違う未来を見てた二人

僕らはあの日、一つの答えを出した。
そしてこのくらいの時間が必要だった。
それぞれの日々を保つ為には、また、あれ以上関係がダメにならないように。

楽しかった日々を思い出すほど
離れ離れになるきっかけとなった
あの日の絶望的なものが容赦なく覆い被さるように僕らの笑い声を塗りつぶしていく。

人には、嫌な思い出を消し去る忘却機能があるというが、そんなものが本当にあるのかと疑いたくなるほどに、僕の脳裏にはあの日が鮮明に焼き付いている。

最後の日、観に行こうと言っていた映画を観に行った。本当に終わってしまうのだろうかと、そんなことを微塵も思わせないくらいに僕らは自然だった。

だけど、会う時はいつも嵌めていたペアリングは、君の右手には嵌っていなかった。君は忘れたと言っていたけど。

誰かと真剣に向き合ってきたのは
僕にとっても、彼女にとっても初めてだった。

皮肉にも、映画のサブタイトルが絆。
さよならをする僕らは、その絆を切らなければならない。

映画の最後のシーン、明日どうする?と聞いて振り向く主人公の隣から、それまでいた小さなモンスターが消えていた。
まるで僕らを映し出したようなシーンだった。

迎えたくなかった結末は、胸をえぐるように突然やってくる。
拳を精一杯握ったところで、覚悟にすらならなかった。溢れる涙を止める術があるなら、今すぐ教えて欲しいくらい、情けないほどに泣いた。

僕は彼女に感謝しかなかった。
たくさんの夢を叶えてくれた。

行きたい場所、連れて行きたい場所
1人だと行こうと思わなかった場所

そのどれもの条件には君が必要だった。
そこには必ず君がいて、君がいなければ意味がなかった。


柔らかくなっていく表情を見て
本当によかったなと思っていた。

あれだけ鋭かった目つきは丸みを帯びた。

恋をすれば変わると思っていたから
実際にそうなっていった彼女を見て嬉しかった。

彼女は僕と一緒にいたことで少しずつ全てが変わったんだと、自意識過剰に過ぎないかも知れないがそう思っている。


だから、余計に悔しかった。
だけど、逆戻りになっていく彼女はもう違う人になっていた。目つきも雰囲気も言葉も優しくなかった。

彼女は、彼女の中で何かが壊れていたように思う。それを取り戻せないまま。

あの日々の続きを描けそうな気がしてるのは
僕だけなのだろうか。
君もまだ…なんて都合が良すぎるかな。

僕らは知らない季節を歩いていく。
どこかですれ違っても気にならないくらいに
幸せであふれていて欲しい。

そしてまた僕も、君との日々を超えて
君が後悔するくらいに輝いていこう。