるかかもですが、ThisにするかTheにするか迷うところですね。兵士たちはこの世界の外へ行くかのようですが、ラッセルに死ぬなよと声をかける健太郎に対して殺しに行くんだよと返答するところも印象的です
敵同士だった人々の葛藤と歩み寄りはリアルかつ希望の持てる内容です。全編にスタンダード・ジャズの名曲が使用され、萩原聖人、前田亜希が歌声を披露しています。テーマ曲の作詞は監督自身が手がけたそうです。キャストも豪華で米兵役でイギリスの名優、ピーター・ムランも出演しています。若い米兵(シェー・ウィガム)に因縁をつけられてしまう。新たに基地へ赴任してきたラッセル・リードは弟をレイテ沖海戦で亡くしたことで、日本人を憎んでいた。テナーサックス奏者としても一流だったラッセルは、金目当てで実力もないラッキーストライカーズを嫌うことになる。だが、ジャズに本気なのを感じて次第にラッセルも打ち解けていった。演奏の腕も上がってきたラッキーストライカーズだったが、やがてメンバーが、バラバラになつてしまう。そして、ピアノのアキラが他のバンドに引き抜かれたことで解散状態となってしまう。
時が流れ、トランペットの広行がヒロポン中毒で死んだことをきっかけに、メンバーはラッキーストライカーズを再結成。EMクラブでの演奏を行う。
しかし、朝鮮戦争が勃発しており、ラッセルたちも次々に戦地へと派遣されて戦死してしまう。
#クラブのステージ
健太郎「ラッセルと話したいことがたくさんあったんだ。ラッセルに捧げます
タイトルはアウト オブ ディス ワールド」を英語で歌う。
「未来に光がなくても、引き裂かれずに
私の心にあなたがいれば、
きっと歩いて行ける。夜の中へ。
恐れに立ち止まっても、目を閉じるとあなたの優しい声が聞こえてまた歩いて行ける。はるかこの世の外へ。
目を閉じるとあなたの優しい声が聞こえてくる。はるかこの世の外へ
いつかこの世界が闇となり
心が冷たく渇いても、
私のそばにあなたがいれば、
すべてを信じ くじけないで、
きっと歩いて行ける。
悔しさに涙がこぼれても、
目を閉じあなたの笑顔を
思い出して必ず歩いて行ける。
はるかこの世の外へ。
目を閉じあなたの笑顔を思い出して
はるかこの世の外へ。Uo〰︎
突然、新兵士が、拳銃を奪ってこめかみにあて自殺しょうとする。怒りで天井に向け発砲する。星条旗を永遠なを演奏して場を収めようとするがムダに終わる
ジムがダニー・ボーイをやれと健太郎に小声で言う。ダニー・ボーイをバックにジムが拳銃を奪って、ことなきを得る。
息子を戦場へ送る歌。
健太郎「(日本語訳)ダニー・ボーイ、笛が呼んでいる 谷から 谷へ山間に響きわたる笛の音が 夏は去り、薔薇の花はすべて落ちていく おまえは行ってしまい、私はここで 待つが、野原に夏が戻るころ、おまえは帰っくる それとも谷が静まり返り、雪で白むころに 日光の中で、あるいは陰の中で私はそこで待っている ダニー・ボーイ、ダニー・ボーイ、私は愛している♪」
少年兵士、脱力してステージを見る。
ジムが、足を揃え、毅然と立つている。
ツカモトが間奏の間にマイクの前に立ち、
ツカモト「(英語)第三次派遣予定の兵士を紹介すると一人ひとり立ってゆくジョン・ ボートン、・・・・・エレクソン・ワイス、ジョージ・フィーリー・・・・・・」
少年のようなGIが、次々に名を呼ばれていく。 暴れていた少年兵も、名前を呼ばれる。 残酷で辛い儀式が続く。
楽屋で健太郎の肩に手をかけるジムのストップモーション。から朝鮮戦争での死傷者数がテロップで出てエンドロールになる
往年のジャズ奏者やシンガーたち。日本における戦後のジャズを牽引した。大御所たちの映像が流れる。
決定稿の(やがて、画面が「ダニー・ボーイ」の歌声と共にフ エードアウト
漆黒にスタッフ、キャストタイトル、上がる。静か にジャズが流れ始める。)この部分変更されているの
Out of This Worldにふさわしい、作品となっている。この世の外へと言うよりは、いろんなものが混ざって、世界は何て素晴らしいんだと言うことになるのではないだろうか。あの時代にジャズがあってよかった。音楽があってよかった。音楽もまた言語の一つなんだ。戦争という死への道の中にも一雫の愛があるのだろう。東の空が明るくなって来た。おやすみ。「おわり」午前6:17
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