「渡り鳥 はぐれ鳥」の"新田一郎さんver." と "沢田研二さんver."の比較
今回紹介する「渡り鳥 はぐれ鳥」は、1983年にリリースされた新田一郎さんの楽曲で、"男のやり切れない思いを渡り鳥に例えて歌った"曲です。
作詞は三浦徳子さん、作曲は新田さんご本人が務められており、
アルバム「新田一郎三番 KOTOBUKI」に収録されています。
翌年1984年には、沢田研二さんによるカバーが沢田さんの42枚目のシングルとしてリリースされました。
新田さんによるオリジナルver.も同年にシングルカットされてリリースされます。
今回は「渡り鳥 はぐれ鳥」の
"新田一郎さんによるオリジナルver."と
"沢田研二さんによるカバーver."を
徹底比較していきたいと思います!
↑沢田さんver.のみサブスク配信あり
まずは2つのバージョンの特徴について
①新田一郎さんによるオリジナルver.
まず、新田さんの歌声が物凄く歌謡曲的ですね。
新田さんといえば"ファルセット"での歌唱をする印象が強いですが、ソロや一部のスペクトラムの曲では度々"地声をベースとした歌声"で歌われていますね。
しかし新田さんが"全編地声による歌唱"をされる曲はなかなか無いので結構珍しいです。
そして何と言っても最大の特徴は新田さんご本人の演奏によるトランペットやブラスのサウンドです。キメや間奏には凄まじいブラスが入っています。
新田さんはこの曲を歌番組やLIVEで歌唱される際は、歌を歌いつつ、間奏でトランペットを演奏されています。どんな肺活量なんだ…
そこにキーボード主体の主旋律と、ロックなギター、8ビートのリズム隊が入ってきて、ブラスロックサウンドに仕上がっています。
②沢田研二さんによるカバーver.
歌に関しては沢田さんの澄んだロックな歌声でロック調に歌われています。
沢田さんは歌詞に出てくるような男性を歌で表現するのがとても巧みです。
また沢田さんver.は、曲全体の"ギターの音自体はサーフサウンド感がある"のですが、"フレーズ自体はオシャレなカッコよさ"なのが特徴です。
そのギター+80年代邦楽特有のタイトなリズムセクションメインで土台を作り、
間奏やサビにブラスやポップなシンセサイザーのフレーズが入る形です。
シンセサウンドが強い影響か"凄い歌謡曲"的で、サウンドとしては"シンセ歌謡"的な要素がかなりありますね。
同時期の沢田さんの曲だと「きめてやる今夜」も似たようなアレンジの傾向なので、このような印象を受けます。
こういうシンセ歌謡曲的な曲がロックな歌声で歌われるのが沢田さんver.の良さですね。
2つのバージョンを比較してみて
①歌について
歌に関しては沢田さんがロックな歌い方、新田さんは歌謡曲な歌い方をしているという印象を受けます。
また、新田さんは歌声が高いのでキーが高いですね。
沢田さんは新田さんの原曲のキーからいくつか下げたキーで歌われています。
②アレンジやサウンドについて
この曲の新田さんver.のアレンジは笹路正徳さん、沢田さんver.のアレンジは井上鑑さんがそれぞれ務められています。
まず大きな違いとしては2つのバージョンで
"コード進行が異なる箇所"が何箇所かあるんですね。
一番分かりやすいところはBメロの「♪ドキュメント〜」の後に鳴っているコードが、新田さんver.は上がり調子で不協和音っぽいコードなのですが、沢田さんver.は自然な落ち着いたコードが鳴っています。
加えて、曲や歌に絡んでくるブラスの具合も全く違います。
新田さんver.は歌にガッツリ絡んできますし、
ブラスのフレーズ自体も複雑で、尚且つブラスの音数も多くなっています。
また、間奏に着目すると、新田さんver.はブラスとロックギターが絡んだ間奏になっているのですが、沢田さんver.はブラスとシンセの絡んだ間奏になっていますね。
他にも、新田さんver.にだけ後半にサックスソロが2回があったりします。
その際、謎にエコーがかった「お母さ〜ん」という声が入っていますが、あれは絶対に
"コメディ好きな新田さんの遊び心"です。
沢田さんver.は自然に曲が終わりますが、新田さんver.はサックスソロとギターソロで曲が終わるという点も特徴です。
・楽器について
ドラムはオカズの入れ方が少し異なりますが、どちらのver.も8ビートなのは同じです。
沢田さんver.はサビもタイトな8ビートですが、新田さんver.はサビや間奏はハイハットを活かした8ビートにしています。
ギターは沢田さんver.は"オシャレなリードのフレーズ"がありますが、新田さんver.は純粋にロックギターですね。
シンセサイザーは新田さんver.はピアノ系の音を主旋律に使うくらいなのですが、沢田さんver.はポップで歌謡曲的な音を多く使われています。
そこが新田さんver.に"ロックさ"を感じ、沢田さんver.に"歌謡曲っぽさ"を感じる理由かもしれません。
まとめ
・「サウンドは"ブラスロック"だが、歌が"歌謡曲"っぽい」のが新田さんのver.
・「サウンドは"シンセ歌謡"っぽいが、歌が"ロック"」なのが沢田さんのver.
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