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柴田勝家の井戸茶碗 根津美術館【隈研吾1】 東京都港区


東京都港区青山という都内でも屈指のお洒落さんの集まるエリア。表参道の交差点から明治神宮とは反対側に進んで行くと、このミュージアムにたどりつきます。このあたりは高級車率が高く、ランボのアヴェンタドールが路上駐車されていたりして、運転するには少し緊張する通りです。根津美術館と同じ並びには、かつて超高級スポーツカー・ブガッティのショールームがあって、ヴェイロンやシロンといったもはや工芸品と呼べる超絶スーパーカーが展示され、ウィンドウ越しに見物出来ました。しかし根津美術館はそんな華やかなエリアからは隔絶されたかのように、静寂な空間を作り上げているミュージアムです。



こちら側から入った事はほぼない

根津美術館とは


山梨県出身で鉄道王と呼ばれ東武鉄道の初代社長を務めた初代根津嘉一郎ねづ かいちろう(1860-1940)。根津美術館は初代の蒐集した美術品を展示するための美術館として、2代目根津嘉一郎(1913-2002)が財団を設立し1941年に開館。太平洋戦争で罹災しますが1954年に今井兼次内藤多仲(タワーの人:作品に東京タワー、通天閣、名古屋テレビ塔、別府タワー等)設計による本館が再建。2009年には隈研吾設計による本館が完成し、リニューアルオープン。現在のカタチに。
国宝7件、重要文化財88件を含むおよそ7600件(2021年時点)を数える美術品を所蔵。

東京都港区南青山6-5-1


何だかスゴイ人 初代根津嘉一郎
〇〇幕府の初代将軍的な
根津美術館のあるあるアングル

庭園には茶室あり 門に付属するのは光悦垣(風)

池に船を浮かべるのは超富裕層のお約束?

「燕子花」は必須

隣のマンションから見えるのはどんな景色?
もはや森か。

パンフの木々も成長してます
2016年版(上)と2022年版(下)


さて現行の展示室を設計したのは先述の隈研吾くま けんご(1954 - )さん。ルーバーの人。2020東京オリンピックのために建て直された現国立競技場の設計で知られています。建築界の大御所的な立ち位置の1人。ミュージアム系や商業施設等多くの作品がメディアで取り上げられています。SNS映えするのがポイントでしょうか。とにかく「隈研吾設計」の建築は多い。

作品として
M2ビル(東京都世田谷区)、那須歴史探訪館(栃木県那須郡那須町)
那珂川町馬頭広重美術館(栃木県那須郡那賀川町)
石の美術館(栃木県那須郡那須町)、長崎県美術館(長崎県長崎市)
登米懐古館(宮城県登米市)、竹田歴史文化館(大分県竹田市)
廣澤美術館(茨城県筑西市) 他多数

とにかくカッコ悪いM2ビル(現東京メモリードホール:左上)
少しルーバーな長崎県立美術館(右上)
上から見ると007敵役の秘密基地のような廣澤美術館(右下)
何から何まで石造り 石の美術館(左下)
ちょっとデジャヴな那須歴史探訪館(左上)実は根津美より古い
登米懐古館(右上)登米伊達氏ではなく白石氏と呼びたい
かなりデジャヴな馬頭広重美術館(右下)こちらも根津美より古い
かなりデジャヴその2な竹田歴史文化館(左下)




青井戸茶碗 銘 柴田


初めて根津美術館に足を運んだのは、随分と昔の話で現行の建物のリニューアル前。駐車場の位置は変わっていませんが、現在の受付部分はまだなく、玉砂利の道をザクザク音をたてながら進み、現在の事務棟あたりから入館していたと記憶しています。庭園はタダで見れそうな配置でした。展示室は現在の大倉集古館(東京都港区)のような昭和な雰囲気でした。
特別展とか常設展とかワケも分からず、もちろん根津美術館がどういう所かもよく知らず、ただひとつの茶碗を目当てに。
それは柴田勝家しばた かついえ (1522?- 1583)所持と伝わる青井戸茶碗「銘 柴田」。勝家は織田信長の重臣。信長が本能寺での横死後に、信長の妹・市姫と再婚。その後の織田家中での権力争いで、羽柴秀吉に敗北し福井・北ノ庄城で自刃。青井戸茶碗は信長から下賜されたと。

美術館に行ってみると奇跡的に「柴田」は展示されていた。
「枯れた」とか「寂び」とはこういうモノなのか!と何となくわかった気分になった(多分まだよく分かっていない)。

根津美術館では茶道具にスポットを当てた展示が年に1回は開催されているので、その後も何度か「柴田」を見る機会がありました。その中でも印象的なモノは、

井戸茶碗展 根津美術館 チラシ
2013年11月-2013年12月
メインは大井戸茶碗「喜左衛門」 大徳寺弧篷庵蔵


「井戸茶碗」 図録
発行・編集:根津美術館 2013年 171ページ
左下が柴田井戸 根津美術館蔵
ちなみに右上は井戸茶碗「有楽」東京国立博物館蔵
右下は小井戸茶碗「六地蔵」泉屋博古館分館蔵

こちらは掲載全てが井戸茶碗という図録。解説には茶碗によっては内箱や外箱のフタ(表や裏)に記された銘なども記載。銘の書体が見ていて面白い。そして「井戸茶碗」一色という何とも変態的なチョイスが良い。

かつて2代目嘉一郎が叙勲の記念に、高松宮様へ「柴田」でお茶を点てたそうです。2代目嘉一郎は茶道遠州流の門人で「名品でお茶を喫むというのも文化の理解に大切だ」と言われたらしい。美術品を高額で手に入れても、どこかにしまい込んで値上がりを待つ的な話を聞きます。道具は使ってこそとは思いますが、イザとなるとどうでしょうか。

「柴田」から開いた根津美術館のトビラですが、尾形光琳や牧谿にも出会いそこから世界がどんどん広がっています。ただし時間と路銀には天井があるのが悩みどころです。


つづく



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