本屋1 とほん(奈良)
旅先の奈良で とほん を訪ねた
金魚の町 奈良県は郡山にある本屋さんだ
近頃は かつてのように頻繁に本屋には行かないようにしていた
理由は明白で 欲しい本が次から次に目に入ってくるからだ
旅先は 特に購買意欲が増す
離れた土地であればあるほど 一期一会の出会いに思えてきて この本もあの本も と手に取ってしまう
家には積読の塔がすでに何本も聳えている
このうえさらに塔を増やしてどうしようというのか!
わかっている わかってはいるのだ
それなのに……
とほん 後にしたわたしの手には二冊の本が抱えられていた
買っても一冊までと決めていたのに なんで買っちゃうかな わたしよ おまけに顔をほくほくなんてさせちゃって
とほん はとても居心地のいい本屋さんだ
格子戸の入口をくぐれば 店内に流れるBGMは風通し良く 棚に並ぶ本たちの顔も端正だ
賢さを鼻にかけず ユーモアを湛えながらも 情報の洪水と化した現代のなかで誰かの標となる
気持ちのいい距離感から話しかけてくれる友人のような本たち
また奈良に来たら きっと立ち寄るだろう
そのときまでに少しでも積読の塔を減らすべく 立ち寄ったカフェで買ったばかりの本のページをめくるわたしの顔は 幸福な読書家のそれであった