「今、ひとりの書店主として、伝えたいこと」を、勇気を振り絞って書いてから、その後に起こったことを書きました。
今年の夏、親しくさせていただいていた書店さんが次々に店を閉められた、当店も日々の厳しさは例外ではなく、明日は我が身と、そのショックをまだ引きずっていたころ、「ブックライナー事件」が起こった。9月中頃だった。
その時、いたたまれず書いたのが「今、ひとりの書店主として、伝えたいこと」だ。
https://note.com/ryushokanbook/n/ne1956cb7164a
取次のブックライナーというシステムのことについて、小さな本屋の置かれた厳しい現状を誰かにわかってもらいたいという一心で筆を執った。
誤解の無いように書いておくが、ブックライナーというシステムが悪いのではない。
多国籍企業であるアマゾンに対抗して、中2日で届くシステムの構築は素晴らしい。
肝心なのは、その中身なのだ。構築の際、既存の書店の客注品を最優先するという約束を反故にし、書店から8%もマージンを取るブックライナーにしか在庫を持たないことに憤りを感じているのだ。
その後のことについて
発売初日、今回ブックライナーにしか在庫が無かった、「京極夏彦の新刊【ヌエ】の碑」を出された講談社の営業の方から、「note」を何度も読まれたとのことで、すぐに連絡があった。
通常在庫を持たず、ブックライナーにしか在庫を持たない取次に対して、憤りを感じていたのだが、版元さんが、謝罪のメールを下さったのだ。恐縮に感じた。
そこには、こう書かれていた。
Kさん:「noteの記事、何度も読みました。京極さんの件で大変な想いをされていたとの事。エリアを担当する者として、情報共有の仕方など含めて改善します。17年ぶりの新刊を待っていた京極さんファンの方々の熱さをこれほどまでと考えていませんでした。二村さんの想いを少しでも近づけるよう版元営業として考え、改善していきます。イベントなどで引き続きお世話になりますが、何卒よろしくお願い申し上げます。」
「Kさん、メッセージ、ありがとうございます。講談社さん、特に、Kさんには、良くしていただいています。今回の件は、取次の問題なのです。
発売日の午前中だけでも、取次は、通常在庫として、商品を持つべきだと考えています。
発売日の朝一番から、ブックライナーにしか、在庫がない。というのは、実質、8%の値上げと同じです。noteにも書きましたが、今回が、初めてではありません。ブックライナー立ち上げの際の約束からも、発売日だけでも、通常在庫を持つなどのルールが必要だと思います。」
Kさん:「わざわざお忙しい中メッセージすみません。これから出版社がどのように書店を応援すればいいのかを今まで以上に考え、改善していきます。この件に関わらず事前の情報共有は大切だと考えていますので、色々とメールにはなりますが情報を発信いたします。」という励みになるメッセージをいただいた。
また、集英社のMさんは、イベントの打ち合わせのためにお立ち寄り下さったが、やはりnoteを見て頂いていたようで、第一声、「当社の本が遅れて申し訳ありません」と言って下さったのだ。
主婦と生活社のIさんからは、メールで、「ブックライナーの手数料を、書店から8%も取っているとは知らなかった。販売部、各編集長にも共有させていただきます。」とのことだった。
受験研究社のOさんは、日販の一方的なシステムについても教えて下さった。 そしてなんとスイミーの絵本も買って下さったのだった。
書店さんのラインにも
「取次も色々大変なのはわかりますが、本を世の中に提供していくリアル書店をもう少し大切にして欲しいですね。」
「今回の記事を読み、憤りと哀しみでいっぱいです。書店員になる前は、製造業で事務職をしていました。なので、出版・書店業界の独特な仕組みや流通にはずっと疑問がずっとあります。昨今の業界全体としての苦しい状況と出版文化を考えると、ここらあたりで大きく変わらないと存続は難しいのかな?と思い始めています。」
12月1日 には、平凡社、創元社、法蔵館、春秋社の方々が、わざわざ書店訪問で、お越しくださった。
そこで教えていただいたのが、ブックライナーは、出版社からもマージンを取っていて、しかも、年度を超す時には、更新料まで取られているという。
取次さんで、働いておられる方々の中には、マンパワーで、尽力して下さっている方もおられる。けれどもこの仕組みのままでは、書店の廃業を止めることはできない。すでに、書店は立ち行かないところまで来ている。
取次だけが、版元からも、書店からもマージンを取るシステム、
Kさんのメールにも書いたが、せめて、発売日の午前中だけでも、8%マージンを取るブックライナーではなく、通常在庫として、持つというふうにできないのだろうか?システム構築当時の約束は、「通常在庫を抱える桶川の倉庫に充分に在庫を持つ」ということだった。
先代たちとの約束は反故にされていいのだろうか?やはりそんなはずはない。
今回、沢山の出版社の方々からご連絡をいただいた。そして本屋を愛する方々からも信じられないぐらいnoteへの「いいね!」を頂戴し、また応援メッセージをいただいた。本屋に直接来てくださった方もあった。インターネットテレビへのオファーもあった。
取次さんを、恐れつつも、勇気を振り絞って書いたことで、どれだけの励ましをいただけたかはかり知れない。この場をお借りしてお礼を伝えさせてください。本当にありがとうございました。
街の本屋として今年は、なんとか生き延びることができたが、予断を許さない厳しい状況だ。
それでも、決して、ただ売れればいいという商業主義に流されたくない。先代の意志を今一度かみしめる。「文化として作家を支え、読者が、出版を育てる。この仲介者が書店だと考えている。手に取る本を未来あるものにしたい。」ということが望みだ。
ありがたいことに、専門的な知識を持つお客様から「こんな本があるよ」と、良書を教えていただくことも多い。日常で学びながら、そんな本も揃えていきたいと思っている。
最後に、応援メッセ-ジを下さった皆さま、
本当にありがとうございました。
本と本屋を大切に思って下さる方々の思いに応えられるように続けていきたいと思っておりますので、これからも、どうか見守っていただけますようお願い致します。
隆祥館書店 二村知子
https://ryushokanbook.com