『中学生から知りたいパレスチナのこと』ミシマ社発刊テーマ 『あらゆる人が戦争と自分を結びつけ、歴史に出会い直すために』岡真理さん×小山哲さんによるトークイベント報告レポート
岡先生から、「イスラエルは入植者 植民地主義によって建国され、ユダヤ人至上主義体制を維持するためにアパルトヘイトを敷いている。今ガザで起きていることは、国家に対して民族浄化され、アパルトヘイトの体制下で抑圧される先住民が、解放を求めて抵抗している脱植民地化の闘いである。それはベトナム戦争におけるテト攻勢と同じなのだと。 ハマスは、テロではなく、これまでされてきた〝ジェノサイド〟への抵抗なのだ」
そして、「イスラエルによるガザの〝ジェノサイド〟とその陰でヨルダン川西岸地区で進行するすさまじい民族浄化の暴力について批判するとき、この日本という国が、かつて中国で、朝鮮で、台湾で脱植民地化のために戦う者たちをすさまじい暴力で殲滅してきたという歴史的な事実に対する批判なしに、イスラエルを批判することはできない」と続けられた。
「満州は、日本が、入植者植民地主義で、そこにいる人たちを駆逐して作った国だと。国家ではないが、アイヌモシリもそうである。ラファイル・レムキンの『ジェノサイド』を、日本も行ってきたのである。そういう意味で、イスラエルと日本は、鏡に映った似姿同士である」と訴えるように話された。
本書の「ガザを見た時、日本は自国の植民地主義を想起できているか?」の章を読んで、松下竜一さんの書かれた「狼煙を見よ」が浮かんだ。
私は、東アジア反日武装戦線のことを仰天ニュースという番組で、単なるテロとして、紹介されたことに、ショックをうけた。東アジア反日武装戦線の彼らは、最も苦しんでいる人々の側から思考すること、戦時中の侵略、強制連行、虐殺、日本軍が犯してしまったアジアの人々の側から思考すること、そしてその帰結として生まれた<反日思想>の核心。
彼らの起こした罪を軽視しているのではない。彼らが何のためにその行為に至ったのか? 背景に何があったのか) このような日本の加害の歴史も知らなければ、ガザの人たちに思いを馳せることもできないのではないか。下記noteにその思いを書いた。
https://note.com/ryushokanbook/n/n5f47d4e22dc9?magazine_key=m284ecd615b90
日本は、他にも、過去に、北海道や沖縄に入植し、アイヌ民族や、琉球民族の言葉を奪い、文化を奪った。先日、沖縄から目取真俊さんにお越しいただいた時に、これらの加害の歴史や、日本軍がしたことを載せない教科書に怒りを訴えておられた。
岡先生も「90年代にはすべての教科書に「従軍慰安婦」が記述されていたが、今年、載せた教科書は、一つしかない」と言われた。
小山哲先生のお話で印象に残っていることは、「〝アウシュビッツ〟は、絶滅収容所の機能と、強制労働の収容所を併せ持つところだった」労働させたことで、生存者が残り、証言した人が沢山いる。だから後世に伝えられているのだが、他の収容所(トレブリンカなど)は、絶滅させる収容所しかなかったから伝えられることすらできない。
本屋ということで、気になったことは、イスラエルにあった「ポーランド書店E.ノイシュタイン」のことだった。その本屋のことについてお聞きした。
イスラエルの母国語となるヘブライ語ではなく、なぜポーランド語の書店がなぜ存在したのか?
イスラエル建国当初は、かなりの割合が中東欧出身者で占められており、ポーランド語を母語にする人を市場としてポーランドから移住して書店をしても十分に経営が成り立つ環境だったと小山先生が話された。
歴代首相は、ほとんどが、ポーランドを含む東欧出身の人間だと岡先生が補足された。
小山先生には、ポーランドの今の政府について、どのような教育をしているのか?事前に質問をお渡ししていた。資料を準備して下さっていた。
【ポ-ランドの大学とパレスチナ問題】
2024年5月
ヤギュウ大学の学生グル-プ「パレスチナのためのアカデミア」が、学長に声明書を提出した。これに対してJ・ポピェル学長「民間人、とりわけ子ども、避難民、病人、高齢者が直接の犠牲となるすべての事態に断固として反対」停戦を支持すると表明、
10月2日 ヤギュウォ大学、学生グル-プと学長の間で合意が成立
【合意の内容】
・イスラエルの軍事力の増強や、人権を侵害する行為に利用されうるような研究分野における協力を行わない。
・人権侵害を推し進めるイスラエルの学術組織との協力を行なわない
・占領に加担し人権侵害を促進したイスラエルの学術組織との協力関係について検証する特別委員会を設置する。この委員会には「パレスチナのためのアカデミア」の学生たちも参加し、現状の協力関係を見直すための土台となる報告書を作成する。
この合意の内容には、聞いていて感動し、心が震えた。学生がすごい!!
小山先生が本書に書かれていた。「敵は制度、味方はすべての人間」という埴谷雄高の言葉について質問があった。
岡先生は、「敵は制度、味方はすべての人間」について、「シオニストにされた彼らも制度による被害者で、小さいころから教育で、洗脳されていったから起こった」と話された。
以前、イベントでお越しいただいたイスラエル軍、元兵士のダニーさんの言葉を思い出した。「18歳からは、全国民が徴兵制度で、軍隊に入り、何かあった時に国のために闘うのは当たり前という教育。アウシュビッツにも修学旅行で行くが、悲劇を二度と繰り返さないために軍事力は大切だと思い込ませる。とにかく平和のためには教育が大事なんだ」といわれていた。
小山先生は、ポーランドの教育について話して下さった。
「最近のこととして、M・トリチクの本で、ユダヤ人虐殺はポグロム(ユダヤ人に対して行われる集団迫害行為)の町とされる—イェドヴァブネ(1941年7月にユダヤ人虐殺が起こったポーランド北東部の町)だけで起こったのではないことが証明されつつある。そして、虐殺を積極的に主導してきたのは、貧しく教育を受けていない人たちではなく、むしろ、戦前に民族主義的な運動をしていた人たち、高度な教育を受けていた人たちが関わっていたことがわかってきた。戦前の民族主義的な運動をしてきた人達の系図と、昨年年末まで、政権を握っていた極右政党『法と正義』の考え方が似ているので、今後ポーランドは政治的な関係にも影響を及ぼすかもしれない。
右傾化する国家での高度な教育を受けることで、ハードな民族主義や、差別主義に入っていく場合もある。大きな問題だ。近現代史の解明すべき問題だ」と話された。
岡先生は、イランの映画監督モッセ・マフマロバフに教育について取材した時に、「あの当時のナチスは、最も教育水準が高かった。けれども、あのような蛮行をした」と言われたそうだ。
ポーランド史の専門家の小山先生とパレスチナ専門家の岡先生にお越しいただいたおかげで、ポーランドと、イスラエルの関係が、浮き彫りになった。また、先生方のお話をお聞きして、「教育」がいかに大事なカギを握っているか、改めて感じさせられた。
今回のテーマは、非常に難しく答えの出せない迷路に入っていくように感じた。2時間の予定が、1時間近く延長した。岡先生と小山先生の熱いメッセージを、すべてを書くことができないので、ご興味のある方は、「中学生から知りたい、パレスチナ」発刊イベント岡真理さん×小山哲さんのアーカイブ動画配信にお申込み下さい。
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