放送大学の話
先日、放送大学を卒業しました。
もしかしたら皆さんも名前ぐらいは聞いたことがあるかもしれません。
その記念に、今回は「放送大学」について話します。
※2023年4月21日時点の情報です。
通信制大学とは
放送大学の前に、通信制大学というものについて少し紹介しておこうと思います。
通信制大学とは、その名の通り通学をしない(一部通学が必須な大学もある)で、卒業のために単位を取っていくスタイルの大学です。
大学通信教育自体は明治時代に始まりましたが、現在の形の通信制大学は、1947年10月の法政大学が最初と言われています。
通信制という都合上、実験や実習を行うのが難しく文系の大学が多かったのが、最近では芸術系や情報系も増えてきています。
放送大学
放送大学も通信制大学の 1 つで、国のお金で作られた、通信制大学・大学院です。
1983年に創立されました。
文部科学省及び総務省によって支援されているそうで、文部科学省には放送大学担当の係長職があるそうです。
そのような関係上、元々は国立や準国立として扱われていたらしいのですが、2003年に新放送大学学園法が施行されたことによって、正式に私立大学となりました。
学生の種類
学生の種類は 4 つ。
全科履修生(最長10年)
4年以上在学して124単位を修得すれば、「学士」の学位が得られる
選科履修生(1 年)
好きな科目だけを履修する
科目履修生(半年)
好きな科目だけを履修する
集中科目履修生(3ヶ月)
「司書教諭資格取得に資する科目」を履修する
大体の人が関係あるのは上から 3 つだと思います。
選科履修生と科目履修生は、特定の分野について学びたい人たちのためのシステムで、看護師や教員の資格勉強のために利用している人が多い印象。
ちなみに、選科履修生・科目履修生は15歳から受講可能です。
後に放送大学の全科履修生となった場合は、取得した単位を持ち越しできます。また、単位互換性のある大学もあるそうです。
コース
コースは 6 種類。
生活と福祉
心理と教育
社会と産業
人間と文化
情報
自然と環境
この中でおそらく最も人気なのは心理と教育でしょうか。
認定心理士や教育系の資格を取りたい人が多いからなのかなと思います。
入学する時にどのコースを受講したいか選択するのですが、選んだコース以外の講義もどんどん受けられますし、要件はありますがそこで取得した単位も卒業単位に含まれます。なので途中で興味が変わったという場合でも安心です。
学位
放送大学に関しては、学士(教養)となります。
それ以外の学位については、大学改革支援・学位授与機構の制度を利用することで取得できます。
放送大学の単位だけで情報工学の学位を取ったという方がいましたが、大変そうでした。
授業の形式
放送授業
面接授業
オンライン授業
ライブ Web 授業
の 4 つがあります。
放送授業
テレビやラジオで講義を見るタイプの授業です。
講義はインターネットからいつでも何回でもオンデマンドで視聴できます。
流れとしてはこんな感じ。
履修申し込み
テキストと課題が届く
講義
課題提出
試験
履修申し込みをすると、テキストと通信指導課題が届きます。
講義を見つつ、通信指導課題を提出(5 月中旬, 11 月中旬)しないといけません。課題が合格しなかった場合は試験(7 月中旬, 1 月中旬)が受けられないので、しっかり勉強しないとダメです。
課題はテキストを読み込めば大丈夫かと思いきや、講義の中でしか話していないような内容についても触れられているので、授業はちゃんと見るようにしましょう。
ちなみに、課題に合格していれば試験を落としても、次の学期に試験だけ受けられます。
自分で計画を立てて孤独に勉強に励むのが基本的なスタイルです。
オンライン授業
履修申し込みまでは同じですが、この授業にはテキストがありません。
5 分から 10 分程度の短い講義動画があるので、それをオンラインで視聴します。
1 つ見終わるごとに小テストを受けます。それを 1 回の授業で 3 回ほど繰り返し、最後にその日のまとめのテストを受けます。
テキストがない分、確認のための小テストを何度も受けないといけない上、さらにレポートの提出もあります。
学期の最後にもレポート(試験の場合もあるのかも)があるので、とにかくやることが多いです。
ですが比較的、ペースは掴みやすいかもしれません。
面接授業
私は受けたことがありませんが、面接授業もあります。
全国各地に学習センターがあり、そこで開講されています。
前期と後期で面接授業時間割表が支給され、その中から受けたいものを選択します。
先生の講義を直接受けたり、実験科目が主ですが、合唱指導やヒッタイト語講座、多摩地区のあちこちを巡るフィールドワークなどちょっと珍しい科目が中には割りとありました。
見ていると面白いので、面接授業時間割表は年に 2 回届く「お楽しみ袋」というふうに呼ばれていたりします。
ちなみに、人気のある科目は抽選です。
心理学実験は認定心理士の資格を取るのに必修なので特に人気です。そのため、たくさん開講されてはいるのですが、抽選に当たらず何年も在籍を続けている人がたまにいます。
ライブ web 授業
まだ私は受けたことがありません。最近始まった新しい授業形態で、自宅などから受けられます。
専用のシステムにログインし、そこから Zoom の会議室に入室してリアルタイムで講義が行われるそうです。
以上が授業の形式になります。
基本は放送授業で、それにプラスして他の授業が選択できるといった感じです。
私は学士入学なので、通学する必要はなかったのですが、1 年次から入学する方はスクーリング(面接授業)単位を受講する必要があります。
学費
大学
入学料
全科履修生(24,000円)
選科履修生(9,000円)
科目履修生(7,000円)
授業料
1 単位 5,500円
修士に比べ、大学の学費は比較的安いとは言われています。
全科履修生に比べると選科・科目履修生は少し安いです。
授業料は放送でもオンラインでも面接でも全て5,500円。
きっちり124単位で卒業しようと思ったら学費は706,000円です。
クレジットカードは使えませんが、モバイルレジなどオンライン決済に対応しています。
修士
検定料
30,000円
入学料
48,000円
授業料
1 単位 11,000円
研究指導料
176,000円(2年分)
合計で466,000円(臨床心理学プログラムは530,000円)。
働きながら 2 年で修士を取得するのは難しいという方は、先に選科履修生で入学してある程度単位を取得しておいて、後から修士で入り直すというやり方もあります。
博士
検定料
30,000円
入学料
48,000円
授業料
1 単位 44,000円
研究指導料
1,056,000円(3年分)
合計1,354,000円。
ちょっと調べてみたところ、あまり一般の人は取っていないようでした。検索した感じでは大学教員の方が多い印象。
論文が通らなくて大学を中退してしまった人などには便利かもしれません。
ちなみに修士と博士は入試があります。公式で過去問が公開されています。
学費の比較
通信制大学を設けている有名大学 2 つと学費の比較をしてみましょう。
慶應技術大学 通信教育課程
入学金
30,000円
在籍基本料
30,000円
授業料
140,000円
面接授業
5,000円(1 単位), 20,000円(1 単位、Eスクーリング)
最低でも卒業までに860,000円くらい。ただし、面接授業を最低限まで抑えた場合の話です。
放送大学だと 1 単位 5,500円と値段が決まっていましたが、慶應は 1 単位いくらではなく、年間で在籍基本料の30,000万円と授業料の140,000円がかかります。なので卒業が長引けば長引くほどお金がかかる仕組み。
調べた感じでは面接授業を最低限にして卒業するのはほとんど不可能だそうです。
というのも、スクーリングしないとなると支給されるテキストのみを頼りに慶應生と同じレベルで勉強してレポートや試験に合格しなければいけません。それはさすがに難しいので、結局みんな面接授業を受けるそうです。
放送大学のように全国各地に学習センターがあるわけではないので、面接授業を受けるには直接キャンパスまで行くか、サテライトキャンパスのある都市に行かなければいけません。そうなると毎回の交通費と 1 単位ごとの授業料が加算されます。
なので徐々に料金が嵩んでいって、結果それなりにお金がかかるという。
そのうちに授業を受けなくなり中退する人がとても多く、卒業率は 3 〜 5 %と言われています。
参考:卒業までの学費シミュレーション
早稲田大学人間科学部eスクール
選考料
35,000円(書類と面接)
入学金
200,000円
授業料
35,200円(1単位)
所沢にキャンパスがあります。卒業するのにかかるのは 3,500,000~4,500,000円くらい。
かなりお金はかかりますが、卒業率は60%越えとだいぶ高いです。
慶應の場合はスクーリングが必須なので、何らかの形で学校に行かないといけませんが、早稲田は最初と最後だけ行けばあとは行かなくていいらしいので、通学がほぼ不要で卒業できます。
就職に関してなどサポートが受けられない通信制大学が多い中、早稲田はサポートが手厚いという評判がちらほら。
ただ、ネットで検索しても早稲田の通信の卒業生や在学生の話がほとんどヒットしないので、実態はよくわかりません。。
大学によってやり方や金額は異なるので、気になる方は調べてみてください。
放送大学のいいところ
講義の改訂が頻繁
大体 4 年に 1 度はテキストも授業の内容も変わる
履修してない科目の講義も見放題
開講科目数が非常に多いので見応えがある
図書館のサービスが結構いい
申請すれば図書館の本を自宅まで有料で送ってくれる。地域にある学習センターに送ってもらって取りに行くなら送料は無料
学割使える(通学定期は無理)
通学していないので通学定期以外
孤独に勉強する精神を鍛えられる(?)
しかし友達はできない(スクーリングしてればそんなことはないかも)
通学が不要
引きこもり気味の人でも大丈夫
もう 1 つ、グランドスラムというシステムがあります。先ほど紹介した 6 コースを制覇すると名誉学生として表彰されます。1 つのコースは 1 度しか卒業できないので、6 回卒業するともう入学できないのですが、その代わり入学金も授業料もタダであらゆる授業が受け放題になります。
*2015年にこちらの制度は終わってしまったようです。
放送大学のYouTubeチャンネルにキャンパスガイドや科目、先生の紹介などの動画が上がっているので、見てみるのも面白いかもしれません。地道に勉強しながら学位を取得できるので、興味のある方は良かったら調べてみてください。