未来 2018.2 No.793 紀野欄より私選数首と筆者掲載歌

光れるは大和国原仏たちほろほろ照らふ紅葉黄葉に/関 旬子 ※紅葉黄葉(モミヂモミヂ)

ひとまずは林と思う構内の芝生とクスノキのあるところ/田島千捺

ゆたんぽのような子猫はわれのこと床暖房と思っているな/佐藤真美

名乗るときに名字を告げないひとがゐてさうだよなここを出ればそれきり/辺見 丹

描きあぐねる絵筆のごとく揺れる火がしなかつたことばかりを見せる/同上

星々も太陽光に輝くと聞けばゆたけき思いに眠る/萬宮千鶴子

時にルビは(衣装に漢字を纏わせた)気分と岡井氏 孫の名(花)/新居千晶 ※花(ふらわ)

あしびきの遠面うるはし眉山の櫻の道を辿りてゆかな/臼井 英

こもりぬの水に潜ける鳰鳥のただ一つなることのさみしき/同上



─筆者掲載歌─

  雨止みの刹那

自動車に横ざまに突つ込まれながらカネの心配ばかりしてゐた

共にせし日々をCB400はわが前にしかと終へにけらしな

行く秋の山を見るさへあたはねば窓辺はすでに雪のまぼろし

色欲の消え失せてゐるうれしさよ右足首にある陽だまりは

紫がやがて茜も圧しこめて閉ざしゆかなんすべての瞼 ※圧(お)す

狐火の燃えつくばかり魂は揺らぎはじめぬ氷雨のなかに

田上純弥 #短歌 #tanka #和歌

まだ二回目ですが早速連作として編みました。但し10首提出のうち6首掲載。紀野さんの選歌後記によると、「前月よりとてもよく共感できた」ということで紀野さんの〝共感性〟を重視する選歌態度が垣間見えた、かもしれない。

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