治療方法決定まで(中咽頭がん)
ネットから本から情報収集
中咽頭がんになったことがわかってから、暇があれば、というより、最優先事項としてこの病気について調べました。
がん情報サイトやがんに罹った方のブログ、論文から書籍まで。
まず、飛び込んできた情報として、治療により発生する副作用、合併症、後遺症についてでした。
放射線治療と抗がん剤の併用
唾液がでなくなる、味覚がなくなる、口内炎がひどい、飲み込めなくなる、皮膚のやけどがひどい、嘔吐がひどい、耳鳴りが治らなくなる。
そして治療中は飲み込めない、味がしない、いたい、で食事をするのが辛く、胃ろうを設営する方も多い。。などなどがんの切除(手術で物理的に切る)
顔の形が変形する、むくみがひどい、肩が上がらなくなる、唾液が少なくなる、手術跡がのこる。。などなど
頭頸部(頭から首にかけて部分)は重要な器官が多く集まっていて、そこに放射線をあてたり、切ったりするといろいろな影響が出てしまうということを知りました。
ステージ1とのことで、なんとかなるさ、と能天気に構えていましたが
やばいことになっているんだ
と認識するようになりました。
それに伴い、どんどん怖くなってきて、弱気に。。
「ひとりで入院して、治療して、いたくて、辛くて、後遺症ものこりそうだし、どうしよう。。」
読んだ本の中で、周りの人に相談することで励まされ、応援してもらい、辛い治療を乗り切れた、というお話を読んで、
病気について周囲に伝えるかどうか悩んでいたのですが、仲間に聞いてもらうことにしました。
ちょうど、PET CTの検査結果を聞く前日に、仲間であつまる予定があったので、その時に。
天気予報は雨で、4年ぶりに開催できると思っていた桜の下での宴会は絶望的。なのに、飲みたい気持ちのほうが勝る強者のあつまりで、宴会できれば何でもよい、という事で、私の家で宴会をする前提で集合しました。
予報通り当日は雨。アパートの前に咲いている桜をめでるでもなく、とにかく早く乾杯したい輩ばかり。部屋でひたすら飲む、という非常に健康的な会でした。笑
そんな、宴もたけなわのさなか、病気のカミングアウト。
やはり、がんというのはパワーワードで、みんなあまり言葉もなく、私ひとりでブログとかで読んだ治療の大変さとか後遺症の怖さを一方的に伝えて、自分がそうなるかもわからないのに
「辛いときは話を聞いてね」
と、みんなをまきこまさせてもらいました。笑
あたたかく受け入れてくれた仲間に感謝です😭
ダヴィンチ手術の可能性
治療方法の検討をすすめるなかで、放射線治療にも種類があって従来の放射線治療のほかに「陽子線治療」「重粒子線治療」というのがあることを知りました。
そのうち「陽子線治療」が中咽頭がんの治療に実績があり、先進医療として厚生労働省に認められています。
先進医療は、保険適用とする治療に値するかどうかを見極めるために、治療施設と実施期限を定めておこなわれているもので、治療費は保険が適用されないため自己負担となります。(付随する治療は保険適用されます)
頭頸部がんで陽子線治療が保険適用となっている部位もありますが、中咽頭がんはまだ先進医療です。(2023年6月時点)
陽子線は従来の放射線よりも、患部にピンポイントに照射できるので、まわりの臓器(器官)への影響を少なくすることが期待でき、後遺症をできるだけ少なくして、患者のQOLを維持することを目的に保険適用されるべく先進医療での臨床実験を進めているとのこと。
そもそも、放射線でのがん治療は、放射線で細胞を壊して、がん細胞は一度破壊されると復活できないけど、正常な細胞は再生してくる、という特徴をふまえたものなので、治療中は正常な細胞も破壊されて、やけどやら味覚障害やらは仕方ない、っていう治療なんだけど、それじゃあんまりだよね、ということで、後遺症や副作用を低減させるよういろいろ研究され、治療方法は日々進歩しているようです。
10年後には後遺症の心配はほぼなくなっているかも??
いろいろ調べを進めるにつれ、がんは治ること前提に、いかに後遺症が少ない治療ができるか?という方向に考え方がシフトしていきました。
そんな中、ちょうど1年前に中咽頭がんの治療として保険適用となった「ダヴィンチ手術」というのを知りました。
ダヴィンチというのは手術支援ロボットの名前で、お医者さんが遠隔操作で3D画像を見ながら手術ができるロボットで、いままでの内視鏡手術よりも正確に施術できるとのこと。なんでも、米軍の兵士の治療をアメリカの本国にいる医師が手術できるように開発されたとか。
中咽頭がんの治療においては、唾液の減少とか味覚障害の後遺症は発生しないらしく、
え、これで治療可能なら是非これでやってもらいたい
と思い、いろいろ調べました。
しかし、ダヴィンチで切除できるのは原発の扁桃腺のがんだけで、リンパ節転移部分は、「頸部郭清術」というこれも後遺症リスクの高い手術方法か、放射線治療になってしまいそうなことが判明。
調べる中では、リンパ節転移がある場合、ダヴィンチ手術と頸部郭清術のセットという情報しかありませんでしたが、私が調べた情報の組み合わせでは、ダヴィンチと陽子線の組み合わせが一番後遺症リスクが少ないのでは?と考えるに至りました。まぁ素人考えですが。。
市民総合病院でPET CTの結果を聞いたときに、治療方法についての意思を確認されました。
この市民病院でも治療は可能なのですが、いかんせん田舎の病院なので、中咽頭がんの症例数は少なく、できる治療も限られているため、転院することを前提に、
「ダヴィンチ手術の可能性を聞いてみたいです
陽子線治療の話も聞いてみて決めたいので、両方に紹介状を書いてもらうことはできますか?」
と聞いてみましたが、それは難しい、、と
どうやら同時に二人の医師に紹介状を書くのは礼儀に反することのようです。。(そういう世界なのね)
中咽頭がんのダヴィンチ手術を保険適用とするのに尽力された、耳鼻咽喉科の権威といわれる先生が私の住む地方の大学病院にいらっしゃり、設備もあるという事で、そちらに紹介状を書いていただきました。
医師との意思疎通
2023年4月中旬
予約が取れたのは2週間後。大学病院へ伺います。
混雑度合いが市民病院と比較すると段違いです。マンモス病院。レストランも何件もあるし。
そして、予約の時間から3時間たっても呼ばれない。。予約(ry
待合で息絶えるかと思った午後1時ころ、ようやくお声がかかりました。
しかし、これだけの長時間、おそらくお昼ごはんも食べず、いろんな患者と向き合って診察や対応をしているお医者さんってすごいな、こんな激務おれには無理だな。。と尊敬。
診察開始
まずは鼻からの内視鏡での診察。
次に、のどに手を入れて、直接の幹部の触診をしていただきました。まったく苦しくありませんでした。
ダヴィンチ手術を希望していることは紹介状で認識していただいていて、
「患部がすこし固いですね。筋肉にまで侵襲している感じがあり、ダヴィンチ手術では取り切れない可能性があります。MRIを撮ってみないと最終判断できませんが。
また、PET CTの所見には書かれていませんが、ルビエールリンパ節への転移も認められます。これは手術では取れないため、放射線治療も必要になります。」
なんと、ほかにも転移が!?
さすが権威の先生。みつけてくださりありがとうございます!
ここで、素人考えの質問をぶつけてみることに。
「原発ガンとリンパ節の両方に放射線をあてるより原発ガンはダヴィンチ手術で切除してしまったほうが後遺症は少なくなるのではないかと思うのですがどうでしょう?」
「確かに、あてる場所が狭まる分、放射線による影響範囲は少なくなりますが、切除手術で組織が弱っている上に放射線治療ということになるので、最終的には変わらないとされています。短期的にはむしろ悪くなると報告されています。長期的には同じ程度の後遺症となります。」
放射線治療を行うならより後遺症のリスクが少ない陽子線治療がいいと考えていることを伝えると、照射範囲がピンポイントがゆえにがんが残ってしまうリスクがあること、症例数がまだ少なく、臨床での有効性が確立されていないので、おすすめできないと。
また、抗がん剤治療の後遺症で耳鳴りがあり、それを避けたく、抗がん剤治療の併用をしなくても治療可能かをお聞きしたところ、それはやってみないとわからない、としながら、p16+の場合、放射線治療での治療成績が非常によいことは知られているが、抗がん剤はがんを小さくすることはできるがなくすことはできないので、補助的に、より治療成績をよくするために用いられているものあり、併用しない場合がんが残るリスクがある。と
また、p16+の場合の治療において、放射線の照射量を少くして後遺症のリスクを減らす臨床実験が海外では開始されているとの情報も教えていただきました。日本ではまだできないようですが。
唾液の減少や耳鳴りのリスクを最小化させたい、
治療後にまた思う存分ロードバイクを楽しみたい、と考える私
再発のリスクを最小限に治療を行うことを考えてくれている医師
「残念ながら、今の時点では後遺症が残らない治療方法はないです。その前提で考えたほうがよいです。それを考えすぎておかしな方向に進んでしまう人を何人か見てきています。
私なら迷わず放射線治療を選択します。
がんの治療は後追いでの治療は負け戦となってしまう。治療効果が証明されている治療を受けるのが一番リスクは低いと考えます。」
すごく良いお医者さんだと感じました。
いろいろ聞いたうえで、どうするか、自分で判断しなければなりません。
今まで得た情報を整理すると、
首のリンパ節とルビエールリンパ節への転移があるため、放射線治療を行わなければならない
ダヴィンチ手術と放射線治療の併用は後遺症の低減の期待は薄い
普通の放射線治療より陽子線治療のほうが後遺症発生が少ないことが期待できる
しかし、陽子線治療の症例数は少なく、リスクはぬぐい切れない
リスクはあるのかもしれないが、陽子線治療はQOL向上のために先進医療として評価を進めている治療方法ということをふまえ
「陽子線治療の可能性を聞いてみたいです」
「そうですが、当院には陽子線治療の設備はありませんので、また市民病院さんにのほうから陽子線の医院に紹介状を書いてもらってください」
という事になりました。
診察室を出てすぐに市民病院に電話をして紹介状を準備していただくことに。次の予約は思ったより早く取れて3日後でした。
先進医療B
2023年4月中旬
陽子線治療の病院へ
陽子線治療専門の施設で、大学病院の付属となっている病院です。
診察開始。中咽頭がんは保険適用では陽子線治療はできないこと、
「先進医療B」であることを説明されます。
自己負担額はおよそ300万円弱。がん保険に加入しているか確認されます。
私は幸い加入しており、先進医療特約もあったため、保険金を請求できます。よかった。。
おそらく、治療可能であろうとの所見をいただき、そのままCT検査と血液検査、心電図の検査を実施しました。
CT検査は歯の金属の影響で患部がよく映っていないらしく、後日MRI検査を行うことに。
診察の中で、抗がん剤治療を無しで陽子線だけで治療可能か?とお聞きしたところ、「それでは治りません」ときっぱり。
p16+の場合、抗がん剤併用の必然性はあまりないという研究が進んでいるとお聞きした旨をお話しましたが、そもそも先進医療Bとして治療するためには定められた治療方法を実施しなければならないという縛りがあることを教えていただきました。
先進医療とはあくまでも臨床試験の一環なので、同じ条件で治療を行わないとその効果を評価できない、という理由からのようです。納得。。
なので、それ以外の方法となると、自由診療となり、一部の保険適用もなくなり、すべての医療費が自己負担となり高額になるし、医院側も実施したくない雰囲気が感じられました。
また、私のステージは1なので、それも先進医療Bの適用外とのこと。(ルビエールリンパ節への転移はなぜだかステージ判定には反映されていないらしく、ステージに変化はありませんでした)
先進医療Bが適用されるのはステージ2以上のようです。
陽子線治療で治療可能という判断をしてもらえるのか、MRIの検査結果を待ちます
1週間後MRI検査をしてもらい、その日のうちに結果をしらせていただきました。
右のリンパ節にも腫れがあり、がんと確定ではないものの、治療対象としたほうが良い、との判断で、ステージ2として先進医療Bの対象として治療が可能とのこと。
ただ、そうなると、両方のリンパ節を患部として強い陽子線を照射することになるため、より耳下腺という唾液の分泌をになう組織を破壊してしまうことになります。
「可能性として、右側に強い線量を当てなければ右側の耳下腺は無事ってことはありませんか?右側は線量を弱くしたりできませんかね?」
とお聞きすると
「それはあるかもしれないです。。しかし、がんが残って再発というリスクを冒すことは避けたい。
またそうなると先進医療Bとして認められなくなり自由診療になってしまいます。
どうしますか?」
決めるのはあくまで自分です。
しばらく考えます。。。後遺症のリスクの最小化か、がん再発リスクの最小化か。。。
「先進医療B」でお願いします。
と決断しました。
しかし、こればっかりはなにが正解がわからない。
同じ病気にかかった自分が二人いて、違う治療をして、結果を比べることができなければ、正解なんかないのである。
決断したからには、この治療で必ず直し、後遺症を最小化する自分にできる努力をするのみ。
とは思いながら、こういう選択をしなければならない場合、どうするか?を親友3人に投げかけてみました。
3人とも、再発リスクの少ないほうを選択する、という結果に
「おまえは治療後も自転車を頑張りたいだろうから、唾液が大事だと思うのはわかるけど、再発はもっと大変だと思うよ」と
なんだか、安心させてもらいました。ありがとう。
治療方法が決定しました。
がん発覚から約1か月半。
しかし、、治療開始までさらに1か月半かかるのでした。
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