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Photo by
shiroyukimin
勝手
男はいつも誰かと一緒にいても、どこか満足していなかった。相手の帽子の色、話している話題、背丈、笑った顔から朗らかになるまでの間、どれもこれも些細なものであった。それらが彼らの関係に直接影響を及ぼすことはなかったが、男は考えるようになっていた。
「俺は満足するのだろうか」
それは帰宅の途中によく思うものだったし、彼自身そのように思ったことを恥じた。そんなの独りよがりの夢想ではあるまいか。きっと、自分の強いこだわりはないところは折って、相手との関係を円滑に進める。それが関係を構築することであり、誰かと一緒にいることではないか。そんなこと分かっていたが、男はどこか諦めきれなかった。しかし、またすぐ経つとそんな考えを持つことは独りよがりの自分勝手な関係ではあるまいか、と思うようになっていた。