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【ベースレスロック研究②】 近年の清春さんと鈴木トオルさんのバンド編成から考える"ベースレスロックに必須な楽器"

今回の記事は以前書いた
沢田研二さんと清春さんのロックから考える"ベースレスロック"の利点」の続編となります!

↑FIELD OF VIEWの浅岡雄也さんを始め、沢山の方々からご好評をいただきました!

前作は「ベースレスロックの利点/どういうタイプのボーカリストが向いているのか」ということについて研究したのですが、今回は
「ベースレスロックを作り上げるのに必須(気味)な楽器はどういった楽器なのか」
について、近年の

清春さん (黒夢/SADS)
鈴木トオルさん (ex.LOOK)

のバンド編成から研究していこうと思います!

僕は今年お二方ともソロLIVEを見に行かせていただいたのですが、どちらも大迫力のサウンドで圧倒されました…。。

それでは本編に移ります!!

清春さん編

①最近の清春さんのバンド編成やサウンドについて

近年の清春さんは圧倒的な声量や豊かな表現力を武器にしたブルージーなボーカルスタイルを武器とされています。

※2010年代後半からそのボーカルスタイルを活かし、
「ギター×ベース×ドラムのロックバンド編成でのLIVE」と並行して、
「伴奏がエレキギター×アコースティックギターのみのリズムレスLIVE」
も度々行われていました↓


ご自身曰く、
そういったボーカルスタイルに合う音を探っていく中で、
「ベースがいらないな…」
と思われたらしく、
2020年頃からLIVE/レコーディングを含めてベースレスのバンド編成になられました。

始めの頃は
・ギター×ドラム (2020〜2021)
という編成だったのですが、やっていくうちに「ドラムもいらないな…」と思われたらしく、
・ギター×チェロ (2022)
・ギター×パーカッション (2022)
・ギター×サックス×パーカッション (2023〜2024)
などの編成でLIVEをされていました。

そのうち
・ギター×ドラム 「JAPANESE MENU (2020)」

・ギター×サックス×パーカッション 「ETERNAL (2024)」

の編成ではアルバムもリリースされています!

そして、直近のLIVEツアーでは
ギター×サックス×パーカッション×ドラム×ピアノ
という編成に変化しています。

("日によって参加されるサポートメンバーが変わる" とのことで、
・ギター×サックス×ドラム×ピアノ
・ギター×サックス×パーカッション×ピアノ
・ギター×ギター×サックス×パーカッション×ピアノ
の日もあります。)

ちょうど前作を書いてから1年経ったので、
次の項では、
「アルバム ETERNALのサウンド〜直近のLIVEでのサウンドメイク」
について綴って行こうと思います!

②アルバム「ETERNAL」のサウンドについて

これまでのアルバムは「ロック用のバンド編成」で制作していた分「ロックの成分が強かった」のですが、
「ETERNAL」は「生楽器を中心としたバンド編成」で制作している分「表現出来る音楽の幅が広がっている」ように感じます。

そして、3つの楽器はそれぞれ

①ギター…コードを奏でるサウンドの主軸
②サックス…アンサンブルに厚みを出す&リードギターのようにサウンドの雰囲気をコントロールする
③パーカッション…リズム面での主軸としてダンサブルなリズムを奏でて、アンサンブルを彩る(ドラムと比べると独自性の高い音が出せたり、強弱がハッキリつけやすい)

という役割を担っていて、
一貫して激しくダンサブルなバンドサウンド」に仕上がっています。
バンドサウンドの影響で楽曲に生命力が溢れているように感じますね。

楽曲面だと
・南米系のリズムを取り入れた楽曲
・ファンクやAORの要素がある楽曲
など、様々なジャンルを取り入れた楽曲が多いのですが、
"メロディや構成がしっかり歌謡ロック"
なので、その部分に前作で突き詰めた「日本のロック」の精神が残っているように思います。

結果的に
歌謡ロック×生楽器によるダンサブルなサウンド×様々なジャンルの要素を取り入れた楽曲
の掛け合わせによる
「世界で誰もやっていない全く新しい音楽」
が収録されている物凄いアルバムとなっています!

※「ギター×サックス×パーカッション」での、LIVE映像を見たい方は、
X上で「#清春 #Boris 」と打って動画検索をしていただくと、
「BorisとのオーストラリアツアーでのLIVE動画」
が沢山出てくるので、是非チェックしてみてください!

③直近でのLIVEでのサウンドメイクについて

直近の
ギター×サックス×パーカッション×ドラム×ピアノ
の編成について解説していきます!
※リンクは公式LIVE動画です。

また清春さんのバンドは
・ギター…エレキギター/アコースティックギター
・サックス…メインはテナーサックス/曲によってはソプラノサックスやフルート
・パーカッション…南米系のパーカッション楽器/マラカス
・ピアノ…下段がピアノで上段がオルガン
・ドラム…ロック用のドラムセット
といった楽器を使われています。

新たに加わったドラムとピアノの役割ですが、個人的には、

○ドラム
・ロック/パンク寄りの過去曲のポテンシャルを最大限に発揮させる
・アンサンブルに破壊的な迫力や重みを足す

※そのため、このバンドサウンドの場合、ドラマーさんは
・パーカッションの辻さんレベルの早さで叩ける
・パワーのある音が出せる
・めちゃめちゃ手数系のフレーズに強い
の条件を兼ね備えている人じゃないと難しい。。

○ピアノ
・左端の鍵盤でベースの音域を具体的にカバーする
・コードが弾けるのでアンサンブルに厚みを足す(清春さんバンドのエレナさんはこの役割を上段のオルガンを用いて行われています)
・メロディアスなフレーズでバンドサウンドを彩る

ではないかと感じています。

というのも、
勿論今までの
「ギター×サックス×パーカッション」
も大迫力だったのですが、過去曲に多かった激しいロック/パンク寄りの曲を再現しようとすると、
どうしても若干音の隙間が出来る
ことがあるように感じていました。

恐らく「ダンサブルゆえの軽快さ」がそう感じさせていたと思うのですが、ドラムとピアノの加入で「重みや厚みなどのラウドな要素を足す」ことで音の隙間が埋まったと思います。

おかげでギターも「コード弾きに専念」ではなく、自由にギターソロを弾けるようになるなどの変化もあります。

僕は楽器隊のフリーセッションの上から清春さんがフェイクを載せられるセッションコーナーや、清春さんの衣装替え中のジャジーな楽器隊セッションコーナーが好みです。

そのため、現在のサウンドメイクは
「歌と相性が悪い音はカットし、歌を邪魔しない範囲で厚みや彩りを出すための音は足す」
「最近の曲も過去の曲もしっかりプレイするために、オールラウンドにカバー出来るサウンド作りをする」
という方針なのかもしれません。

現在の編成は前作で解説した沢田研二さんの
「ギター×ギター×ドラム×キーボード」
編成と少し近いところがありますね。

また、清春さんは
ETERNALの収録曲は、"音源だと良いけどLIVEでプレイした時にしっくりこない曲"があるので、ツアー後半からはそういう曲は演らない
と仰っていたので、恐らく
「今の編成に合う上で、LIVE映えする楽曲」
を中心にプレイされていると思われます。
(確かに予感やConfusionは以前のギターxパーカッションxサックス編成では曲のパワーを引き出すのが難しい楽曲だと思います、、)

「ETERNAL」の楽曲も大きくアレンジが変化していて、
・南米サウンドだった「SAINT」が、ドラムが入ったことでゴリゴリの4つ打ちアレンジになる
・打ち込みR&Bだった「sis」がアコースティックアレンジ(BPM遅め ギターx弱めのパーカッション✕ピアノxフルート)になる
・「FRAGILE」手数ドラムとピアノの影響でジャジーなアレンジになる
などの変更がありました。


鈴木トオルさん編

①トオルさんが「ベースレス編成」でLIVEされていることを存じ上げるようになった経緯

元々トオルさんが現在も音楽活動をされていることは存じていたのですが、ある日公式サイトのLIVEスケジュールを拝見した時に

【出演】鈴木トオル(Vo.g)山石敬之(pf)齋藤昇(sax)

と書かれていて、「え!この編成は最近の清春さんと近いのでは!?」と衝撃を受け、
公式YouTubeチャンネルでのLIVE動画をチェックしたところ「これはベースレスを研究している身としていつか見に行かなければいけない…」と思い立って見に行きました笑。


僕が先日見に行ったのはその
「アコースティックギター×ピアノ×サックス」
編成の公演だったのですが、そのほかに
・アコースティックギターのみの弾き語り
・アコースティックギター×サックス
・アコースティックギター×エレキギター
・アコースティックギター×ヴァイオリン
でのLIVEもされているそうです。

そのうち
・アコースティックギター×エレキギター
・ギター×ストリングス
編成でのLIVEは清春さんも行われているので、
やはりブルージーなボーカルスタイルのアーティストさんは皆さんそういった編成でLIVEされるんだ…」と感銘を受けました。

※トオルさんは2010年代前半まではロックバンドスタイルでLIVEされていたそうなのですが、ある時期から今のような編成になられたそうです。

②初めてトオルさんのLIVEを見に行った感想

トオルさんは
力強くハスキーなハイトーンボイスで、シャウトやデスボイスも駆使して情熱的に歌う
というボーカルスタイルのアーティストさんです。
歌声のグルーヴ感がとてもロックで、"表現力"や"その場の限りのフェイク"など圧巻です。

そのため、LIVEでは大迫力のサウンドを浴びることになりました!

「歌に合う伴奏を前提として、静かな曲は哀愁がマシマシで、アップテンポな曲はとにかくパワフルに」
という方針で音作りされていることがハッキリ感じ取れるLIVEでした。
かなりの曲数をプレイされていて、度々LOOKの代表曲も披露してくださって嬉しかったです。

僕が今回のツアーで印象的だった楽曲は、
・イノセントの鏡
(ギターをベース代わりにしたような演奏、猛々しいサックスをフューチャーしたサウンドが印象的でした)

・手紙

・追憶の少年

・シャイニン・オン 君が哀しい
(本編最後にピアノ×サックスの伴奏で披露されたのですが、さすがの貫禄でした)

・ひとりぼっちを知るだろう
・風 〜悲しみの終わる時〜

の6曲です。この編成でのアレンジが楽曲自体のポテンシャルを大幅に引き出していると感じました。

③トオルさんの3人編成のサウンドメイクついて

「アコースティックギター×ピアノ×サックス」
の編成で、それぞれの楽器がどういう演奏をされていたのかを解説していこうと思います!

まずアコースティックギターは
・パワフル歌に負けないくらいパワフルなストロークで掻き鳴らす
(そのため、打楽器的な要素も担っています)
・ピックスクラッチでアクセントを足したり、ピックアップとフレットを行き来して演奏することで音のニュアンスを変化させる
・アルペジオで曲の叙情性を表現
・6〜5弦でベースの音域を演奏
(そのため、ベース的な役割も担っています)
という演奏をされていました。

元々トオルさんがギタリストだったこともあってかなり巧みな演奏で、様々な技術を駆使されていました。

続いてサックスとピアノですが、

○サックス (アルト/ソプラノ)
・バラードの時は曲に雰囲気を色づけるようなフレーズやリード、ロングトーンを演奏
・アップテンポな曲は猛々しく演奏してアンサンブルを分厚くする

○ピアノ (Roland V-Piano)
・左端の鍵盤で具体的にベースの音域をカバー
・クラシック調のメロディアスなピアノで曲の展開を彩る
・曲の展開が変わる時に敢えて不協和音を演奏してロックなアクセントを入れる
・間奏やアウトロの時には右手の鍵盤でストリングスの音色を演奏して曲の雰囲気をコントロールする

という演奏をされていました。

「アップテンポな曲はサックスの音圧で迫力増していてカッコいい!!」
「展開が変わるときにピアノの不協和音が入るけど、全然変じゃないしロックな感じで凄い…」
「音楽においてのストリングスは重要なんだ…」
ということを感じながら聴き入っていました。。

途中で
・ボーカル×ピアノ
・ボーカル×サックス
・ボーカル×ピアノ×サックス
の楽曲もあって、楽器ごとの良さも存分に楽しめました!

そのため、とにかく
「暖かみのある生楽器の音で、トオルさんのパワフルで鋭い歌声に合うサウンドを作ろう!」
「静かな曲は哀愁がマシマシで、アップテンポな曲はとにかくパワフルに、曲の雰囲気を多彩に表現しよう!」
という方針を感じ取れるようなサウンドメイクをされています。

とても3人だけ+生楽器のみの演奏とは思えない大迫力のサウンドで、「生楽器中心のベースレスロックの真髄」を目にしました。


ベースレスロックに必須(気味)な楽器集

ここからは前作〜本作までの研究を踏まえて、僕が思う「ベースレスロックに必須(気味)な楽器」について綴っていきます!

①ギター

もはや説明不要な「ロックに必須」な楽器です。
コードが鳴らせてフレーズも演奏出来るサウンドの主軸となる楽器です。

ベースレスロックでは、エレキを使われる方も居れば、アコギも使われる方も居らっしゃいます。
時折ベースの音域やフレーズを演奏したり、激しく掻き鳴らすことで打楽器のような役割も担うこともあります。

②サックス

個人的に
アコースティックロック最強の楽器
だと感じています。

バラードならロングトーンやフレーズを演奏して雰囲気を色づけることが出来て、アップテンポの曲なら猛々しく演奏してサウンドを分厚くすることが出来ます。また、曲によってはサックス奏者さんがフルートを演奏したりも可能です。
(そしてコードも鳴らせます。)

サックスは「人間の声に近い楽器」と言われているので「声量があってブルージーな歌い方のボーカリストさん」とは相性が良いです!
そのため、「ベースレスロック」には必須気味な楽器だと思われます!

③鍵盤楽器 or ストリングス (ヴァイオリン/チェロ)

この2つは
「音を分厚くしたりメロディアスに彩るための楽器枠」
です。

そのためには、
・コードが鳴らせる (厚み)
・リードのフレーズが演奏出来る (彩り)
・ベースの役割を担える
・ストリングスパートが演奏出来る
ことが必須となるので、鍵盤楽器は当然全ての項目をクリアしています。

ストリングスも「リードギター的な役割」や「弾き方を工夫することでベースの役割」を担える楽器なので、全ての項目をクリアしています。
実際に清春さんは「ギター×チェロ」の際にそのようなサウンドメイクをされていました。

以上の理由から、僕はベースレスロックには
「ギター、サックス、鍵盤楽器、ストリングス」
あたりの楽器が必須気味だと感じています!!!


余談

①実は清春さんも7月のLIVEで、トオルさんと全く同じ編成で「シャイニン・オン」をカバーされていた


実は最近の清春さんのツアーでは日替わりのカバー曲コーナーがあるのですが、7月13日の名古屋公演で
"ボーカル×ピアノ×サックス"の編成で
「シャイニン・オン 君が哀しい」
のカバーを披露されていたそうです。

僕もこの情報を知った時、「この前のトオルさんご本人と全く同じ編成だ!!」と驚きました…。

②"ベースレス第一人者" 沢田研二さんの近況について

最後に"ベースレス第一人者" 沢田研二さんの近況についてお話します。

沢田さんはここ数年
「ギター×ギター×ベース×ドラム×キーボード×コーラス×コーラス」
という7人編成でのLIVEをされていました↓

しかし、今年のツアーの追加公演において、
「来年からキーボードの斎藤さんを除いて、バンドメンバーを一新し、76歳ですが新たな挑戦をします!!」
との発表があったそうです。

↑メンバーは既に発表されているのですが、恐らく「オルタナ/ハードロックに強いミュージシャン」の方が多く揃っているので、
「サウンドが今よりもロック寄りになるのではないか」
と予想されていますね。

76歳を迎えても新たな挑戦をされる沢田さんの今後を非常に楽しみにしています…!!

③トオルさんはこの前のLIVEで沢田さんの曲のカバーを披露されていた

トオルさんは"その"沢田さんのバンドPYGの楽曲「自由に歩いて愛して」をこの前のLIVEでカバーされていました!

激しい演奏でカッコよかったです!

まとめ

・ベースレスロックに必須気味な楽器は
「ギター、サックス、鍵盤楽器、ストリングス」
である。

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