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サクブン 金正恩総書記の娘

(上の写真は2012年に平壌を取材で訪れた時に撮影したものです)

北朝鮮に関して気になるニュース、いろいろあると思いますが、最近は金正恩(キム・ジョンウン)総書記の娘への関心が高いですね。金ジュエ氏。9月8日夜に平壌で実施された軍事パレードでも、父・金総書記の横に座って参観し、軍の五つ星(最高ランクですよ)将軍が彼女の前で膝をついて説明したと韓国で大きく伝えられています。

「ジュエ」という名前には「主愛」という漢字があてられる場合が多いのですが、確認されたわけではありません。そもそも「ジュエ」という名前自体、北朝鮮の国営メディアで報じられたことはないので、実際は違う名前だという可能性も残されています。
ですので、それは念頭に置きつつも、金ジュエ氏をめぐる最近のニュースを「サクッと分析」します。
略して「サクブン」。

・・・。

やや寒い反応が出やしないかと気にはなるところですが、これは僕がいま最もよく聞いているポッドキャスト「大人の近代史」の愛称が「オトキン」であるのに倣いました。

「オトキン」、楽しく歴史を学べておススメです。

本題に戻りましょう。
韓国統一省は9月5日に金ジュエ氏が朝鮮労働党の機関紙「労働新聞」にこれまで15回登場し、その8割が軍事関係だったと説明しました。軍に関する父の視察によく同行していることが分かります。統一省は「軍事部門での実績を可視化させて軍の忠誠心を高めるのが目的ではないか」と分析しています。

実は、軍事での実績作りを進めているということ一つとっても彼女が金総書記の後継者なのではないか、と推察できる材料です。さらに、個人的に注目したいのは、「残り20%」があることです。つまり、彼女が労働新聞で紹介された80%が軍事関連ということは、20%はザックリいえば経済分野なのです。ミサイルや潜水艦などだけにとどまらず、国家運営全般に関して父に同行しているのは「帝王学」の色合いをいっそう濃くします。

金ジュエ氏が国営メディアに初めて登場した際、「儒教の教え(男性優位)が色濃い北朝鮮において女性の最高指導者はなかろう。まだ表舞台に登場していない金総書記の長男が後継者」という見方が広がりました。私もそういう分析を放送で話したりもしました。
ただ、こうも彼女の存在感が大きくなってくると、「後継者は男子のみ」という決めつけは捨てたほうがよさそうです。金ジュエ氏が後継者という可能性も念頭において、彼女が国営メディアを通じて北朝鮮国民にどう紹介されているか(呼称など)をウォッチしていきたいと思います。

その意味で、ひとつ大いに注目なのが、ロシア・ウラジオストクで始まった「東方経済フォーラム」に金総書記が出席するのではないかという見方が広がっていることです。

金総書記とプーチン大統領との首脳会談があれば、それ自体、大いに注目されます。ウクライナ侵攻で苦戦が続くロシアがまた北朝鮮から何か兵器を購入するのか、一方の北朝鮮は(核実験を含む)軍事挑発でロシアから庇ってもらう算段をするのか…

ですが、もう一つ、金ジュエ氏がウラジオストクに同行するのかも焦点です。可能性は高くはないと思いますが、断定はできません。もし訪露するようなら、軍事・経済に加えて、外交においてまで「帝王学」が始まったといえ、彼女が後継者であると推測する手がかりが、また一つ増えることになるのです。

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