北風と太陽とソーセージ
ある時、北風と太陽とソーセージは力比べをすることになった。そこに分厚い外套を羽織った旅人が通りかかった。北風は言った。「あの旅人の外套を脱がせることが出来たら勝ちだ」太陽とソーセージもその勝負に乗った。
まずは北風の番だ。北風は自信満々にぴゅうぴゅうと力いっぱいに吹いて、旅人の外套を吹き飛ばそうとした。しかし旅人は外套を飛ばされまいとぐっと押さえてしまう。北風は旅人の外套を脱がせることは出来なかった。
次は太陽。太陽はぽかぽかと暖かく旅人を照らした。すると旅人は暑さに耐えかねて外套を脱いで、木陰で昼寝を始めてしまった。こうして太陽は見事に勝利を収め、北風は大いに悔しがった。
「待てよ、オイラはまだ何もしてないぜ」そう言ったのはソーセージだった。ソーセージは煮えた湯の中に飛び込んでいい感じに茹で上がると、昼寝から覚めて再び外套を羽織って歩き出した旅人の前に飛び出した。腹を空かせた旅人は、これ幸いにとソーセージを掴むと、ペロリと食べてしまった。当然外套は羽織ったままだ。腹を満たした旅人は、そのままどこかに去って行った。
北風と太陽は、今でも時々あの時の話をする。ソーセージは一体どういうつもりであんな行為に出たのだろう?人間の前に美味しい湯気を立てて飛び出したりなんかしたら食べられるに決まっているじゃないか。どういう作戦で外套を脱がせるつもりだったんだ?ソーセージの亡き今、ソーセージの真意は誰にも分からない。ソーセージが食べられてしまった荒野の道端には、北風と太陽によって立てられた小さな墓標がある。太陽に照らされ、北風に吹き曝された墓標は、すっかりくたびれてボロボロになっているそうだ。
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