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【詩】寸劇

呼吸すら許さぬほどの静寂の内で 
―宇宙が目覚める。

 泣きたい時に限って泣けなくて
死にたい時に限って死ねなくて
 生きているから苦しくて
 けれども、時々楽しいことがあるから、
  のうのうと生き延びているあたしを
無残に喰い尽くした一匹の獣が
  車裂きの刑に処されて 息絶えた

 内側から壊れていくものは 
 何も、花瓶だけではない

あたしは、真っ黒な夜だ。

 真っ黒で、何も見えない、
 目玉を失った烏みたいに真っ黒な夜だ

確信なき悪意に切り裂かれた羽を抱く 
側溝に落ちた煙草の吸殻みたいに無様な夜だ

 あふれだす感情に
 一つ一つ名前を付けていったら

最後まで残ったのは、そんな私を構成する
 病名の書かれたカルテとレッテル

磔のキリストは学ランを着て
ぼそりと、つぶやいた。
             
   ―本当に、先生は、いい人でした。

逆さまの契りを結んだのは赤子と胎盤だった
目覚めの声が悲しみに満ちて 
砲弾が砕け散った破片が
    むき出しのマリアの肺に刺さる  
    彼女は涙すら流さない

 粉塵吸って夏を吐く  
 汗でぐしゃぐしゃに汚れた私を
 貫いた鉄の塊が罪を産む  
            罪は白痴の宿り子

 致死量の幸福で 君の手のひら埋め尽くす
 私をどうか 赦してください

  幸せは 罪なのです


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