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報道の自由度 冴えない日韓(前)

「サツマワリ」という言葉、聞いたことありますか?
「サツ」は警察の「察」。警察署や警察官たちのところを「回って」取材する記者たちのことを指すのが「サツマワリ(サツ回り)」です。

新人記者たちは、ほとんど「サツマワリ」からスタートすることになります。日本でも、韓国でも。

そう、実は韓国のメディア界でも普通に「サツマワリ」という日本語が使われるのですよ。日本統治時代の名残です。
他には「ハリコミ(張り込み)」なども。

微妙に変化したとみられるのは「ヤマ」。韓国では「記事のポイント」を指すそうです。「お前の記事にはヤマがない」というデスクのお叱りの言葉は、記事の焦点や力点がぼやけているという趣旨。
おそらくは日本の犯罪捜査の「ヤマ場」が由来だ、と知り合いの韓国人記者から聞いた記憶があります。

韓国の記者たちが「サツマワリ」のような日本語を使ってきたことが象徴するように、両国のメディア界の構造には似たところが少なくありません。

そして、ここからが本題なのですが、世界の「報道自由度ランキング」をみると、日韓両国ともにメディアが直面する困難が増しています。
そんなところまで似なくていいのに…


大きくランキングを下げた韓国

今回の前編では韓国を、後編では日本の状況を掘り下げます。

国際NGO「国境なき記者団」(本部・パリ)は毎年180の国・地域を対象にした「報道の自由度ランキング」を発表しています。

こちら ↑ がそのランキングのリンクです。
まず、国・地域ごとに報道の自由がどれだけ守られているか、5段階で色分けされた地図で確認できるようになっています。

日本と韓国は、アメリカやブラジル、アルゼンチン、タイなどともに"problematic"、「問題あり」という上から3番目のカテゴリーに入っています。

個別の順位をみると、韓国の報道自由度は180の中で62位
昨年は47位でした。一気に15も順位が下がったのです。

ランキングの下げ幅もさることながら、昨年は上から2番目の"satisfactory"、「良好」というカテゴリーだっただけに、韓国のメディアを取り巻く状況がだいぶ悪化したと「国境なき記者団」がみていることが分かります。

尹錫悦政権の強権

このランキングは5つの指標からはじき出されています。
「政治的背景」「法的枠組み」「経済的背景」「社会・文化的背景」「安全」。
韓国は、「法」と「経済」は順位が横ばいでしたが、「政治」「社会・文化」「安全」の順位が大きく下がりました。

「政治的背景」    2023年 54位 → 2024年 77位
「社会・文化的背景」  〃   52位 →  〃   89位
「安全」        〃   34位 →  〃   55位

▼まず、政治の面で何が問題視されたのかは明白です。昨年、尹錫悦(ユン・ソンニョル)政権がメディアに対する圧力を強めたのは議論の余地がありません。

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