佐々涼子さんが、鬼籍に入られました。佐々さんとのメ-ルのやりとりを見ては、当時を思い出し、涙が出て来ます。追悼したい。けれど、この思いをどのように伝えれば良いのかわからなくなり、時系列で書くことにしました。隆祥館書店では、『エンド・オブ・ライフ』という本を上梓された年、2020年の8月22日に、イベントを開催しました。コロナ禍ということもありオンラインのみでのイベントでした。
※佐々涼子さんのメッセ-ジにつきましては、ご家族の承諾を得て掲載しております。
実は、2月に発売されて読みたいと思いながらも、日々の仕事に追われて積読になってしまっていたのでした。
けれども7月22.23日の連休に、『エンド・オブ・ライフ』を読んで感動し、すぐにその思いを佐々さんに、伝えたのでした。
【2020年7月23日のメールより】
「佐々涼子様 大変ご無沙汰しております。 隆祥館書店の二村知子です。
以前、大阪トーハンの新年会で、ご挨拶させていただきました。
ノンフィクションが、大好きで、以前から読みたかったエンド・オブ・ライフ拝読することができました。素晴らしい作品でした。隆祥館書店は、ノンフィクションの好きなお客様が多く、介護で、悩んでおられる方や、真実に感動できる本を求めておられる沢山の方々に、お薦めしたくなりました。
私自身、5年前に、両親の介護をしなければならなかったのですが、父よりも、全ての面でしっかりしていた母が、血流性の認知症になり、壊れていった時のこと、また、病院に入院していた時のことなど、まるで自分のことを読んでいるように、感じるページもありました。
それぞれのエピソードの情景がうかび、ドキュメンタリー映画を見ているような気持ちになりました。こんなふうに命を閉じたいと思う閉じ方もあれば、こんなふうにだけは、なりたくないと考えさせられる閉じ方もあり、まさにエンド・オブ・ライフについて教えていただきました。ありがとうございました。
このような、救いとも感じる大作を書いて下さり感謝しかありません。
当店では、コロナウィルスの影響もあり、最近は、リモートイベントを開催しております。
お忙しいところ恐縮ですが、リモートイベントに、ご登場いただきたくお願いのメールをさせていただきました。
もし、宜しければご検討いただけましたら幸いです。
どうぞ宜しくお願い致します。 隆祥館書店 二村知子 」
【2020年7月30日のメールより】
「佐々さん おはようございます。編集の田中伊織さんから、資料をいただき、佐々さんのイベントのポスター・チラシのデザインができました。
今日は、当店の8/1のイベントの告知を兼ねて、ラジオで、夏のお薦め本のご紹介3冊のオファーをいただけたので、今、私の中で、一押しの「エンド・オブ・ライフ」の本の紹介も、しました。『おはようパーソナリティ道上洋三です!』です。もし、お時間許せば、radikoで、お聴き下さいね。 隆祥館書店 二村知子 」
拙い表現で、お恥ずかしいのですが、ひとりでも、多くの方々に、読んでもらいたい一心で、一生懸命に伝えました。
両親の介護を体験した私は、国の医療体制についても疑問を持ち、この本の必要性を大きく感じていました。ですので、毎日肉声で、お一人お一人に、お薦めして、毎日10冊ぐらい「エンド・オブ・ライフ」を販売していました。8月7日に70冊入荷するも砂漠に注いだ水のように消えていきました。
【8月22日、佐々涼子さんによるイベント】
佐々さんは、イベントのお知らせをするたびに、リツイートして下さり、何事にも一生懸命な姿勢をリスペクトし感謝していました。
イベントのために事前に、用意していた質問に対して、佐々涼子さんからのお返事は下記のものでした。
佐々涼子「こんばんは。ありがとうございます。拝受しました。考えをまとめておきます!
私が最後にみなさんにお話したいことは、死について日頃からコミュニケーションをしておくことの重要さと、血縁に頼らないコミュニティづくりについてです。二村さんのこのような取り組みはピッタリじゃないでしょうか。宗教のコミュニティではこういう時間を取ることがありますが、もっとフラットな講座がいろいろ開かれるといいですね。そんな話をしてみたいと思います。どうぞよろしくお願いいたします。」
【イベントの後の参加者の感想をお伝えする】
「佐々さん いつも親切にしていただきありがとうございます。
昨日、イベントに参加してくださった方から、素晴らしいイベントだったと、感想をいただきました。また、佐々さんは、お話するのが、苦手だと仰っていたが、とっても、良かった、むしろお上手だったと、感想をいただき、もう一度佐々さんでと、リクエストをいただきました。そして、つい今しがた、セブンルールをご覧になった方(静岡県)から、佐々さんのイベントは、もう、されないのですか?との、またまた、リクエストのお電話がありました。
入院を前に、申し訳ありません。ただ、佐々さんの本で、感動された方々が、いかに沢山おられるか。お伝えしたくて…。これからも、この輪は、ますます広がると思います。広げたいと思っています。」
【佐々涼子さんからのお返事】
「こんにちは!いやー、ありがとうございます。しどろもどろなのにお優しい方が多くて。。
再度のリクエストも嬉しいです。ぜんぶ二村さんのリードのおかげです!
イベントなどリクエストがありましたら、いつでもお呼びください😊取材でお世話になった在宅の女医さんも交えて鼎談にしていただけると、もっと専門的なお話ができるかもしれません。今後ともどうぞよろしくお願いいたします。」
二村「佐々さん 有難うございます! おかげさまで、今朝まで、お薦めすることができました。お薦めしながら、いつも泣きそうになりますが、ご購入いただけます。
8月、ダントツの一位です。135冊販売しました。」
隆祥館書店では、最終的に、「675冊」販売 (編集の田中伊織さん曰く、日本一)しましたが、この頃、タイトルが暗いからと、全国の本屋では売れなくて、いわゆる市場在庫が沢山あるから、重版できない状況にありました。
そのため、隆祥館書店では売れるのに、本が入ってこないそんな状況でした。
【セブンルール 9月1日オンエアの後、佐々涼子さんからのメール】
佐々涼子 「夜分すみません、どうしてもお礼を申し上げたくて。店頭で拙著を勧めていただいているのを拝見して胸が熱くなりました。実は本日、新潮ドキュメント賞を逃して、自分でも意外なほど落ち込んでいました。でも、私にとっては二村さんにお薦めしていただいているのを拝見して、賞よりずっと嬉しかったです。森山さんにも、母にも顔向けできます。7年分のご褒美をありがとうございました!おやすみなさい。」
二村「思い起こせば、7月22日、エンド・オブ・ライフ読了後、湧き上がる感動を、抑え切れなくなり、すぐに連絡させていただき、その日から毎日店頭でのお薦めが始まりました。1ヶ月で、100冊以上販売しました。
その後、9/1のセブンルールでも取り上げられ、全国の読者に火がつきました。
佐々さんのご協力もあり、おかげ様で1ヶ月半で、156冊ご購入いただけました。
本が切れてなかったら、もっと売り伸ばせていたと思います。
今は、また、切れてしまって、お薦めすることもできず、セブンルールを見て、わざわざ隆祥館書店まで、買いに来て下さった方にもお渡し出来ない日が続いています。
昨夜、田中伊織さんに、状況をお伝えして、10/1重版分を1日でも早く入れていただけるように、お願いしました。」
11月
【本屋大賞ノンフイクション大賞受賞】
二村「佐々さん、本当に有り難うございます❣️今回は、まるで、自分のことのように、嬉しかったです。毎日、毎日、佐々さんからのバトンを、お客様に渡さなければと言う使命感で、いっぱいでした。それほど、惚れ込んだ本でした。今も、一万円選書に、そして店頭でお薦めしています。笑
読んでいただきさえすれば、理解していただける本ですが、最初は、先入観で、暗い本だと思われるので、まずは、読んでみて下さい。とのお声掛けからでした。
本当に良かったです。
隆祥館書店のイベントに、参加して下さったお客様からも、喜びの声が届いています。
落ち着かれたら、田中さんと、佐々さんと、乾杯したいぐらいです!
これからも頑張って下さいね!ありがとうございます😊」
【佐々涼子さんからのお返事】
「暗そうで読んでもらえなかったのが悩みでした。なので二村さんにお薦めしていただけたのが、私たちにとっての希望でした。
読んでもらえればきっと評価してくれるはずだ、と田中伊織さんが確信を持ったのもその頃だったと思います。
本当にありがとうございます!いつかお目にかかりたいです。これからもよろしくお願いします🙏陰ながら応援しています。」
この後、2022年11月25日に「ボーダー 移民と難民」を上梓され、12月1日に、隆祥館書店にお越し下さることになっていました。
「ボーダー」も素晴らしい作品で、制作に関わられている、児玉晃一弁護士と佐々涼子さんとの三人でイベントも考えていました。
ところが、前日に、編集の田中さんから連絡が入り、佐々さんが頭痛を訴えられて、病院で検査されることになったとのことでした。
しばらくして、12月中旬に悪性の脳腫瘍であるという連絡をいただいたのでした。
ショックでした。
佐々さんのために私たちに何かできることはないのか?懸命に考えました。
イベントに参加して下さった内山猛雄さんからは、佐々さんにお送りするようにと、香りで癒されるハーブや、自然のエキスをいただきました。
そこからは、佐々涼子さんを応援するツイッタ-部隊を作り、佐々さんの本をご購入下さるお客様すべての同意を得てメッセ-ジと共に「佐々涼子さんを応援します!!」とのプラカ-ドでの発信を続けてきました。
佐々さんは、その都度ツイッタ-で、感激の言葉を発信して下さっていたので、私たちも購入して下さるお客様のメッセ-ジと共にプラカ-ドを上げて応援していました。
2023年10月18日
佐々涼子「二村さん、ご無沙汰しております!
私はなんとか生きています。死ぬまでにしたい20のこと、のリストに入れていて、せめて、一度はお会いできたら、本当に嬉しいです。
体調も考えて過ごさねばならないので、また近々ご連絡いたします。
なんとかお会いしたいです。ご恩返しできたら、こんなに嬉しいことはありません。
よろしくお願いいたします。」
佐々さんの書かれるノンフィクションは、ご自身の感情も赤裸々に書かれています。そのため、感情移入しやすく、まるで映像がでてくるような感じで、自然に読めるのです。読み手への心遣いもあるのかも知れません。ただ淡々と事実を伝えるのではなく、感情が入ることで、その人間の息づかいが聞こえてくるのです。まぎれも無い事実を記したノンフィクションなのにまるで精緻な小説のように。
そこには、佐々涼子さんの取材力があるような気がします。相手を気遣いながら丁寧に何年もかけて取材し、自分の血や肉になるまで知り尽くしてこその表現、
取材対象の人に対する愛と同時に、ストイックさを感じます。誰にでも理解できるように描いて下さる佐々さんの作品、これは、私にとっては、唯一無二のものでした。
親しくなっていくうちに、隆祥館書店のような小さな書店のことにも心を寄せて下さるようになりました。決して、今だけ、自分だけの方ではないのです。
佐々さんが、「エンド・オブ・ライフ」関連の取材で、書かれていた言葉です。
「人の命は、一直線にあって消えてしまうのではなく、回っていくものなのではないか。肉体がなくなることと、人が死ぬということは、また別のものなのではないか。森山さんの肉体はもうないけど、彼の精神は生きている。命を懸けて伝えてくれたことが、誰かの人生に影響を与えている。それは希望だ、ということを教えてもらったような気がしています。」
佐々さんは、常に人生に対して全力で挑んでおられたのではないか。
それこそ、その命が燃え尽きるまで。
だからこそ佐々さんの肉体はもうないけれど、彼女の精神は生きている。
佐々さんが、命を懸けて書いてくれた本を、これからも伝えていこう。と誓ったのでした。
隆祥館書店では、佐々涼子さんの本は、常備しています。
佐々涼子さんのお元気だったころの大切なイベントのアーカイブ動画も、
本と共に受け付けしています。
※佐々涼子さんのメッセ-ジにつきましては、ご家族の承諾を得て掲載しております。
佐々涼子さんのトークイベントをぜひ、見せていただきたいとのメ-ルや、ご連絡をいただきました。ご希望の方は、下記からお申込みください。
『佐々涼子さんによるリモート・トークイベント』ア-カイブ配信
テ-マ「命の閉じ方について考える」「エンド・オブ・ライフ」刊行記念
●費用:2500円(内訳:アーカイブ動画1,130円+「エンド・オブ・ライフ」858円+送料及び手数料クリックポスト512円)
(要予約・事前購入制とさせていただきます。申込み順)
*振込先 三井住友銀行上町支店
(普通)1353923
カ)リュウショウカンショテン
お申込み・お問い合わせ 隆祥館書店 TEL:06-6768-1023
住所:大阪市中央区安堂寺町1-3-4 谷町6丁目⑦番出口向かい
*Eメ-ル ryushokan@eos.ocn.ne.jp
隆祥館書店ホームページ
https://ryushokanbook.com
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