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『未来』2024年10月号詠草

テトリスのように座席を詰めゆけり一時帰国の児童ふえれば
列島の長く描かれた白地図の四隅を青い磁石で留める
まる読みで読む教科書に弟のかにのせりふで終わる三限
少女ふたりアーチをくぐる先週はまだ咲いていた薔薇のアーチを
夏至はもう昨月のこと 闇を煮るように金時豆を煮詰める
ことばよりあかるいものがあったでしょう熟れたトマトをくし形に割き
Warriorのポーズに両手をひらくときわたしの中の戦士も立ちぬ
真夜中の犬の散歩を夜遊びと呼んで二ひきの犬とみずうみ
七月の夜は万華鏡さらさらと傾いで今日は風がすずしい
眠りへと漕ぐ泥の舟、その舟で鳴らす草笛、もう果てしない

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