しり太郎
彼は私のおしりが好きだと言う。私は自分の大きなおしりがずっとコンプレックスだった。しかし会うたびに素晴らしい最高だ芸術だエクセレントだと褒められ続ければ悪い気はしないものだ。いつしか私は自分のおしりに自信を持つようになっていた。
どうしてそんなにおしりが好きなのと聞いてみたことがある。彼は一瞬口ごもったあと、信じられないかもしれないけれど、嘘みたいな本当の話なんだけど、と2つも前置きして話をしてくれた。彼は桃太郎の子孫なのだと言う。桃から生まれた遺伝子が、大きな桃のようなおしりを愛でる性癖の元なのだ、と。そういえば彼は岡山出身だった。にわかには信じ難いが、彼がそう言うならそうなのだろう。そうなんだね、話してくれてありがとうとお礼を言った。私がこの人と結婚をするかもしれないなと思ったのはあの時だったのかもしれない。
結婚して子供も産まれて私は少し太って、元々大きかったおしりは更にサイズアップしてしまった。それでも彼は変わらず私のおしりが好きだと言う。大きな桃のような私のおしりから産まれた玉のような男の子はすくすく大きくなってもうすぐ5歳。息子もよく私のおしりを枕にしてすやすや眠っている。やはり桃太郎の子孫だというのは本当のことなのかもしれない。いつか鬼退治に行くなんてことを言い出さないかと心配しているところだ。
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