台湾 政治を左右する8議席
先日、早稲田大学で開催された台湾総統選挙に関する報告会を聴きに行きました。主催は日本台湾学会と早稲田大学台湾研究所。
けっこう広い教室でしたが、開始時間ギリギリについたところ、既に満席。私を含めて立ち見の人たちが出るほどの盛況ぶりでした。
この熱気は、日本社会で台湾への関心が高まっている表れだといえるでしょう。その関心には、もちろん台湾有事への心配も含まれるわけですが、そうだとしても、中台関係を入り口にして日本が置かれている状況を考えるのは重要だと思います。
報告をされたのは(この連載でも引用したことがある)東京外国語大学の小笠原欣幸名誉教授と、東京大学東洋文化研究所の松田康博教授。台湾研究の泰斗お二人です。
司会進行も台湾研究の第一人者として知られる早稲田大学の若林正丈名誉教授という豪華メンバーでした。
様々な角度から今回の総統選挙と立法委員選挙の分析と今後の予測が披露され、ここでは前後2回に分けてその一部に焦点をあててお伝えします。まずは(総統選に比べて)メディアで扱いが小さい立法委員選挙について。
第3極・民衆党の「若さ」
議会にあたる台湾の立法院の議席改選をめぐる選挙は、今回、与党・民進党、最大野党・国民党、そして第3極の民衆党のいずれも単独で過半数を取れなかったのは伝えられている通りです。
立法院の定数は113。過半数は57議席となります。
改選前、民進党は62議席でしたが11議席減らし、第1党の座から滑り落ちる結果に。国民党は37→52へと大きく議席を奪い返して第1党になったものの、57には届かず。
そして、今回焦点をあてる民衆党。
選挙区では1議席も取れませんでした(そもそも資金と人材が不足していて選挙区に立てられた候補者が少なかった)。
ですが、総統選挙での柯文哲(か・ぶんてつ)氏の踏ん張りもあり、比例で8議席を獲得したのです。
これは、実は改選前より3議席の増加に過ぎないのですが、長らく民進党と国民党の2大政党が政治をほぼ独占してきた台湾にあって、しっかり第3の選択肢として存在感を示したと小笠原さんも松田さんも強調していました。
その8議席を取った民衆党は、どういう人たちに支持されたのか。非常に明確です。
それは、若者たち、とりわけ若い男性たち。
台湾の放送局が1月1日に行った調査によれば、柯文哲氏の「世代別支持率」をみると
20歳~29歳では実に52%、半分以上の有権者から支持されたという結果でした。30歳~39歳も46%、40歳~49歳も31%という健闘ぶり。
ところが、50歳~59歳になると12%、そして60歳以上はわずか3%だったのです。
若い人たちの間では旋風を巻き起こした一方、高齢者たちにとっては泡沫候補扱いという、なかなかの偏りぶりでした。
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