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【詩】今日は無敵の少女たち

2025年の年明け 私の暮らす金沢の街にはうっすらと雪が降っていた
朝のバス停で 私は通勤用のバスが来るのを待っていた
バスの標識があるだけの吹きさらし
ビュー 風が吹くたびに体が凍える

高校生の女の子 二人連れがやって来た
一人は背が高い 上着は黒の分厚いダウン スカートの下にジャージを履いているが 首にマフラーは巻いていない
もう一人は背が低い 上着は白いダウン しっかりとマフラーも巻いているが スカートの下にのぞいているのは素足だ
ビューッ 風が吹いた
キャーッ 二人が悲鳴を上げる

ダウンだけでいけると思ったのに (黒いダウンの少女は右隣を見て) マフラーが足りなかったよ
耐えられると思ったけど (白いダウンの少女は左隣を見て) ジャージを履いてくるべきだったよ

風が吹くたび キャー 少女たちは喚声を上げた
バスがやってきたときは 雪原を旅してきたウサギのようにピョンと飛び乗っていた

ビューッ 次の日も白い風が吹いていた
昨日の二人がやって来た
白と黒のダウンのコントラスト それ以外は マフラー 手袋 スカートの下にジャージ と それぞれが昨日は足りなかった装備を揃えてきていた
ビューッ 風が吹いた

寒くないね(黒)
完全防備だからね(白)
うちら無敵じゃん?(黒)
無敵っしょ(白)

バスが来るまでに何度も風が吹いたが そのたびに聞こえてくるのは キャッキャッ 楽しげな笑い声だった

昨日までの寒さに震えるウサギはもういない
いざ行け
今日は無敵の少女たち

(2025.1.9木 冬の朝に)

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