「先生、差別問題に取り組むと新しい差別を生みませんか」にこたえる
人権ホームルームなどで差別事象に取り組んだときに
必ずと言っていいほど生徒から上がる声があります。
「教えなければ差別しないのに」という旨の言葉です。
本記事のタイトルにもあるように差別事象を勉強することで
知ってしまい、差別する人を新しくつくりだしてしまうのでは
ないか、と心配してくれているんですね。
色々な事象を予想したり考察したりできる、感度の高くて
頭の良い生徒さんだと思います。
筆者は差別事象を新しく「知っても差別しなければ良い」とも
思うのですが、それでは生徒の疑問にこたえられませんので
そういったことを考える要因とこたえかたについて考えていきます。
この声が上がりやすいのが「被差別地域差別」について取り組んだ
機会になります。
きっとこう思うのでしょう。
「この土地が差別されていることを知らなかった。大昔の人がつくった
差別である。いっそのこと知らなければそんな差別はなくなっていくのに。」
今回先生が知らなかった自分たちに教えてしまったことでまた地域への
差別が伝承されてしまう、と心配してくれているのかと思います。
こういう反応には私はいつも
「予防接種」というキーワードを使います。
その前に…
その生徒が言うようにとある差別事象に対して、一斉に全世界の人々が
口を閉ざして二度と話題にせず記憶から消してしまえばその差別事象を
消し去ることが可能かもしれません。
ただ、それは不可能なんです。人間ですから、何かのきっかけでどうしても
こぼれることがあります。それはその差別事象に全く関係のない不満や
イラだちがきっかけであることもあります。
もう一つ、人間の記憶によらずとも、現在の情報化社会では一度出回った
情報を完全に消し去ることはできないのです。どれだけ頑張って作業しても
どこかに残っている可能性が高いです。ネットの怖いところです。
というわけで、二つの理由により、どうしても一度発生してしまった
差別事象は過去の遺物としてしまい込むことができないのです。
だからこそ、私は「予防接種」をすすめます。
実際の予防接種はとある疾病の原因ウイルスを発症しないように加工して
身体に取り込みます。その身体はそのウイルスの存在のことを知り、
発症しないように免疫を作成します。
このメカニズムを差別事象にも利用するべきだと考えているのです。
差別事象に対して正しい知識を得ることで差別が発症しないようにします。
そうやって免疫をつけておくことで今後何かの際にその差別の場面に
出会ったとき、自分までかからないようにできます。
もっと欲を言うと、
免疫をもった人たちが発症している人たちに正しい知識を伝えることで
症状が軽くなると良いな、と考えます。
人権課題を取り扱うとこたえに困る場面だたくさんありますよね。
今回は「先生、差別問題に取り組むと新しい差別を生みませんか」がテーマでした。
・差別事象は消し去れない
・予防接種(事前の正しい知識)で免疫をつける
この2点で生徒の疑問にこたえてください。
文責:choi