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やわらかにつぶす
やわらかにつぶす さとうはな
屋上より見下ろす街よ ひと冬は手負いの草食獣のさみしさ
夜のシャボン玉は怖いねふたりきりたましい吐き出すよう息つけば
いちにちを読書のままに過ごす日の椅子の影にも育つ感情
対岸という遥かさをつなぐゆえすべての橋に名はつけられて
サーカスの訪れ、そしてひと晩に降る雪の嵩ラジオは告げる
金にきん 銀にはぎんのひかりあり棚の奥から冷える楽器庫
ともすれば武器にさえなる真鍮の楽器をきみはするどく鳴らせ
祈らないことが増えゆく石鍋に冬の野菜のスープを煮つつ
風化とは呼吸のようだていねいに便箋を折るささくれの指
遠い火も近い火もまた夢にみて紙ふうせんをゆるくつぶした