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留年前夜のひとコマ

丁度親に留年が発覚する9時間前、僕はこの文章を書いている。

前から分かっていた留年、それを遂に親が知る所になる前日、いつものように日常を過ごした後僕は歌を歌いに出かけた。

静岡県某M駅にて、路上ライブを始めた。
23時から歌い始めた。人通りの少しまばらな時間帯を狙った。
僕の路上ライブは何を売るとかではなく、言わばオナニーだ。酒を片手に気持ち良〜く歌って全て忘れてしまおう。

少しでも現実から逃げる為に僕は好きな曲を歌った。

歌を歌っていると、最初にある青年が僕の前のベンチに座った。
青年は何も言わず、1曲聴き終えると「頑張ってください!」と言ってその場を去った。

次に来たのは、隣町からM駅を使用する為に帰ってきたマダムだ。
彼女には僕と同い年くらいの息子がいるという。
留年の事を言うとちゃんと叱られた。そりゃそうだ。
ユニコーンの「ヒゲとボイン」をやったら一番好きな曲だったらしくかなり喜んでくれた。



続いて来たのは酔っ払いのオジさん3人組だった。
マダムと僕が知り合いだと思っていたらしいのだが、そうじゃないとわかって笑ってくれた。
一緒に何曲か歌った。

彼らのリクエストに答え、サザンオールスターズの「希望の轍」を歌っていると、オジさんの盛り上げも手伝ってみるみるうちに人が集まってきた。
7、8人が足を止めてくれたのだ。

嬉しかった。
ありがたい事におひねりも沢山貰った。

こんなに沢山の人に求められることは久しぶりだった。高校生の時に組んでいたバンドで学年の色んな人が認知してくれて曲を歌ってくれた時以来だった。

その中のミスチル好きなお兄さんのリクエストに答えて「口笛」もやった。

口笛を終え、解散する際に「頑張ってね!」と色んな人から声をかけられた。彼ら彼女らは僕の事情を知らなくとも僕の歌を聴いて応援してくれた。凄く暖かかった。

やはり僕は音楽がやりたい。
沢山の人に褒めて貰って、表舞台に立ちたい。そう思えた。何を頑張るか分からなくてもとりあえず頑張ってね、とその言葉だけで元気になれた。

最後に来たお兄さんとも意気投合し、何故か電話番号を教えてもらった。

凄く幸せな瞬間だった。

明日起きたら、正直に親に話そうと思う。
人生の中で何かがあった、素直にそう思える日だったと思う。



あぁ〜明日起きるの怖ええよ〜( ; ; )

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