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なぜ「My Eyes Adored You(瞳の面影)」は、日本のアーティストにカバーされやすいのか

今回の記事では、
1974年リリースのザ・フォー・シーズンズのフランキー・ヴァリさんによる楽曲
「My Eyes Adored You」

が日本のアーティストにカバーされやすい理由を研究していこうと思います!

元々ヨーロッパを中心とした海外圏で大ヒットした楽曲であるため、昭和の時代から現代にかけて多数の日本のアーティストさんにカバーされています。

僕は今回取り上げる
西城秀樹さんのカバー
でこの楽曲の存在を知ったのですが、フランキーさんによる楽曲であることを知ったのは、
Da-iCEの花村想太さんが主演されていた「ジャージー・ボーイズ」というミュージカルがきっかけでした。

このミュージカルをきっかけに
フランキーさんやフォー・シーズンズの楽曲に
触れるようになりました

↑「My Eyes Adored You」も妻と別れる場面の劇中歌として使われています!

それでは本編に移ります!

そもそも「My Eyes Adored You」とは

「My Eyes Adored You」は1974年11月にザ・フォー・シーズンズのフランキー・ヴァリさんによるソロシングルとしてリリースされました。

作詞作曲はボブ・クルーさんとケニー・ノーランさんによる共作で、
編曲はチャーリー・カレロさんです。

この楽曲は元々1974年初頭にフォー・シーズンズでレコーディングされていて、諸事情でレーベルがリリースを中止した後にフランキーさんご自身が録音音源の権利(原盤権)を買い取り、ご自身のプライベートレーベルにてリリースされたという経緯があるそうです。

楽曲自体は優しい音から始まり、後半になるにかけて壮大になるバラードです。歌詞は幼少期の思い出をテーマとしています。

楽曲の特徴としては、
・切ない曲だけど明るいコードが多い
・ギターのフレーズがオシャレで印象的であること
・全体的に転調が多いのでインパクトがあること
・フランキーさんの代名詞と言える「ハイトーンボイス」があまり使われていないものの、転調が多いため、歌いこなすには幅広い音域が必要なこと
・終盤はバンドメンバーとボーカリストによる歌声の掛け合いがあること

があります。

チャートでは、1975年に
・イギリスのポップチャートで1位
・Billboard誌のhot 100で1位
・その年全体のBillboardランキングで5位
を記録した大ヒット曲であるため、世界中で沢山のアーティストにカバーされています。

その他、前述した通りフランキー・ヴァリとフォー・シーズンズをテーマにしたミュージカル「ジャージー・ボーイズ」でも劇中歌として使用されています。

日本人アーティストによる有名なカバーを4つ紹介

※フランキー・ヴァリさんのオリジナルver.のキーはBmです。

①西城秀樹さん 「瞳の面影」

1975年9月25日リリース
キーは♭2(Am)されています。

秀樹さんのカバーはLIVEアルバム「ヒデキ・オン・ツアー」に収録されている他、多くのLIVEや歌番組似て披露されています。

訳詞はたかたかしさん、編曲は芳野藤丸さん(秀樹さんバンドのギター)が担当されています。

訳詞は「昔の思い出」というテーマにはあるものの、原曲とは異なるオリジナルの内容で作詞されており、原曲の歌詞で多く使われている「瞳」というワードも一度も使われていません。
その代わり「もう一度」というワードが多く使われていて、楽曲を象徴するパンチラインとなっています。

秀樹さんver.の大きな特徴は2つあります。

1つめは「芳野藤丸さんがギターをよりオシャレにアレンジされていること」です。
藤丸さんはオシャレなギターフレーズを作られるのを得意とされているので、原曲からギターのフレーズをよりオシャレにアレンジされています。
(なので"切なさ"の部分は藤丸さんが担っているとも言えます。)

2つめは「秀樹さんと藤丸さんの歌声の掛け合い」です。
秀樹さんの"深みとパワーのある歌声"と藤丸さんの"ダンディで太い歌声"によって、スケールの大きな楽曲に仕上がっています。
ラストの藤丸さんの主旋律と秀樹さんのフェイクが交差する場面は圧巻です。
切ない曲ですが、それと同じくらい情熱的な仕上がりになっていると思います。

藤丸さんはこの曲がきっかけで
「藤丸さん歌上手いですね!レコードを出しませんか?」
と言われて藤丸バンドの「BGM」をリリースすることになったといいます。

「印象に残っている」と公言されている藤丸さんを始め、秀樹さんサイドも「瞳の面影」をとてもお気に召しているようです。
恐らく秀樹さんサイドで「オリジナルの瞳の面影」を目指されたと思われる「Sweet Half Moon」という楽曲もリリースされています。
(↓ここで詳しく書いています。)

②沢田研二さん 「ひとみの面影」

↑1975年当時の沢田さんです
キーは秀樹さんと同じく♭2(Am)されています

沢田さんのカバーは1975年にいくつかの歌番組やLIVEなどで披露されました。
訳詞は安井かずみさん、編曲は井上堯之さん(沢田さんのバンマス)が担当されています。

こちらの訳詞はかなり原曲に近いのですが…原曲では「小学5年生、6年生の頃」という歌詞を、沢田さんがあの雰囲気と歌声で「♪お互い学生の頃〜」と歌われるので、
・原曲…小学生の頃の思い出
・沢田さんカバー…中高生くらいの思い出

だと僕は解釈しています!

この時期の沢田さんの耽美な雰囲気や鋭くも艷やかな歌声が、曲の切なさをとても引き出しているように感じています。秀樹さんver.より「切なさ」の側面が強いカバーとなっていますね。

サウンドメイク面では、
・キーボードによるカリンバ/ハーモニカ/ストリングスのような音色が入っていること
・やはりこちらも原曲同様終盤はバンドメンバーとの歌声の掛け合いがあること
が特徴です。

この時期の沢田さんは「パリ進出」を試みていた時期なのですが、「何とかこの曲のカバーも音源としてリリースされていればな…」と思っています。。

④槇原敬之さん 「My Eyes Adored You」

1996年7月25日リリース
キーは♭1(B♭m)されています

槇原さんのカバーは1996年に"MAKIHARA"名義でリリースされた全曲英詞のアルバム「ver.1.0E LOVE LETTER FROM THE DIGITAL COWBOY」に収録されています。
歌詞は原曲そのままの英詞です。

今までJ-POPを歌われる槇原さんの歌声しか聴いたことがなかったので、洋楽を歌われている音源を初めて聴いたのですが、
英語の発音も表現力も圧巻で、
「洋楽を歌われるとこういう感じの歌声をされてるのか…!凄まじすぎる…」
と圧倒されました。

槇原さんver.のサウンドメイクの特徴としては、
・リズムにラテンっぽさがあり、冷たいキーボードの音色が多用されているので、AOR風のアレンジになっている
・コーラスワークが素晴らしく、ご本人の多重録音のコーラスが分厚い
などの他に、

松原正樹さんによるロックなギターソロが差し込まれるため、最終的にエアロスミスのような仕上がりになっている
のがオリジナリティがあって素敵だと感じました。AORやロックを感じるカバーです。

そして、あれだけ壮大な曲になってラストはまたイントロのフレーズに戻るというアレンジも凄いと思います。
(原曲は壮大なままフェードアウト)

④藤井風さん 「My Eyes Adored You」

2021年5月20日
キーは原曲キー(Bm)そのままです

藤井さんのカバーは2021年リリースのカバーアルバム「HELP EVER HURT COVER」に収録されています。
歌詞もキーもオリジナルそのままです。アレンジも基本的には原曲に忠実なコードで弾かれています。

演奏はピアノとボーカルだけで、今回紹介するカバーの中で一番シンプルなのですが、
そのピアノでの展開や緩急の作り方が聴きどころです。

藤井さんの乾いた歌声で歌われているため、ボーカルには曲の持つ「切なさ」の要素が強く出ているのですが、
伴奏は原曲寄りのメジャーコードを多用されているので、かなり明るい仕上がりです。
(その中で時折音数を減らしたり、暗い音を弾いたりして緩急を演出されます。
藤井さんらしいコードも使われていて、代名詞である"4度進行"も入っていますね。)

終盤になっていくに連れてメロディアスなフレーズが増え、壮大なピアノ伴奏の上で掛け合いをしながら曲がフェードアウトしていきます。

聴いていてとても「藤井さんはこの曲を原曲のように明るく終わらせたいんだな〜」と感じました。

ピアノのテクニックや展開の作り方の巧みさが全面に出ているカバーだと感じています。


「My Eyes Adored You」が日本のアーティストにカバーされやすい理由を考察


※主に1974〜75年のリリース当時の話をしています。
また「昭和の音楽界では流行りの洋楽をカバーすることが多かった」という点は前提で考察しています。

①メロディが美しく、耳に残りやすい

日本訳詞では「♪もう一度〜」「♪忘れられない〜」とアレンジされていますが、
サビの「♪My Eyes Adored You」が歌謡曲的な音の当てはめ方がされていて、
とてもキャッチーであるという点はかなり大きな理由だと思います。

Aメロのメロディも流れるような美しさなので、"カラッとした音色のギター"や,ストリングス"などの昭和歌謡のメイン楽器と相性が良いです。

②曲自体の切なさをどうアレンジするかでアーティストの個性を存分に出せる

例えば
・秀樹さんや槇原さん…「情熱的に歌う」
・沢田さんや藤井さん…「クールに歌う」
という点だけでも曲の切なさをどうアレンジするかの解釈がハッキリ見えるので、アーティストごとの解釈を楽しみやすい楽曲であると思います。

その上で、雰囲気的に"古い時代の哀愁が顕著に出やすい楽曲"なので、その点も歌謡曲と通ずるものがあると考えていますね。

③転調にインパクトがある&最終的にどんどん壮大になっていく曲調が歌謡曲向き

転調が多いというのは演奏が難しいですが、その分インパクトがあります。

また、昭和の音楽シーンでは
バックバンドはブラスやストリングスがいるビックバンド
というのが基本だったので、
どんどん壮大になっていく曲はビックバンドで演奏するのに向いている
というのも理由の一因かと考えられます。


まとめ

・「My Eyes Adored You」は切なさや壮大さのある楽曲であるため、昭和の音楽シーンとの相性が良い

・"曲の切なさ"や"歌の掛け合い"をどうアレンジするかがカバーの聴きどころである


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