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まこの短編小説

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好きな曲を題材に短編小説を書いてます。
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#短編小説

【アオバ】

白いシャツが風に膨らんで、袖の方から抜けていくのが気持ちいい。
ブレーキで微調整しながら、下り坂を勢いよく下っていくのはまさに爽快だ。風を切っていく。
あれだけ満開だった桜も、いつの間にか葉桜へと変わっていた。
僕は、青々と瑞々しい葉桜の方が好きだ。
淡いピンク色の桜も“春”を盛大に彩ってくれているのは間違いないのだけど。

土曜日の午前授業を終えた帰り道
下り坂に沿って植えられている桜の木を眺め

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【スカーレット】

ねぇ、ちゃんと聞いてる?
寧々は少し膨れた顔で僕の顔を見ていた。

ジョボボボ…とコップの底をストローで啜る音を立てながら、寧々を上目遣いで見た。

もういい。幼なじみがこんなに恋で悩んでるのに、ちっとも気にならないんだね!

いや、そんなことないって。

じゃあ今、あたしがなんて言ったか言ってみてよ!

いや〜、その〜。。。

ほらね!涼介っていっつもそう。

ごめん。で、もう一回お願いしていい

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【流れ星】

ヴーヴー、ヴーヴー。
テーブルに置いていたスマートフォンが震えている。
カーテンの向こうが少しだけ明るい。
ようやく朝になりはじめた頃だろうか。

瞼を開けきらないまま、ベッドから思いっきりテーブルに手を伸ばしてスマートフォンを見た。

佳奈の笑った顔が画面いっぱいに映し出されていた。

「もひもふぃ」

「ごめんね、めちゃくちゃ早い時間に」

「ほんとだよ。どうした?」

「今日、彗星が見えるん

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