なぜ歩く事が大切なのか
歩きましょう。
最近の社会情勢を受けて、在宅勤務などで「外出せずに家に居よう」とする人が多いです。そうなると起こる問題として、体を動かす機会が無くなる事が挙がりやすいです。そういう時は、ほんの少しの時間でもいいので、自宅の部屋や廊下でもいいので歩く機会を増やすのが良いと思います。
私は本業がデスクワークで趣味もインドアであり、運動全般が嫌いです。しかしそんな私でも、昔読んだ本で「数学者Andrew Wilesは、約400年のあいだ解かれなかった難問"フェルマーの最終定理"の証明を、散歩中に思いついた」という話に影響を受けてから、歩く事だけは意識的に取り組んでいます。
最近になっていくつかの文献から歩く事の重要性に裏付けが取れたので、なぜ歩く必要があるのかを本稿で紹介します。普段からダイエットとかトレーニングなどの目的を持って身体を動かしている人は一定数いると思いますが、そうでない「ダイエットとかどうでもいいし...」と思っている私のような人も含めて、すべての人が享受できるメリットを紹介します。リモートワークをしている人もそうでない人も、なにかの参考になれば幸いです。
※本稿には部分的に医学的な内容が含まれますが、専門的な情報は各種医療機関や公的機関の情報を参照してください。
健康リスクの低減
同じ姿勢を長時間維持すると身体に負荷がかかり、様々な身体の病気のリスクが高まり、寿命が縮まります。特に「椅子に座る」とか「パソコンのキーボードを打つ」「スマホを触る」といった動作は人類の長い歴史において経験したことのない不自然な姿勢であり、人体はそういった姿勢に最適化されていません。パソコンやスマホを使っているだけで身体に負担が掛かっている事を認識しましょう。最悪の場合、腰や首を痛めてしまうと今までどおりの作業ができない体になってしまうかもしれません。感染症対策で外出を自粛しているのに身体を壊してしまったら、元も子もありません。
人間工学に基づいて身体への負荷を軽減するオフィスチェアも市販されており、そういった設備を福利厚生に挙げている会社もあります。しかし、自宅だとみんながそういう環境で作業できるとは限りません。長時間の作業に適したオフィスチェアが自宅に無い環境下で在宅勤務をしていると、身体には知らないうちに負荷がかかっています。だからといって、数十万円もするオフィスチェアをすぐに購入するのは難しいと思います。ではどうすれば良いのか?定期的に歩くことです。
座ったままの姿勢を長時間維持しないように、作業の区切りなどで定期的に席を立って歩くようにしましょう。ここで言う「歩く」とは、必ずしも「外に出て公園を散歩する」ような一定時間の運動を意識した内容でなくても構いません。飲み物を取りに行ったり、お手洗いや洗濯をしたりするだけでも良いと思います。1時間にたった数分・数秒でも良いので、とにかく定期的に歩く時間を取ることを意識しましょう。もしそれも難しい場合は、座ったままできるエクササイズが世の中では多く考案されていますので、調べてみましょう。大切なのは、同じ姿勢を長時間維持しないようにすることです。
なお同様の理由で、スタンディングデスクを使っていてもそれだけでは立っている姿勢を長時間維持してしまうため、健康面のリスクを回避することはできません。スタンディングデスクでも定期的に席を立って歩くことは有効です。
知的生産性の向上
人体には血液が流れていて、脳など色々な所に絶えず栄養を運んでいて、それらがいろんな化学反応を起こして人体を動かしています。歩くことで、座ったままでいるよりも下半身の運動によって全身の血流が良くなるので、脳への栄養分の運搬効率が上がって機能が向上し、頭の回転が良くなる効果が期待できます。
「散歩している間に考え事をしたり何かアイデアをひらめいたりした」という経験がある方は多いのではないでしょうか。それは恐らく、血流が良くなって普段よりも頭がよく動いた結果だと思います。なにか考え事をする時などに座りっぱなしでうんうん悩むよりも、散歩してまとまった歩く時間を確保する事は効果的です。
歩くことに生産性向上の効果を期待するときは、まず机の上でいま問題となっている事や考えなければいけない事を軽く整理した上で、歩く時間を数十分程度とってみましょう。歩いている間に今まで思いつかなかったアイデアが得られるかもしれませんし、もし何も思いつかなかったとしても先述の健康面のリスクは低減できていて、何もしなかった時より寿命は伸びています。
精神面の安定
歩くことは瞑想(マインドフルネス)の機会として使うこともできます。いまは特に不満や不安の多い社会情勢の影響を受けて自宅にこもっている方が多いと思います。FacebookやTwitter等のSNSやニュースでは、過度に不安を煽るような情報が毎日腐るほど飛び交っています。そういった不安要素からすこし目を離し、瞑想によって思考をコントロールすると、ネガティブな情報によって心身に悪影響が出るのを防ぐ効果があります。
もし「2枚のマスクしか貰えないなんて!もう人類はおしまいだ!!みんな死ぬしかないじゃない!!!」みたいな気持ちになってしまったとしても、瞑想で心をフラットにすることで「マスクを有効に使う方法を考えよう」「マスク以外に政府は何をしてくれたんだろう?」「マスクが無いと人類は滅びるんだろうか?」といった冷静な思考になる事が期待できます。
ここで瞑想を目的として歩くのは、先ほど「知的生産性の向上」で述べたこととは逆になります。歩く時に、いま困っている事や不安な事などをできる限りすべて頭の中から追い出して、いま自分が歩いているという事だけに集中します。右足を上げる、下ろす、左足を上げる、下ろす、右足を...というように、「歩いている自分の身体」に対してだけ最大限の注意を向けます。すると頭の中から雑念が消えていき、歩き終えた後には思考がより明瞭になっていると思います。
もちろん瞑想は、歩かなくても家から出ずに行う方法が多くあります。興味のある方は調べてみてください。
まとめ
歩きましょう。
参考文献
・Simon Singh著『フェルマーの最終定理』新潮社
・Joe Kutner著『ヘルシープログラマ』O'Reilly Japan
・Chade-Meng Tan著『サーチ インサイド ユアセルフ』英治出版
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