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みどり5 さるすべり
セミの声がしゃらしゃらと鳴る 夏虫色の公園
紅一点 さるすべりが花を咲かせている
初めてさるすべりの木を見たとき 読んで字の如し と深く納得した
木登り名人の猿がつるりと滑り落ちてしまう なめらかな木肌
猿滑り とはよく言ったものだ
後日 本を読んでいて
百日紅の花がようやく落ちる頃 季節は移りかわって
という表現を目にした
辞書を引いてみて 漢字の読みが さるすべり であることを知った
猿滑り と 百日紅
この二つが同じ植物を表しているという驚き
次元を軽々と飛び越える漢字の奥深さ
木蔭のベンチに腰かけながら さるすべりの花を眺める
猿滑り でもあり 百日紅 でもあることが 明明白白と在ること
その不思議に しばし見入っていた