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リュウウンくん

九月 残暑の路地
朱色の鳥居が見えた
境内にはひと回り小さな石の鳥居があって
その先にリュウウンくんがいた

リュウウンくんは辰の石像だ
二◯二四年は辰年
まさにリュウウくんの出番の年なのだが
彼は見るからに困り顔だ
眉は八の字を描き 口はちょいとへの字 鼻の穴もぷっと開いている

がんばりたいんだけど なんだかがんばれない 辰なんだから潔く飛翔すればいいんだけど ぼくは高いところ苦手なんだよな 辰だからって高いところが好きとはかぎらないんだよ
翔びたくないなあ
でも翔ばないとなあ
気の早い巳にももうせっつかれているから

とリュウウンくんの悩みは続く
辰と云えば 爪を構え 雲をしたがえ がおお と空を昇る
そんな勇ましいイメージがあるけれど
もしじぶんの運を預けるなら
彼のような悩む辰に頼みたいと思う

リュウウンくん ますます困った顔をしている
でもきっと大丈夫だ
悩んだ経験を積んだ彼のような辰こそが まさしく隆運
より高く昇るにちがいないのだから

(2024.9.7 富山市 日枝神社にて)

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