Δίας(ディアス)@ギリシャ趣味人

働きながら古代&現代のギリシャについて学んでいます。ギリシア語の解説やギリシア神話・歴史・文化に関する記事を投稿していきたいと思います。(日本ギリシャ協会会員)

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最近の記事

パノス・ムズラキスの名曲: Το Μεγάλο Κανάλι(偉大なるチャンネル) 歌詞和訳

パノス・ムズラキスはギリシャの俳優でもあり、芸術家でもあり、そしてシンガーソングライターでもあります。スイス生まれですが、幼い頃にテッサロニキに移住し、キャリアはアテネからスタート。2007年に発売した初のCD "Μάντεψε Ποιος"を皮切りに継続的に新曲をリリースしており、今では多方面で才能を遺憾なく発揮する優れた現代ギリシャ・アーティストの一人です。 ムズラキスは私が最も好きなアーティストです。国内外全てのアーティストの中で、ムズラキスの歌が一番好きですね。少年

    • 古代ギリシア宗教に地域色はあるのか?:Regionality and Greek Ritual Norms

      古代ギリシア宗教と言えば、ギリシア神話の壮麗な物語よりも何よりもまず、血生臭い動物犠牲がその中核によく挙げられます。これは過去の記事「Greek and Roman Animal Sacrifice: Ancient Victims, Modern Observers」にも書いた通り、昨今の動物犠牲中心主義の産物でもあるのですが、確かに動物犠牲は、崇拝する神々と直接的なコミュニケーションを取ろうとする点では、重要な祭儀であることに違いはありません。動物犠牲以外では、神官制度や

      • どうすれば幸せになれるのか?:グッド・ライフ―幸せになるのに、遅すぎることはない

        どうすれば幸せになれるのか――この問いは、古代から現代に至るまで、一般市民から哲学者に至るまで、人類を虜にしてきた普遍的な問いです。アリストテレスは人間の目的を「幸福(よく生きること)」だとしましたが、その幸福の内容理解は人によって大きく異なり、富・名誉・快楽を幸福として挙げる者もいると『ニコマコス倫理学』で指摘しています。現代でもそれは変わらず、大金持ち、社会的地位の高い者、自由気ままに快楽に溺れる者を幸せ者だと見なす人は少なくありません。しかし、それは科学的に正しいのでし

        • The Oxford Handbook of Heracles:大英雄ヘラクレスの成り立ち

          ギリシア神話最大の英雄、ヘラクレス。彼はネメアのライオンやレルネのヒュドラといった強力な怪物を討ち滅ぼし、巨人族との戦争ギガントマキアでは、オリュンポスの神々と肩を並べて戦いました。彼の事績や偉業は、古代から現代まで様々な作品のモチーフにされ、ゲームやアニメでも非常に馴染み深い存在です。一方で、ヘラクレスは謎めいた存在でもあります。人間の身でありながら神になった存在でもあり、文明や社会の守護者でありながら、自らの家庭(妻子殺し)や客人を殺戮する伝承もあります。歴史上では、スパ

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        • ペリクレスの葬礼演説 古典ギリシア語解説
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        記事

          2023年を振り返って:美しきギリシャ

          最近すっかりNoteの更新が出来ていませんでしたが、2023年も終わろうとしているので、個人的に今年を振り返ってみようと思います。本年は何から何まで盛り沢山であり、非常に印象的な1年となりました。 遂に解禁!ギリシャ旅行へ! まず何よりも、コロナ禍が一巡したことで今まで封印されていたギリシャ旅行が解禁されたことが一番の収穫と言えるでしょう。一昨年に入籍してからも、コロナのせいで新婚旅行には行けないまま(旅先はギリシャと固く誓っていたので笑)だったので、本当に嬉しい限りです

          2023年を振り返って:美しきギリシャ

          人生を変えたゲームの最新作「ゴッド・オブ・ウォー:ラグナロク」クリア感想

          普段の記事とは少し趣が異なりますが、是非書かせてください…!PS4/PS5向けに発売された超大作「ゴッド・オブ・ウォー:ラグナロク」をクリアした感想となります。 「ゴッド・オブ・ウォー」シリーズは、私の人生を文字通り変えた運命のゲームです。ギリシャ神話の神々をその剛腕で容赦無くねじ伏せていく…その壮大な世界観と演出に当時中学生だった私は心を奪われ、ギリシャ好きの一歩を踏み出すことになりました。就活ではギリシャ好きエピソードの評判が良かったおかげで、第一志望の会社に入社するこ

          人生を変えたゲームの最新作「ゴッド・オブ・ウォー:ラグナロク」クリア感想

          【読書感想】教養としてのラテン語の授業: 古代ローマに学ぶリベラルアーツの源流

          基本的にはギリシア語が最優先ですが、私は細々とラテン語も勉強しています。一時期はウェルギリウスの『アエネーイス』をラテン語で読もうとしていましたが、いまいちモチベーションを維持できず頓挫…。今では"Latin via Ovid"、あるいは『ラテン語を読む:キケロ―, スキーピオーの夢』でたまにラテン語に触れる程度になっています。 ギリシア語の学習は、研究会に参加し始める前でさえ習慣化できていたのに、ラテン語の学習はなかなか続かないんですよねぇ。まぁ、ラテン語をやらねばならぬ

          【読書感想】教養としてのラテン語の授業: 古代ローマに学ぶリベラルアーツの源流

          【読書感想】Greek and Roman Animal Sacrifice: Ancient Victims, Modern Observers

          最近は研究会準備や論文購読にかまけてnote更新を怠っていましたが…、読み終わった本の感想を久しぶりに書きたいと思います。 "Greek and Roman Animal Sacrifice: Ancient Victims, Modern Observers"という動物犠牲に関する論文集についてです。 研究会で碑文を読む機会が多いのもあり、最近は犠牲式や祭儀というような古代ギリシア人の慣習に興味が出てきています。その興味の延長線上で読んでいた論文の出典にあったのが、この本

          【読書感想】Greek and Roman Animal Sacrifice: Ancient Victims, Modern Observers

          ペリクレスの葬礼演説を古典ギリシア語で読んでみた【第19回】

          今回は、2文一気に解説することにします。ペロポネソス戦争という、この演説が為された時期を反映し、スパルタ人へのライバル心を剝き出しにした内容になっていきます。 ペリクレス葬礼演説解説の第1回目はこちら ペリクレス葬礼演説解説の第18回目はこちら 原文(Thuc. 2.39)と翻訳:19~20文目筆者翻訳 戦争に関する訓練においても、次の点の為に、我らは敵対者たち(スパルタ人たち)よりも際立っている。すなわち、我らは開かれたポリスを提供しているのであり、外国人の排斥の故に、

          ペリクレスの葬礼演説を古典ギリシア語で読んでみた【第19回】

          ペリクレスの葬礼演説を古典ギリシア語で読んでみた【第18回】

          2022年も引き続きペリクレス葬礼演説を解説していきたいと思います。今回は、直訳すると少々ややこしい文章に挑みます。 ペリクレス葬礼演説解説の第1回目はこちら ペリクレス葬礼演説解説の第17回目はこちら 原文(Thuc. 2.38)と翻訳:18文目筆者翻訳 ポリスの強大さ故に、あらゆる土地から全てのものが輸入され、この地で生み出された恵みを、他国の人々のものも同様に、身近な楽しみとして、あなた方は自由に享受しているのです。 解説:語彙ἐπεσέρχεται:基本形はἐπ

          ペリクレスの葬礼演説を古典ギリシア語で読んでみた【第18回】

          【読書感想】ゼウスの覇権:反逆のギリシア神話

          ゼウス好きとしては見逃せない著作「ゼウスの覇権:反逆のギリシア神話」を通読し終えました。比較的短期間に読み終えることができたのも、主題が「ゼウス」であるからこそ。God of Warシリーズのラスボスとして立ちはだかるゼウスからギリシア神話へと足を踏み入れた身としては、自らの原点に立ち返る思いでした! 我々には残されなかった「伝説の海」本書では、「イリアス」や「神統記」等の初期ギリシア詩を中心に、本筋から脱線して語られる余談や類例の物語を丁寧に紐解き、その背景に浮かび上がっ

          【読書感想】ゼウスの覇権:反逆のギリシア神話

          2021年を振り返って

          ギリシア独立200周年となる2021年ももうすぐ終わりを迎えますね。コロナさえ無ければ、ギリシア現地で200周年を祝っていたはずなのですが、まぁ仕方がありません。 今回はその2021年という記念すべき年を、超個人的に振り返ってみたいと思います。今年を端的に言えば、コロナ禍で移動制限があったということを差し引いても、生涯を通して記憶するであろう年でした。 2021年に勉強した時間私はStudy Plusというアプリで、勉強時間を逐一記録しています。ここで言う勉強とは、読書時

          ペリクレスの葬礼演説を古典ギリシア語で読んでみた【第17回】

          ギリシア独立200周年である2021年ももうすぐ終わりですね。今年もまたコロナのせいでギリシア旅行は叶いませんでしたが、来年には海外旅行が復活してくれることを願うばかりです。ペリクレスが下記で弁じている通り、現代日本人にも重労働から休息できる場所が必要なのです…! ペリクレス葬礼演説解説の第1回目はこちら ペリクレス葬礼演説解説の第16回目はこちら 原文(Thuc. 2.38)と翻訳:17文目筆者翻訳 そして更には、我らは重労働からさえ休息できる極めて多くの場所を心に与え

          ペリクレスの葬礼演説を古典ギリシア語で読んでみた【第17回】

          ペリクレスの葬礼演説を古典ギリシア語で読んでみた【第16回】

          法の優位とも取れる言説が、ペリクレスの口から語られます。法の優位とも取れる制度がアテナイに設置されるのは紀元前4世紀頃(νομοθέταιの創設により、民会決議に対する既存法の優位性が確立)ではありますが、この頃から既にその理念自体はある程度浸透していたということでしょう。 ペリクレス葬礼演説解説の第1回目はこちら ペリクレス葬礼演説解説の第15回目はこちら 原文(Thuc. 2.37)と翻訳:16文目 ἀνεπαχθῶς δὲ τὰ ἴδια προσομιλοῦντε

          ペリクレスの葬礼演説を古典ギリシア語で読んでみた【第16回】

          ペリクレスの葬礼演説を古典ギリシア語で読んでみた【第15回】

          今回は民主政下における市民の行動に光を当てていますね。欧米の基調となっている個人主義の原点を感じさせます。 ペリクレス葬礼演説解説の第1回目はこちら ペリクレス葬礼演説解説の第14回目はこちら 原文(Thuc. 2.37)と翻訳:15文目 ἐλευθέρως δὲ τά τε πρὸς τὸ κοινὸν πολιτεύομεν καὶ ἐς τὴν πρὸς ἀλλήλους τῶν καθ᾽ ἡμέραν ἐπιτηδευμάτων ὑποψίαν, οὐ δι᾽ ὀ

          ペリクレスの葬礼演説を古典ギリシア語で読んでみた【第15回】

          ペリクレスの葬礼演説を古典ギリシア語で読んでみた【第14回】

          民主政の父ペリクレスは、民主政の理想をどのように語ったのでしょうか。今回の長めの一文では、世界史上初めて現出した民主主義の理念の一部が力強く表現されています。衆院選の真っ只中、初心(?)に帰って、産声を上げたばかりの古代民主政に想いを馳せるのも良いかもしれません。 ちなみに、本記事の写真は民主政発祥の地プニュクスに建てられた演説台の遺構です。 ペリクレス葬礼演説解説の第1回目はこちら ペリクレス葬礼演説解説の第13回目はこちら 原文(Thuc. 2.37)と翻訳:14文目

          ペリクレスの葬礼演説を古典ギリシア語で読んでみた【第14回】