ティンカー・ベルかく語りき
ここはネバーランド!子どもだけが暮らせる夢の国。仲間たちみんなで集まって、楽しくごっこ遊びをして過ごすのが決まりなんだ。え?どうしてここには子どもしかいないのかって?大人になるのはここじゃあ規律違反だから、もし誰かが大人になっちまったら、我らがピーター・パンが大急ぎでそいつを間引いちまうのさ!
「……引田さん、実は彼女が妊娠してしまって、このまま籍を入れることにしました。事情を話したらバイト先から社員にならないかと言ってもらって、これを機にきちんと就職しようと思っているんです。だからすみません、今月いっぱいで劇団は辞めさせてもらいます。ワガママ言って申し訳ないですが、4月の公演も降板させてください」
あーあ、どうしてみんな大人になんかなりたがるんだろうね。ずっと子どものままでいれば、ずーっとみんなで面白おかしく過ごせるのにさ。ここだけの話だけどね、一度大人になっちまうと、妖精の粉を振りかけても空を飛べなくなっちゃうんだって。空を飛べなくなるだなんて!想像するだけでも恐ろしくって震え上がっちまう!
「引田さん、お世話になっております。前回公演のギャランティの振り込みが確認出来ておりません。前々回の公演の後に、今後はきちんと支払いの期日は守るとお約束いただいたはずです。旗揚げ公演から照明を担当させていただいて、私も劇団には少なからず思い入れはありますが、本日中に連絡、対応がない場合はこちらも相応の対応を検討させていただきます。よろしくお願い致します」
ピーター・パンはさ、私たちのヒーローなんだ。普段はおどけて冗談ばっかり言ってるけどさ、いざという時には本当に頼りになるんだぜ?だからピーターの周りにはみんなが集まってくるんだ。このネバーランドはピーターがいるから夢の国なんだよ。最初は私とピーターの2人っきりだったけど、ネバーランドはどんどん仲間が増えて大きくなってる。私たちはずっとピーターと一緒に遊んで過ごすんだ!……あれ?ウェンディ、どうしたの?話があるって?いいよ、何でも聞くよ?
「ねぇピーター、ウェンディとヤっちゃったって本当なの?あのさぁ、タイガーリリーが退団した時にさ、もうそういうのはやめるって言ったじゃん!結局私なんかより若い子がいいってこと?ねぇ、何とか言いなさいよ。これからどうするわけ?あんたももういい歳なんだからさ、いつまでもそんなちゃらんぽらんなままじゃいられないんだからね?分かってる?」
僕はピーター・パン。そしてここはネバーランド!子どもだけが暮らせる夢の国なんだ。仲間たちみんなで集まって、楽しくごっこ遊びをして過ごすのが決まりなんだ。え?どうしてここには子どもしかいないのかって?決まってるじゃないか。大人になるのは規律違反だから、もし誰かが大人になっちまったら、オイラが大急ぎでそいつを間引いちまうのさ!
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