「w-inds. 〜1st message〜」 から考える、当時のw-inds.の"真の音楽性"
日本を代表するダンスボーカルユニット「w-inds.」は、2001年に千葉涼平さん、橘慶太さん、緒方龍一さん(2020年脱退)の3人でデビューしました。
デビュー当初、可愛い少年たちでありながら高いパフォーマンス力を持つw-inds.は「ヒップホップダンスユニット」という肩書きで活動していましたが、今回のnoteではw-inds.の1stアルバムのレビューを通して「デビュー当初ヒップホップダンスユニットとして売り出していたw-inds.の真の音楽性」に迫ろうと思います!
↑アルバムと合わせてお楽しみください!
「w-inds. 〜1st message〜」
全曲レビュー
①you can't get away
単音系やストリングス系など様々な音色のシンセ、カッティングギター、ハイハットを活かしたビートメイクというダンス系のポップス要素を全開に出した疾走感あるナンバー。
②Winding Road
ガッツリ出ているキメのシンセの音、シンセベース、鈴による8ビート、キックのビートなどが印象的な曲。
メロと被さるように鳴るシンセが曲の印象を強くしていますね。
③Feel The Fate
2ndシングル。ヒップホップ系のビートにコードを鳴らすシンセ、上モノでフューチャー系やフィルター系などの数種類のシンセをのせて作られている可愛いミディアムテンポのダンス曲。
僕はこの曲のコーラスワークが凄い好きでコーラスの音程まで全部覚えていますね。
また、この曲で主に使われているシンセの音色は同時期のハロプロの曲などでも結構使われているのでこの時期の流行りのサウンドなのかもしれません。
④Winter Story
シンバルを活かした4つ打ちのビートに恐らくはYAMAHAのテクノ系のシンセの音色を重ねて冬の恋模様を演出した曲。
僕は3年前に初めてこの曲を聴いた時は衝撃を受けましたね。
⑤Give you my heart
ゆったりしたビートをポップ系やオルガン系などのきらびやかなシンセの音色で彩ったバラード曲。ビートは終始一定のリズムなのでシンセで曲の展開を変えている感じですね。実はワーミー系のシンセが随所で鳴っています。暖かみのある音色のギターソロがあったりします。
1st messageのツアーではメンバー自身による演奏でアコースティックアレンジで披露されています。
⑥Paradox (rumor style)
3rdシングル。アコピのソロとSF系の音色から始まるイントロがあるアレンジver.。Aメロはピアノの音とテクノ系のシンセの音とビートなのですが、実はBメロとサビと間奏のビートが全部同じなので、基本コードに加えてシンセストリングスで曲のセクションを変えている感じなんですよね。凄まじい曲だと思います。
連続したコードの切り替えで音階を上げるキメが印象的ですね。
⑦The New Generation
割れた打ち込みドラムの音(この音を割るというのもこの時期の邦楽全体の流行りで、かつヒップホップっぽいです)、暗い音のシンセベース、カッティングギターによるジャムファンクサウンドのラップ曲です。
サビはソウルの要素もありますね。
⑧Forever Memories
1stシングル。近年のLIVE版のバンドサウンドの厚さやベースラインの凄さによって印象が薄れていますが、実は原曲は意外と主旋律はコード用のシンセとビートと微かなシンセベースくらいの音数で構成されている感じの曲です。そこにポップ系のシンセとサックスが入りますね。間奏やラストのサックスソロが曲の儚さを引き立てています。
更にイントロのシンセのフレーズがずっとサビで鳴っています。よく聴くとこんなに切ない曲調なのにビートがトラップっぽかったりするんですよね。
この音数でここまでの曲を作る葉山さんは凄まじいです。それでいて歌メロが最高にキャッチーです。
葉山さんは元々この曲を「女性ボーカルに提供するように作った」らしいです。
この曲をデビューシングルに貰った時点でw-inds.はアーティストとして勝ち組です。
⑨Love you anymore
曲中でずっとシンセベースをフューチャーしていてシンセベース主体のナンバーです。
シンセがシンセベースやビートに混じっていくところやシンセストリングスが良いですね。
連続したコードの切り替えが多いです。
⑩ROUND & ROUND
元々w-inds.のデビュー曲の予定だった曲。
結構ギターが強かったり、ラップがあったりとヒップホップかつロックな曲ですね。サビが(打ち込みですが)ちゃんとバンドサウンドになっています。ギターとキーボードの絡み合うソロもあって。
余談ですが、この曲でイントロや間奏で使われているシンセの音色に近い音色を慶太さんはトラックメイクの時に多用する印象があります。
⑪Endless Moment
w-inds.の中でも人気の曲で、活動の節目節目に歌われます。
4つ打ちのヒップホップビートに硬い音色のシンセとサビの歌メロそのままの浮遊感あるシンセが絡んでいく曲です。
シンセストリングスのソロがあったり、コーラスラインも面白いですね。
僕的には歌うのが凄い難しい曲だと思います。
⑫New-age Dreams
アルバムを締め括るのにふさわしい少年らしい明るいバラード曲です。
結構曲の作りとしてはゆったりしたビート中心なので、きらびやかな音色を抜いてギターなどの生楽器サウンドを増やした「Give you my heart」に近いところがあります。更に曲の展開が上がり調子なので明るいです。
間奏の生ストリングスが良い味を出していますね。
それでは考察に移ります!
・このアルバムから考える
"当時のw-inds.の真の音楽性"
①まず当時のw-inds.が自称していた音楽性について
当時のメディアなどを見ると、デビュー当時のw-inds.は「ヒップホップダンスユニット」という肩書きで売り出していました。
4つ打ち中心の踊れる楽曲や他のアイドルと一線を画す本格的なダンスパフォーマンスなどを武器としていたので、このマーケティング方法で正しいと思います。
更にデビュー当時は
・メンバーの可愛いビジュ
・慶太さんの声変わり前の儚げな少年の歌声
(当時は5オクターブ出ていた)
・アイドル的な活動内容
・それでいてパフォーマンス力が高い
ため、「カッコよくて可愛い!」と同世代の女性を中心に一躍人気となりました。
※w-inds.はアーティストですが、現在過去を振り返ることがあると、当時の自分たちの活動を"アイドル活動"と呼称していて、"デビュー当時はアイドルだった"という認識があるようです。
しかもw-inds.は"曲が良い"んです!
後で解説しますが、当時の他のアイドルと比べると"結構コアなことをやっている"印象もあります。
そのため、これは今も昔も変わらないのですが、
w-inds.のファンは音楽好きの方が多いです。
なので僕の見解をまとめると、
当時のw-inds.はファンや世間から
見た目は可愛いけどパフォーマンス力は凄まじい、
"ヒップホップ系楽曲派男性アイドル"
という認識で思われていたと思います。
②「1st message」の音楽性の解説
・制作陣について
前提として、このアルバムでメインで曲を書いていらっしゃるのが、葉山拓亮さんとT2yaさんの2人で、
お二方とも「打ち込み系のJ-POPクリエイター」です。
「本格的なダンスや歌を武器として売り出す予定」のw-inds.は「ヒップホップ系の曲、踊れる曲を書ける人」として打ち込みJ-POPのクリエイターに曲を頼んだと考えられます。
他にも、「2000年直後、日本の音楽が一気にブラックミュージック寄りになった」こともかなり大きく影響していると思いますね。
・制作した曲や音数の少なさについて
それで葉山さんたちが主に制作したのが、
「4つ打ちのビートを中心とした音数の少ない感じのポップソング」です。
ヒップホップさを出すために、
・ラップを入れる
・アレンジを海外のクリエイターに依頼する
・ベースやドラムの音をヒップホップ寄りにする
などを行っているように思えます。
特にピックアップしたいのは、やはり音数やトラック数の少なさで、ほぼビートとシンセとコーラスだけとかの曲が多く、ギターの音が入っている曲は数曲ほどしかありません。音数が少ないため、ベースラインが無い曲やほぼ聴こえない曲もあります。
もっと言うと、今、慶太さんが1st messageの楽曲をセルフカバーしてみようと思ったら耳コピですぐオケを作れちゃうくらいの音数なんですね。
・ヒップホップかどうか
ただ、アイドルの曲なので本格的なヒップホップというよりは、沢山の人にウケるような
"キャッチーさ"や"ポップさ"を出すために、
「ヒップホップでは余り使われないポップ系の音色やきらびやかな音色のシンセを多用している」
印象があります。
また当時の邦楽の流行りの音色を入れていたりします。
これらがヒップホップに"アイドル音楽色"や"J-POP色"を足すということなのだと思います。
"歌謡曲っぽさもあるがゴリゴリブラックミュージックなDA PUMP"と比べると、"w-inds.はきらびやかでアイドル音楽ヒップホップ"というように感じます。
また、路上を含めたLIVEの時にフリーダンスパートで流している曲や踊っているダンスの種類はヒップホップなのですが、突き詰めたヒップホップをやっているのは2ndアルバムや3rdアルバムで、1stアルバムはまだアイドル音楽の要素が強いと思います。
それは当時の慶太さんのボーカルが可愛く、歌詞もアイドルっぽいという点にも現れていると思います。
※余談ですが、このnoteを書くために、このアルバムの歌詞カードを引っ張り出したのですが、ギターのある曲のギターと「Paradoxのアコピ」、「Forever Memoriesのサックス」、「New-age Dreamsのストリングス」以外は"全てシンセサイザーによる打ち込みサウンド"です。リズムセクションも全て打ち込みです。
なので曲の作りはヒップホップに近いが、きらびやかでポップな面もあるという点を考えると、
当時のw-inds.の音楽は
"ヒップホップであり、シンセポップの要素もある"
と思います!
・90年代的な要素もある
僕的にはこのアルバムの曲の"歌メロやポップな音色がギリ90年代"を感じさせるように聴こえるんですね。
歌メロや歌声は、キャッチーだったり、それこそ女性ボーカルに近い声質なのでよりその90年代を感じます。
音色の面に関しては、これから時が経って2002年くらいになると結構シンセの音色って本格的になるのですが、2001年の流行りの音色は、まだ発展途上というか、懐かしさや暖かみを感じるポップな音色のように感じます。
だからこそ、この年代のシンセポップってまだ"90年代の延長上"にあると思うんですね。
前時代と新しい時代がいい感じに混ざっているように思えます。
アイドル音楽的な要素もそこに拍車をかけていると思います。
まとめ
・「w-inds. 〜1st message〜」の頃のw-inds.の"真の音楽性"は
「ヒップホップかつシンセポップで、90年代の延長上にあるアイドル音楽」である!
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