映画の映画
映画監督が主人公の映画とか、漫画家が主人公の漫画とか、小説家が主人公の小説とか、演劇が舞台になっている演劇とか、そういうのが割と好きだ。
おそらく作者自身の経験や思い入れが色濃くダイレクトに反映されているドラマはとてもリアルで、その熱量を感じられるのがとても好きだ。
パッと思いつくのはトム・ディチロ監督の映画『リブングインオブリビオン/悪夢の撮影日誌』。出演者のワガママやプロデューサーからの要望に振り回されながらも作品に向かってゆく監督のドタバタを描いたヒューマンコメディだ。観たのはもうずいぶん前だが、大好きなスティーブ・ブシェミ演じる監督の好演が印象に残っている。この分野ではウッディ・アレンも第一人者であると言えるだろう。代表作『アニー・ホール』も映画の話だったが、僕が大好きなのは『ブロードウェイと銃弾』だ(これは『演劇を描いた映画』なので厳密にはちょっと違うのだが)。劇作家、作品の出資者であるマフィアのボス、そしてそのコネで出演することとなったマフィアの愛人である若手女優、その愛人のお目付け役に付けられたコワモテのマフィア……。何から何まで完璧に大好きな映画だが、中でもマフィアを演じたチャズ・パルミンテリは最高だった。少しテイストは違うが、ジュード・ロウ主演のフェイクドキュメンタリー映画『ファイナル・カット』もとても好きな映画だ。死んでしまった俳優ジュード・ロウのために集められた友人たち。そこでジュード・ロウの残した映像が公開される。なんと生前の彼は盗撮が趣味で、自宅のいたるところに隠しカメラがつけられていたのだ……!というプロット。もうこれだけで最高だし、オチも最高だった。
最近だとこの分野の最先端は『カメラを止めるな!』になるのだろうか。ホラー映画のホラー映画というのも、例えば『ブレア・ウィッチ・プロジェクト』のような作品から一ジャンルとして確立している分野かもしれない。カメ止めはホラーとコメディ、現実と映画の配分が最高に絶妙だった。フランスで作られたリメイク版もつい最近公開になったばかりだが、『キャメラを止めるな!』という邦題は本当におバカで最高な邦題だと思った。なんとか時間を作って映画館で観たい映画だ。
漫画の話や演劇の演劇の話や小説家の小説の話もしたかったが、映画の映画の話だけでまあまあな分量になってしまったので今回はこれくらいにしておこう。「そんな話をしていたら、『飼育員が飼育されている動物園』に連れていかれたんだ……」といって急にファンタジーになるオチもあったんだが、それもまた違う機会のために取っておくことにしようと思う。